84 飛ぶ斬撃
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騎士団から魔法が放たれる。
魔法騎士、マジックナイトの攻撃だ。
それを合図にランスナイトとソードナイトが一斉に動き出す。
アーチャーナイトの火矢が彼らを守るように大量に放たれる。
ドラゴンがブレスで対抗しても、そのブレスを頑強な鎧に身を包んだアーマーナイトが防ぐ。
対ドラゴンに特化した騎士団。
個別に狙われれば、ドラゴンたちは逃げることすら困難だっただろう。
今は、群れなので、何とか対応できているようだけれど。
龍封じの宝玉を過信して攻め込んできたことが裏目に出ている。
いや、功を焦った結果だろう。
このような辺境まで追いかけてくるほど、ドラルミナは焦っていたのだろう。
ドラゴン族がドラゴンの里を捨てて十数年。
その間、ドラルミナはドラゴンを狩れていない。
最大の収入源を失った国は、維新と存亡をかけてドラゴン討伐に乗り出した――と、そのようなところではないかと推測される。
「貴様さえいなければ!」
一人のソードナイトが斬りかかってくる。
その剣を剣で弾き、空いたみぞおちに蹴りを入れると、騎士は吹き飛んでいった。
「災厄を呼ぶ鬼め!」
他の騎士たちが同時に襲いかかってくる。
鋭い剣筋だが――この程度であれば対処できる。
同時に襲い掛かってきた剣をすべて、一振りではじき返す。
「ぐっ……鬼め!」
恨みのこもった瞳が、わたしを睨む。
「貴様が砦を壊さなければ――我が国は今でも最強の国家でいられたのだ! 軍事力でも、経済力でも!」
わたしが砦を壊し、ドラゴン族が里を離れたことで、ドラルミナはドラゴンを狩れなくなった。
絶対に安全だと言われていた首都を放棄し、別の砦の付近へ首都を移転させた。
それ以降、主産業を失ったドラルミナは国力を大きく低下させた――らしい。
そのような話を、いつだったか、どこかで耳にしたような気がする。
「これまでさんざん我が国の恩恵を受けていた国が、手のひらを返して我が国を冷遇し始めた。攻め込んでくる愚かな国まで出始めた! すべて返り討ちにしてやったがな!」
国力を落としたドラルミナは、かつての横暴な外交から敵を増やし、弱ったところを一気に叩かれた。
「ドラゴンさえ狩れれば、我が国は再び、並び立つもののない強国へ返り咲けるのだ!」
だからこそ、このような辺境の地までドラゴンを探し、追いかけてきて、国の総力を挙げて騎士団を向かわせた。
ドラゴンスレーヤーの国としての力を取り戻すために。
実に、愚かだ。
「そのようなモノのために、巻き込まれたドラゴンが気の毒だ」
「貴様に何が分かる! 貴様が現れてからすべてが狂ったのだ! 貴様さえいなければ、我が国は今でも覇者として世界に君臨していたのだ!」
「わたしが砦を壊す以前でも、覇者というほどの権威は持っていなかったと思うが」
「黙れぇぇえ! 忌まわしき鬼めぇえ!」
わたしに向けて魔法が放たれる。
えっと、この魔法には――
「剣技・曼殊沙華」
――斬撃が効く。
「ランスナイト!」
「「おう!」」
一斉に突き出された槍には――
「剣技・斬鉄」
――斬撃が効く。
「構わぬ! 多少の犠牲を払おうと、ヤツさえ亡き者にすれば我が国は復興するのだ! 死を恐れず突っ込め!」
「「ぅぉおおお!」」
数に物を言わせた攻撃には――
「剣技・真空斬」
――斬撃が効く。
「バケモノか!?」
叫ぶ騎士の声の向こうから――
「全部同じ対処法じゃない」
――と、飽きれたようなキッカの声が聞こえた気がした。
気のせいかもしれないけれど。
視線を向けると、キッカがシェフを守ってくれている。
よかった。
これで安心して戦える。
ドラゴン族のみんなも、上空へ避難している。
あの高さなら、矢も魔法も届かないだろう。
あとは、わたしが騎士たちを諦めさせて追い返せば、またみんなで感謝祭が――
その時、空が斬り割かれた。
そう錯覚するほどの斬撃が夜空を駆け、マザーの体を斬り割いた。
『マザァー!?』
グロリアの悲鳴にも似た声が空を劈き、マザーが地面へと墜落する。
一斉に群がるドラゴン。
だが、わたしの視線はその斬撃を飛ばした人物へと注がれ、そして、頭の中が真っ白になった。
久しぶりに聞くその声は、昔と何ら変わっておらず――
「弱いな」
――わたしの体は恐怖に硬直してしまった。
なぜ……
なぜ、父がここに?




