67 ドラゴンの里感謝祭
というわけで、チーズとヨーグルトが出来たので、ついでにソースの作り方も覚えてみた。
フルーツをたっぷり使った、甘くて濃厚なスパイシーソース。
これでお肉を食べると、きっと美味しいよ~。
「では、アイナさん」
「うむ!」
「キッカさん!」
「準備OKよ!」
「では、歩くトラットリアプレゼンツ! 第一回、ドラゴンの里感謝祭を、開催します!」
ぎゃああぉぉおぉおおおおおおっ!
とんでもない声が轟いた。
みなさん、人間の姿のままなのに、ドラゴン数百体分の咆哮が大地を揺るがした。
「料理は沢山ありますので、じゃんじゃん食べてください!」
「お酒、も、もらってきた」
「エロニンゲンからの、贈り物なノ!」
「優しいエロニンゲンナの!」
褒めてくれてるんだろうけど……エロニンゲン、直らないかなぁ。
「お肉もじゃんじゃん焼いてきますから、どんどん食べてくださいね!」
『ミサキ』さんがくれた調理器具の中に、波型に凹凸のある鉄板があった。
これを使えば、肉から出る余分な脂が落ちて、さっぱりといただけるはずだ。
この料理の名前は――
「ラムとマトンのジンギスカンですよ!」
野菜もたっぷり焼いて、甘辛い濃厚ソースで味を付ければ、白米が魔法のように消えていくメチャ美味料理の完成だ!
「うむ! これは非常に美味であるな!」
マザーさんが、ボクの作った料理を食べて声を上げる。
クイツクシープのミルクから作ったチーズを、トマトとレタスで挟んだカプリチョーザを食べて。
「いや、お肉も食べてくださいよ!?」
「さっぱりドレッシングのサラダもなかなかだぞ、エロニンゲン!」
「お肉!」
「それは、そなたらに下賜してやる。残さず食せ」
ぐぬぬ……
「さっき、ボクを信じると言ってくださいましたよね? グロリアさんを尊重すると!」
「とはいえ、目の前にこうも多量に積み上げられると…………うわぁ……」
そんな嫌そうな顔しなくでも!?
「気が向いたら、いただこう」
往生際悪いな、この里のトップ!?
「チルミルちゃん、ピックルちゃん」
「あげるなノ!」
「食べればいいナの!」
ぐぬぬぅ~!
「グロリアさん!」
「いただこう! たまらない、しょうじき、このニオイは!」
そうして、差し出した小皿を受け取り、大きな一口でジンギスカンをあっという間に平らげてくれたグロリアさん。
「おいしい! やはり、お前の料理は、おいしい、な!」
「グロリアさん、大好きです!」
「ほわぁぁああ!?」
思わず手を握り締めてしまった。
小皿を持つ手を、両手で、がっちりと!
ボクの料理を食べてくれるって、なんていい人!
美味しいって言ってくれるって、なんていい人!
「グロリアさん、いい人!」
「わ、わかったから、手、手を、手をはな、はな、はなしぇー!」
腕を振り上げて「ぅわぁ~!」っと走り去っていくグロリアさん。
「まだまだおかわりあるのにぃー!」
「急に手なんか握るから」
冷ややかな声で、キッカさんが言う。
……え、ボクって、触れられるのも嫌なくらいに嫌われてます?
不衛生認定でしょうか?
「一応……手、洗ってるんだけどなぁ」
「うん、そーゆーこっちゃないから」
違うらしい。
「シェフ、とても美味しい」
と、ジンギスカンを食べてアイナさんが言ってくれる。
「ありがとうございます、アイナさん」
「うむ。とても、美味しい」
「嬉しいです」
「うむ。それはもう、とても、美味しい!」
「はい、えっと……」
なんだか、会話がループしている。
これは、なにか条件をクリアしないと先に進めないヤツだろうか。
お師さんが言うには、初代オーナーの世界では、そういう謎解きがあったのだとか。
謎解き。
「美味しい」という言葉を聞いて、ボクが取るべき行動は……
あっ、なるほど!
というわけで、手を洗って――
「アイナさん。大好きです」
両手を握って、そう伝えてみた。
「……両方とは…………不覚」
呟いた後、アイナさんが動かなくなった。
あれ!?
間違えた!?
初代オーナーの世界では、こういうのはフリーズバグって言って、一番やっちゃいけないことだって、お師さんが言ってた。
なんか、リセット? ――して、最初からやり直しになるって。
えっ!? 大変!?
最初からやり直しなんてとんでもない!
アイナさん、戻ってきてください!
フリーズはダメですよー!?
「まぁ、放っておけばその内復活するわよ」
「本当ですか?」
「アイナは、まぁ、ほら、最強だし」
なんだろう、その物凄い説得力。
そうですね。
アイナさんは最強なので、きっとすぐに復活してくれるでしょう。
キッカさんの言葉を、信じます。
「ちなみに、さ……美味しい、わよ?」
「はい! 信じます!」
「…………こっちはこっちで、空気読めないのよね」
顔を背けて、ぽそぽそっと悪態をつかれた。
ボク、何か悪いことしたのだろうか?




