魔兎も配下にし森を攻略?
「もうしわけありませんでしたご主人様」
「わかればいい」
だが。以後気を付けるように。
結局、あれから魔兎を眷属にした。
魔魚に俺の指先を切らせる。タラリと垂れる血を飲んだ兎の魔物は、これで俺の眷属だ。
知能も向上。
本能だけの時点で陣地を攻略したんだから、元から知能は高い気がする。
それと俺だけじゃなく魔魚の配下でもあるようだ。
ブサーッといったときに魔魚の血もペロってたんだろう。
殺されかけてブチ切れるかと思ったが、魔魚はむしろ魔兎を気にいっている。
理由はこれ。
「奥様、申し訳ありませんでした」
「むふふ。わかればいいのよ~♡」
奥様と呼ばれて調子こいているのだった。
まあいい。
本格的に妻にするのは人魚に進化した後だが、ここまで尽くされたら好きになっちゃうのはしょうがない。
今のとこ魔魚に惚れてるのは内面だけだが、こいつなら根性で美人魚になるに違いない。
「ちなみにこの世界の人魚は下半身も人間同様だよ」
なんだって。
それなら一安心だ。
つーか落ち着いたら神様がやってきた。
脳内に話しかけてきた。
神様のヤラセかどうかはわからんが、これまで事態はよい方向に進んでいる、普通に心配してきてくれたと思うことにしよう。
さすがに魔魚や俺の内面まで操れるとは思えないしな。
進化した能力を確認する。
まずは俺のウォーターウォール。
兎を閉じ込めるくらいに能力も向上したが、いまだ空間に直接水を生成出来てはいない。
水場から5mが限界。
どうも川の水を転移させているらしい。
試しに5m置きに水たまりを作ってみる。
うむ。
やはり川→水たまり→水たまりと水を転移させることが可能だった。
あとは間を水路にすれば……
と思ったのだが、普通に魔魚が転移可能だった。
「スゲ~な」
「ご主人様に褒められました~ウフフ」
まあ。俺が兎に狙われたときに突然、目の前に現れてたしな。
愛の力で発動した転移能力だったらしい。
ここまでしてもらったら俺がデレるのもしゃーない。
「ラブラブだね~」
「うん。もうしょうがない。魔魚が人魚に進化したあかつきには妻として迎えるつもりだ」
「おおっ!」
神様も驚いている。
今更ツンモードで照れてもしゃーない。
本人も喜んでるし、いいだろう。
「うへへ。ご主人様と結婚。ぐへへ……」
忘れていた。
こいつは肉食系なんだった。
別の意味で食われそうで身の危険を感じる……
「うう。奥様とご主人様羨ましいです……」
「ウサギも精進するように。使いつぶされて死にたくなければねっ」
「ハハッ」
すっかり上下関係が出来ている。
魔兎の方がメイドで魔魚が性格の悪い悪役令嬢のようだった。
魔兎に森方面の攻略を相談する。
夜明けにはまだあるが、もうひと眠りという気分でもないしな。
昼間の火が残っているのでたいまつ代わりに。
水辺は月明かりで明るいが、森の中は結構高い木が多く、暗いのである。
魔魚と魔兎は夜目がきくらしいんだがな。
「嫁、嫁ですか~ムフフ」
「違う、夜目だ」
「奥様、下品です~」
状況が軌道に乗ったら、いつの間にか神様の声は消えていた。
「ありがとうございます神様」
ハッキリ声に出して言っておく。
返事はないが聞こえていると思う。
また機会があれば遊びに来るだろう。
「ご主人様は神様とお話になれるのですね」
「いつもってわけじゃないけどな」
「すごいです!」
まあ。姿は見えない念話の声だ。
魔兎には神様の声は聞こえないらしかった。
5m置きに水たまりを作りつつ、進む。
いきなりではない。
先頭は水の入ったバケツを持った魔兎。
バケツの中に魔魚。
安全確認後に俺が続く。
魔兎は、器用に両耳でバケツをかかえている。
力も強い。
元はスピードタイプだったが、俺の眷属になり身体強化の魔法が使えるようになったらしいんである。
レベルUPの訓練も兼ねてバケツを持たせる。
たまにヒイヒイ言ってるが魔力切れだろう。
俺の方は身体能力があがったということはなかった。
う~む。
スピード特化だった魔兎は元の力が弱いからな~魔兎は力持ちになったが、俺にそのまま反映されるということもないらしい。
逆に言えばクマのような魔物をティム出来れば、パワーアップできるのか?
「頑張りましょうご主人様」
魔魚は眷属を増やすことに不満はないようだ。
ヤキモチ焼くかと思ったがそうでもない。
これは……ハーレムの正妻にかかせない資質ではないだろうか?
魔魚、まったくいい女だぜ、おまえは!
つーか今はまだ、女どころかお魚さんだけどな、それもアニメ調で可愛いってことなどまるでない、生々しいリアル系のお魚さんだが……頑張って進化しなきゃだな、お互い。
魔兎が魔法を試すが、ビーム系は出ないようだ。
だが耳を剣のように振るえるようになった。
ウォーターナイフのようだ。
水を使役する俺たちと違い、体内の水分を操ってる感じだな。
同じ水属性でも魔兎は身体強化系のようだ。
神様がまたきたら答え合わせしてみようと思うが、おそらく間違いはないだろう。
「ハアッ! せやあっ!」
もう木なんてブサブサである。
切り倒された木から木の実が降ってくる。
魔兎曰く食べられるそうである。
味はまあまあ。
クルミや栗に近い。
前世そのままの生態系ではないが、そこまで離れているわけじゃない。
魔兎に尋ねると滝の上の方には果実の群生している場所もあるようだ。
現状の図解。
滝
川 水たまり
川 ↑
川 陣地→→↑
川
川
川
となっている。
これを……
川
川→→→→→↓
川 ↓
↓
滝 ↓
↓
川 水たまり
川 ↑
川 陣地→→↑
川
川
川
ざっとこんな風に。
水路で囲った陣地を作る。
水路の中なら魔魚は自由自在に動けるからな。
天然の要塞である。
今日は上流を探検しつつ、陣地を広げることにしよう。
「ハイ!」
なんて素直に応える魔兎はすっかり馴染んでとても俺を餌にしようとしたとは思えない。
それを言うなら魔魚だって最初はそうだしな……な~んて笑っていたら……
突然魔魚が苦しみだした。
何だ、ケガは完治しているはずだが。
「ううう。生まれそうです~」
どうやら魔魚が卵を産卵するらしい。
産気ついた?
ん~ラブラブだったムードが関係してるんだろうか?
獣姦的な意味はないんだが、お魚さんの性はよくわからんしな。
「ううう。ご主人様の精が欲しい。ぶっかけを~」
「別にいいぞ」
「ふええ! 本当ですか」
「うん。魔魚のことは好きだしな」
性的な意味合いはないんだが、そろそろ日も上がる。
朝立ち的な意味合いで下半身が元気になっているんだ、さっきから。
若返った体はあっちの方も元気らしい。
生理現象だ。
オナニー的な意味で魔魚の卵たちにぶっかけるのもいいだろう。
「ひゃっほ~! ……アダダお腹痛い、イデデ」
はしゃぎ過ぎである。
出産ならぬ産卵は割と安産だった。
ホッとした。
オナニー的な生理現象なぶっかけ描写についてはご容赦いただきたい。
神様が来るかと思ったがそうでもなかった。
レベルUPしたら必ず来るってものでもないようだ。
『水魔法レベル3!』
主に精神的な面の耐性が強化された気がする。
何しろ生理現象の最中、魔魚と魔兎がらんらんとした肉食系な瞳で下半身のブツを眺めているんだから。
恥ずかしかったが慣れた。
苦痛耐性あたりのスキルを獲得したんじゃないのか?
ぶっかけ完了。
さあ。小魚たちが生まれるまでの間に陣地を開拓しようじゃないか?