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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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27話 果樹園 -1-

「果物が、いっぱいだぁ!」


 諸手を挙げて感動するアイナさん。……きゅん。


【ファームフィールド】内にある果樹園に、ボクたちは来ていた。

【酒蔵】でお酒やジュースが作れると知り、アイナさんとキッカさんが作ってみたいと言い出したのだ。特にキッカさんが。

 すごい張り切りようだった。


「あたし、お酒強いんだよねぇ」


 と、一番小さいキッカさんが言っていたので、「へー」と言ったら脇腹に重い一発をもらってしまった。……最近、キッカさんがよく拗ねるようになった気がする。ホントに。


「アイナさんはお酒飲むんですか?」

「飲んだことがない……いや、ある、かな? ……よく覚えていない」


 ということは、飲んだことが全然ないのだろう。

 あったとしても、それと知らず誤飲したくらいか。


「今回は、お酒とジュースの両方を作りましょう」

「うむ。前回学習したことを胸に、わたしは頑張る」

「前回学習したこと、というのは?」

「…………女の子が『そーゆーこと』を口にしてはイケナイ……」


 あぁ。キッカさんにこってり絞られた様子だ。


「ホント、でっかい子供みたいなのよね、剣姫って」

「キッカさんはいいお母さんになりそうですね」

「はっ、はぁ!? な、何言ってんの!? べ、別にっ、そんな予定もないし! 相手も、いないし……」


 いや、将来的に~……というつもりだったのだが、なんかすごく睨まれている。

 こういうのもセクハラになるのかなぁ……なるんだろうなぁ……失言だった。


「ち、ちなみに、タマちゃんはどうなのさ?」

「ボクですか? そうですね……たぶん、お母さんにはなれないんじゃないかと……」

「当たり前でしょ!? そうじゃなくて、子供とか結婚とか!」

「なっ!? あ、いや、ボクなんか……売れ残って、ワゴンセールでも残っちゃって、支店長に『おい、誰か持って帰っていいぞ』って言われてるのにバイトの人にまで見向きもされないような存在ですので……」

「えっと……なんの話?」

「わごん、せーる?」


 あぁっと。お師さんとの会話で覚えた表現や言葉って、普通の人には通じないことが多いんだった。ダメだなぁ。いまだにどこら辺までが一般的で、どこからがお師さんワールドなのか線引きが出来ていない。

『スク水ニーソにランドセルは神萌えっ!』っていうのはお師さんワールド全開の言葉ってことは分かるんですけど、さすがに。


「そんなことよりも! 今日は果物狩りです!」


 目の前にはブドウの木。少し向こうにはリンゴの木が生えている。

 もう少し行けば梨や桃もあるのだが、今回はキッカさんが「お酒!」と強く思っていたので、【ドア】がボクたちをここに連れてきたのだろう。

 中に入ってからも移動は出来るので、どこに出されても問題はないんだけど。


 ざっと見渡してみるも、やはりどの木も果実をつけていない。


「というわけで、木のお世話をしましょう!」


 お世話をすればファームポイントが貯まって、目的の果実の実が生る。

 今回はどの果実を収穫しようか?


「キッカさんはワインだからブドウだとして、アイナさんは何ジュースが飲みたいですか?」

「ちょっと待って、タマちゃん! ……なんでワインって決めつけるの?」

「え、違うんですか?」

「違わないけど、聞くくらいしてよね」

「じゃあ、何を収穫したいですか?」

「ブドウ!」


 なんだろう、この二度手間……

 なんかすごく満足そうだからいいんですけども。


「あ、でも。果実酒ならリンゴを使ってシードルも作れますよ」

「なに、それ!? なんか美味しそう!」

「えっと、リンゴを使った発泡性のあるお酒です。地域によってはサイダーと呼ばれたりするもので、フルーティーでアルコール度数が低い(ので、お酒に強くないお子様とか、お子様サイズな大人様でもそこそこ飲める)お酒なんですよ」

「……なんか、途中に気になる間があったけど?」

「お、美味しいですよ、シードル。梨を使ったペアサイダーというのもありますが」

「じゃあ、それにしようかな。うん! 今回はブドウじゃなくてリンゴにする!」


 リンゴがあればシードルと、リンゴのエール、それからシードルを蒸留したカルヴァドスなんかが作れる。

 作り方は簡単。【酒蔵】に「ぽいー」で、あとは放置だ。

 そうしたら、【歩くトラットリア】が自動で美味しいお酒を造ってくれる。


 本当に、凄い魔法だなぁ。






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