親友への相談
初投稿です。
稚拙な文章ではございますが、どうぞゆっくりしていってください。
突然だけど、僕には好きになった人がいるんだ。その人は決して僕なんかじゃ手の届かない、神様みたいな人だ。だから、きっと告白しても断られる。
だったら、さっさと告白して振られろって?
……告白出来たら今君に相談なんてしてないよ。そもそも、僕と彼女じゃ天と地ほどの差がある。告白するにしても、ちょっとでも彼女に近づきたいんだ。
それで、僕なりにどうしたら神様みたいなあの子に近づくことができるか考えてみた。
物理的にじゃないよ? スペック的にだよ?
……だからそんな変態を見る目で僕を見ないでよ。
まず、あの子は頭がいい。あの子は学園で主席なんだ。本当にすごいよね。
えっ? なんでまずそこに目を付けたかって?
……だって、彼女に近づくにはこれが一番簡単だったんだよ。
僕はそれはもう必死に勉強したさ。覚えてる? ほら、あの『ゾンビ』ってあだ名をつけられたときのこと。僕の成績は元々あんまり良くなかったし、うちは農家だから勉強で得た知識はあんまり役に立たなくて全然勉強してこなかったんだ。だから必死で勉強した。寝る間も惜しんで勉強したんだ。食事をすることすら忘れて勉強した日もあったよ。
そしたらみるみるやせ細っていってね、ついでに酷い隈もできて顔色が青白いからついたあだ名が『ゾンビ』。ほんと笑っちゃうよね。確かあのとき、あの子に悲鳴を上げられちゃったっけ。……さすがに三日ぐらい部屋に引き籠っちゃったよ。
それで成績はどうなったかって?
君も知ってるだろ? なんと、あの子を抜いて僕が主席になったんだ。
あれは驚いたね。あわよくば、あの子の次席になれればいいと思っていたけど、まさか僕が主席になるとは考えてもみなかったよ。だけど、これで頭の良さはあの子に近づくことができた。だから、次の段階に移ることにした。次は魔法の腕をあの子に近づける。
お前、魔法苦手だろうって?
その通り、僕は魔法が苦手だ。ここから本当の地獄が始まったよ。
そもそも、農民である僕はそこまで階梯の高い魔法を使うことができない。あの子が最高階梯である五階梯の魔法が使えて、僕はせいぜい二階梯の魔法しか使えない。
これは、生まれついた時から決まっていたことだ。魔法を発動させるために必要な魔力を多く持つ家庭からは、より多くの魔力を持った子供が生まれる。貴族なんかは、魔力を多く持った子どもを自分の子どもと婚約させてしまう。そうしておけば、将来的に貴族の地位を安定させることができるからだ。
だからといって、はいそうですかと諦めるなんて出来なかった。僕は魔法について色々と勉強したよ。特に、魔法式の構造について。
どうにかして少ない魔力で魔法を使うことは出来ないか。逆に、少ない魔力で最高階梯に近い魔法を発動することは出来ないか。
あの時は何度死を覚悟したか分からないよ。既に完成された魔法式をいじる、言葉にすると簡単かもしれないけど、実際にやるのはそう簡単じゃない。少しでもいじる場所を間違えると爆発するんだ。あれはヤバいね、腕がちぎれそうになったから。たまたま治癒魔法が使える人がいたから助かったけど、下手したら死んでたね。
……そこまであの子が好きなのかって?
当たり前だよ。だから僕は頑張れた。少しずつだけど、あの子に近づくことができてると思うようになったんだ。
そこからは実験の繰り返しだった。何度も魔法式をいじっては爆発させ、いじっては爆発させ……周りからは変な目で見られてたね。でも、なぜだか知らないけど、最初に手治療してくれた人がずっとついててくれたんだ。だから、いくら怪我をしても直してもらえたよ。……その分、何度も怒られたけどね。
なんだよ、その目は。言いたいことがあるならいってくれよ。なに? それで魔法は完成したのかって?
……まぁね。なんとか完成させることは出来たよ。
でも、誰も僕が完成させた魔法理論を評価しようとはしなかった。そりゃそうさ、今まで自分たちが創り上げてきた魔法というものを根本的に覆すものだったからね。あれは本当に酷かったよ。僕が書いた魔法理論の紙はすべて燃やされた。
だけど、僕の頭の中には残っている。これで僕は、魔法でもあの子に近づくことができた。
ん? これで終わりなんじゃないかって?
いや、まだ残っているんだ。というより、これが僕とあの子の差を如実に表していると言っても過言ではないよ。
そう、あの子はこの王国の王女様、プリンセスなんだ。僕は農民だから、身分はあの子とは天と地ほどの差がある。せめて爵位ぐらいは貰わないと見向きすらしてくれないだろうね。でも、そうそう簡単に爵位いなんて貰えない。
……どうしたんだい? そんな驚いたような顔をして。
どうやったら爵位を貰うことができるか、それは功績を上げること、そして武勲をあげること。あぁ、君も気付いたんだね。そう、僕がこの冒険に、魔王討伐なんていうパーティに志願したのはそのためなんだ。これで魔王を倒せれば、僕にだって爵位を与えてくれると思う。
うん、でもね、この前ある噂を聞いたんだ。この魔王討伐が終わったら、王女様は勇者と結婚するんだって。
それを聞いて僕が何を思ったと思う?
……怒り? 悲しみ?
いや、納得しちゃったんだよ、お似合いだなって。僕が隣に立つよりも、勇者の方が絶対にあの子は幸せだろうなって。……でも、帰ったら、この旅が終わったら、あの子に告白しようと思う。それで僕はようやく諦めがつくよ。そしたらさ、僕の愚痴に付き合ってくれるかい? お酒でも飲みながらさ。ほら、さっき話した治癒魔法の子がいたでしょ? あの子が開いているお店があるんだ。料理もおいしくてお酒もおいしい。久しぶりに行きたくなったんだ。
――だからさ、勇者。僕の親友。生きて帰るんだ、王国に、あの子が待っている場所に。
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