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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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87 奇跡の妙薬

 ――少し時は遡り。




 大きな唸りをあげて飛来した斬撃がマザーさんを切り裂いた。


「マザーさん!」


 ボクは思わず駆け出す。

 空から無数のドラゴンが舞い降りて来てマザーさんを守るように壁を作る。


『ぐぅっ!』


 騎士団からの魔法や矢を受けたドラゴンが呻き声をあげる。


「大丈夫ですか!?」

『我らのことはよい! 早くマザーを!』


 どのドラゴンも、みんながマザーさんを心配していた。


「分かりました!」


 ドラゴンの足元を掻い潜り、痛ましい姿で地面に倒れるマザーさんの元へと駆け寄る。


「マザーさん! 大丈夫ですか!?」

『おの……れっ…………ぬかった、わ』


 息も絶え絶えではあるが、意識はあるようだ。


『シェマ!』


 ボクの頭上に大きな影が覆いかぶさる。

 見上げればグロリアさんがどこかから戻ってきたところのようで、慌てた様子で、人間の姿へと変身する。


 ……ってぇっ!?

 グロリアさん、服!


 慌てて背を向けた。


「これを、見て、欲しい!」

「すみません、ちょっと無理です!」

「マザーの命、かかってる! 一大事!」

「グロリアさんの格好も一大事です! とにかく、何か着てください!」


 ものっすごい肌色です!


「ん………………ぅにゃぁああ!?」


 斬られたマザーさんよりも、物凄い悲鳴が轟いた。


『エロニンゲン、ナの』

『エロニンゲンのオス、なノ』


 頭上から、小さいドラゴン二人の罵倒が降ってくる。


 ボクが悪いわけじゃないと思うんだけどな、今のは!?

 むしろ、目を逸らしたボクを褒めてほしいくらいだよ!


『ドラゴンの姿に戻った。もう、大丈夫だ』


 服を着るよりも、ドラゴンに戻る方が早いと判断したらしい。

 振り返ると、ドラゴンの姿のグロリアさんがいた。


『ド、ドラゴンの姿、だからといって、む、胸元を見るな!』


 いや、そんなつもりは決して!


『おい、シェマよ……すっごい痛いのじゃ……遊んどらんで、処置をせい……』


 マザーさんが、絶え絶えな息でボクに苦言を呈してくる。

 ボクのせいなのだろうか。


『足元にある、薬を使うのだ、シェマ』


 グロリアさんの言葉を受け、足元を見れば、そこに陶器のツボが置かれていた。

 ふたを開けてみると、鼻を劈くような強烈なニオイが立ち上った。


「……グロリアさん、これ、毒?」

『薬だ! ドラゴン族に代々伝わる、治療薬だ。それをマザーに』


 グロリアさんは、これを取りに戻ったらしい。

 あの、神殿のような洞窟の中まで。

 ドラルミナの騎士たちがいる中を、危険を承知で。


 その思い、無駄にはさせない。


「マザーさん、これを使います!」

『嫌なのじゃ!』


 グロリアさんの思いが、まんまと無駄に!?


「なんでですか!? 折角グロリアさんが危険を冒してまで取ってきてくれたのに!」


 ほら、ちょっと泣いてますよ、グロリアさん!

「頑張ったのに……」って!

 可哀想でしょう!?


『その薬は毒じゃ!』

「えっ!? 薬じゃないんですか!?」

『確かにそれは、奇跡の妙薬と呼ばれておる、人間族に売れば巨万の富を得られるほどの薬じゃ。だが、死ぬほどマズいのじゃ! よって、毒じゃ!』


 またこの人は、味で好き嫌いしてる……好き嫌い言ってられる様な状態じゃないでしょうに。


 ……というか。


「あの、この薬……このニオイや質感、肌触りからして……塗り薬だと思うんですけど?」

『塗り?』


 ……まさか、今まで塗り薬を飲んでたんですか?


 ちらっと視線を向けると、全ドラゴンが一斉に目を逸らした。


 全員飲んでたんですね!?

 それで傷が治ってたんだとしたら、相当凄い薬ですよ、これ!?

 使い方が違っても効果があるなんて!


「とりあえず、傷口に塗ってみますね」

『染みたら噛みつく』

「死にますってば!?」

『そうしたら、薬を塗ってやろう』

「多分手遅れですよね、それ!?」


 もう。

 マザーさんはちょっとわがままなので、ちょっと強引に、強制執行する。


「えい」

『ぎゃぁぁああああ、いだぁぁーーーい! 毒じゃ! やっぱり毒だったのじゃ! 皆の者、わらわを毒殺しようとした下手人じゃ! 捕らえよ!』


 とかなんとか騒いでいる間にも、マザーさんの目を覆いたくなるようだった深い傷が癒えていく。

 凄いな、この薬!?


「まだ痛いですか?」

『痛い! ヒリヒリしておるわ!』


 あれだけの切り傷が、ひりひりする程度まで回復したのなら、もう大丈夫だろう。

 これで、マザーさんは大丈夫――


 と、意識をマザーさんから離した時、ボクの目にとんでもない光景が飛び込んできた。



 オレンジ髪の男が、大剣でアイナさんの腹部を斬りつけ、アイナさんの体から、その髪よりも真っ赤な鮮血が迸った。



「アイナさん!?」



 そう叫んだ直後、ボクの意識は一瞬途絶えた。







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