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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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211/214

84 飛ぶ斬撃 


★★★★★★★★★★


 騎士団から魔法が放たれる。

 魔法騎士、マジックナイトの攻撃だ。

 それを合図にランスナイトとソードナイトが一斉に動き出す。


 アーチャーナイトの火矢が彼らを守るように大量に放たれる。

 ドラゴンがブレスで対抗しても、そのブレスを頑強な鎧に身を包んだアーマーナイトが防ぐ。


 対ドラゴンに特化した騎士団。


 個別に狙われれば、ドラゴンたちは逃げることすら困難だっただろう。

 今は、群れなので、何とか対応できているようだけれど。


 龍封じの宝玉を過信して攻め込んできたことが裏目に出ている。

 いや、功を焦った結果だろう。


 このような辺境まで追いかけてくるほど、ドラルミナは焦っていたのだろう。

 ドラゴン族がドラゴンの里を捨てて十数年。

 その間、ドラルミナはドラゴンを狩れていない。


 最大の収入源を失った国は、維新と存亡をかけてドラゴン討伐に乗り出した――と、そのようなところではないかと推測される。


「貴様さえいなければ!」


 一人のソードナイトが斬りかかってくる。

 その剣を剣で弾き、空いたみぞおちに蹴りを入れると、騎士は吹き飛んでいった。


「災厄を呼ぶ鬼め!」


 他の騎士たちが同時に襲いかかってくる。

 鋭い剣筋だが――この程度であれば対処できる。


 同時に襲い掛かってきた剣をすべて、一振りではじき返す。


「ぐっ……鬼め!」


 恨みのこもった瞳が、わたしを睨む。


「貴様が砦を壊さなければ――我が国は今でも最強の国家でいられたのだ! 軍事力でも、経済力でも!」


 わたしが砦を壊し、ドラゴン族が里を離れたことで、ドラルミナはドラゴンを狩れなくなった。

 絶対に安全だと言われていた首都を放棄し、別の砦の付近へ首都を移転させた。


 それ以降、主産業を失ったドラルミナは国力を大きく低下させた――らしい。


 そのような話を、いつだったか、どこかで耳にしたような気がする。


「これまでさんざん我が国の恩恵を受けていた国が、手のひらを返して我が国を冷遇し始めた。攻め込んでくる愚かな国まで出始めた! すべて返り討ちにしてやったがな!」


 国力を落としたドラルミナは、かつての横暴な外交から敵を増やし、弱ったところを一気に叩かれた。


「ドラゴンさえ狩れれば、我が国は再び、並び立つもののない強国へ返り咲けるのだ!」


 だからこそ、このような辺境の地までドラゴンを探し、追いかけてきて、国の総力を挙げて騎士団を向かわせた。

 ドラゴンスレーヤーの国としての力を取り戻すために。



 実に、愚かだ。



「そのようなモノのために、巻き込まれたドラゴンが気の毒だ」

「貴様に何が分かる! 貴様が現れてからすべてが狂ったのだ! 貴様さえいなければ、我が国は今でも覇者として世界に君臨していたのだ!」

「わたしが砦を壊す以前でも、覇者というほどの権威は持っていなかったと思うが」

「黙れぇぇえ! 忌まわしき鬼めぇえ!」


 わたしに向けて魔法が放たれる。

 えっと、この魔法には――


「剣技・曼殊沙華」


 ――斬撃が効く。


「ランスナイト!」

「「おう!」」


 一斉に突き出された槍には――


「剣技・斬鉄」


 ――斬撃が効く。


「構わぬ! 多少の犠牲を払おうと、ヤツさえ亡き者にすれば我が国は復興するのだ! 死を恐れず突っ込め!」

「「ぅぉおおお!」」


 数に物を言わせた攻撃には――


「剣技・真空斬」


 ――斬撃が効く。


「バケモノか!?」


 叫ぶ騎士の声の向こうから――


「全部同じ対処法じゃない」


 ――と、飽きれたようなキッカの声が聞こえた気がした。

 気のせいかもしれないけれど。


 視線を向けると、キッカがシェフを守ってくれている。

 よかった。

 これで安心して戦える。


 ドラゴン族のみんなも、上空へ避難している。

 あの高さなら、矢も魔法も届かないだろう。


 あとは、わたしが騎士たちを諦めさせて追い返せば、またみんなで感謝祭が――




 その時、空が斬り割かれた。



 そう錯覚するほどの斬撃が夜空を駆け、マザーの体を斬り割いた。


『マザァー!?』


 グロリアの悲鳴にも似た声が空を劈き、マザーが地面へと墜落する。

 一斉に群がるドラゴン。


 だが、わたしの視線はその斬撃を飛ばした人物へと注がれ、そして、頭の中が真っ白になった。

 久しぶりに聞くその声は、昔と何ら変わっておらず――



「弱いな」



 ――わたしの体は恐怖に硬直してしまった。



 なぜ……





 なぜ、父がここに?







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