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15話 アイナさんの必需品・下 -4-


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 夜。

 一日が終わり、眠る時間。

 本当に、今日は楽しかった。


 キッカと二人で買い物に行ったのも、新鮮で面白かった。

 試着というものを、生まれて初めてした。身に着けた物を、それも素肌に付けた下着を返品してもよかったのだろうか。

 そしてキッカは、自分の物をすごく真剣に選んでいた。あそこの境地には、まだまだ及びそうもない。普通の女子は、あんな感じで買い物をするのだろうな、きっと。


 そして、シェフが贈り物をくれた。


 嬉しくて、驚いて、不意に泣きそうになって……それ以上に満たされた気持ちになったから、涙は零れなかったけれど……本当に嬉しかった。


 いつもならすぐに名前を付けるところなのだが、なんというか……一世一代の素晴らしい名前でなければいけない気がして……プレッシャーを感じる。

 少し熟考しようと思う。今回は。


 なので、しばらくは……


「おやすみなさい、……シェフ」


 そう呼ぶことにした。……シェフには、内緒にしておくつもりだけれど。

 黒い毛の可愛い羊。

 どことなくシェフに似ていて……可愛い。


 そんな可愛いぬいぐるみを机の上に置いて、ベッドへ潜り込む。

 先に寝ていたキッカを起こさないように、そっと……キッカを抱きしめる。ぎゅっ。


「って、こら!」

「すまない。起こしてしまったか?」

「そこ以外に謝るところあるでしょうが!?」

「…………いや、特には」

「あるわ!」


 腕の中でキッカが吠える。

 夜なのだから静かにしてもらいたい。シェフたちが目を覚ましたら気の毒だ。


「キッカ……しぃ~」

「『しぃ~』じゃなくて、離しなさいよ!」

「残念ながら、わたしは何かを抱きしめていないと眠れないのだ」

「ぬいぐるみもらったでしょうが!」

「しかし…………万が一にもよだれを垂らしてしまったら、困る」

「あたしに垂らす方がよっぽど困るでしょうが!? っていうか、困れ!」


 キッカなら、洗えば大丈夫。

 でもぬいぐるみは傷む。それはダメ。


「キッカも、今日もらったものをよだれまみれにしてはいけない」

「いや、なるでしょう!? スルメよ? よだれまみれ上等じゃない!」

「贈り物は、大切に」

「それ、贈る方にも問題あるから!」


 まだまだ何かを言い足りない様子のキッカ。

 けれど、わたしは温かいベッドと、抱き心地のいいキッカの温もりを感じて……すぐ眠りへと落ちていった。


 あぁ、本当にここは――居心地がいい。


「寝るなぁー! そしてもうすでにちょっとよだれ出始めてるから!? 起きろ、剣鬼! 剣鬼ぃー!」



 朝と同じような声を聞いて、わたしはその日を終えた。






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