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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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55 目ぇぇえ!

 アイナさんの大活躍と、キッカさんの健闘と、チルミルちゃんとピックルちゃんのお手伝いと、グロリアさんの尊き犠牲のお陰で、ドラゴン族の男性たちが耕した広大な農地に満遍なく歩くトラットリアから持ち出した特殊な土が混ぜられた。


「贔屓がエグいのよ、あんたは」

「誰が、犠牲、か!?」


 なんか、キッカさんとグロリアさんからクレームが……事実をありのまま口にしているだけなのに。


「とりあえず、作業も終わりましたし、少し休憩しましょう」


 土を耕したからと言って、今すぐ何かが起こるわけではない。

 この荒れ果てた大地は、きっと農業には向いていないのだろう。

 それでも、歩くトラットリアの土があれば、きっとこの地でも多くの食物が実るはずだ。


 お師さんが自信たっぷりに持ち出してきたんだから、きっとそういうことなのだろう。

 ……これで、うんともすんとも言わないような結果だったら、その身を生贄に差し出して、大地に眠る農作物の魔神を蘇らせる儀式を行ってもらうとしましょう。


「そんな物騒な魔神は、この地には眠っとらんぞぃ、ボーヤや」

「人の心を読まないでください」

「声に出とるぞい」

「あっはっはっ、そんなバカな」

「いや、出てるわよ、タマちゃん。っていうか、結構な頻度で独り言出ちゃってるから、気をつけた方がいいよ、タマちゃんは」


 なんということでしょう。

 まったくの無自覚。


「じゃあ、さっき、まぜまぜ、ぴょんしてたキッカさんが、『ん〜! 終わったぁ〜』って伸びをした時、『わぁ、地面と直角だなぁ〜』って思ってたことも、まさか声に出てましたか!?」

「そんなこと思ってたのか、コノヤロウ。上等だ、かかってこいや」


 キッカさんが、『その筋』の人みたいな恐ろしい目で恐ろしい雰囲気をまといながら恐ろしいお誘いをしてくるので、謹んでお断りを述べておく。


「とりあえず、何か食べませんか?」


 そうだ、話題を変えよう。

 こんな時は話題を変えるに限るね☆


「カエル、だけにのぅ」


 踏み!


「ほっほっほっ、メンズに踏まれてもちぃ〜とも楽しくないんじゃぞい、ボーヤよ」


 奇遇ですね、こっちも全然楽しくないですよ。

 こんなに踏んでるのに、一切手応えならぬ踏み応えがない。

 防御力、どうなってるんですか、そのヌメヌメボディ?


「グロリアさんも、随分とお腹を空かせていましたし、みなさんも空いてますよね、おなか?」


 そう問いかけると、何故かグロリアさんに足を踏まれた。


「なぜ、バラすか?」


 あ、お腹空いてたこと、秘密だったらしい。

 いや、空腹は恥ずかしいことじゃないですよ?

 健康のバロメーターですし。


「いっぱい食べてくれて、嬉しかったですよ」

「なぜ、バラすか!」


 目ぇっ!?


 グロリアさんの照れパンチが目に当たる。

 ……グロリアさん、そーゆー時は、普通口を塞ぐものだと…………そういえば、グロリアさんは照れた時によく「こっち見るな」って言ってますっけねぇ。

 だからって、実力行使はよくないと思うんです、ボク。


「とりあえず、何か作ってきますよ」


 歩くトラットリアで作った料理は、外に持ち出すことが可能だ。

 なので、いつかお弁当を持ってみんなでピクニックとかに行きたいな。


「シェフ」


 楽しい未来予想図を思い描いているところへ、アイナさんが声をかけてきてくれた。


「はい、行きましょう、どこへでも!」

「え……っと、どこかへ、行くのだろうか?」


 あれ?

 今、「ピクニック行こうね〜」って話、してませんでしたっけ?

 あれ? まだ脳内からアウトプットされてませんでしたっけ?


 おかしいなぁ。

 もれなくていい言葉はどんどん漏れているのに……バグってないですかね、ボクの口?


「それより、ボクに用事ですか?」

「うむ。用事というより、見てほしいのだ」


 見る?

 見ましょう!

 なんでも見ましょう!

 アイナさんが見せてくれると仰るものなら、どんなものだって!


 と、なんでもウェルカムの姿勢を取っているつもりなのに、視線が自然ととある雄大な膨らみへと吸い寄せられていく。

 だって、なんかさっきの感じだと、見ても怒られないような雰囲気でしたし……


「見すぎよ」

「目ぇぇえっ!?」


 目に、再び衝撃が。


 キッカさん、知ってます?

 目って、急所なんですよ?

「手加減したから」、とかじゃないんですよ、目って。

 まぁ、キッカさんが手加減してなければ、貫通してたでしょうけども。


「それで、何よ、剣姫?」

「これを見てほしい!」


 アイナさんの声に、痛む目に涙を滲ませながら頑張ってまぶたを開くと、アイナさんは膝を揃えてしゃがんでいて、それはもう大層可愛いポーズをしていた。


 見ましょう!


「ここだ」


 嬉しそうに、両腕を伸ばして、見てほしいのであろう部分を示している。

 それは直径にして15センチくらいの範囲で、両腕を伸ばしてそれだけ狭い範囲を「ここだよ!」と示す時、人の脇は締まり、肘も内側に寄る。

 つまり、アイナさんの腕が、アイナさんのそのあまりに雄大な胸を、ご自身で、「むぎゅううううっ!」と寄せているのです!

 しかも、しゃがんでいるから、その「むぎゅううううっ!」を上から見ることになって――



「本当にありがとうございま目ぇぇええええ!?」


 左右の目を、キッカさんとグロリアさんに「こらっ!」ってされた。


 ……表現を可愛くしとかないと、色んなところの規制に引っかかりそうな、そんな痛さだった。







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