表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/190

52話 ドラゴンの怒り -4-

 キッカさんのアイアンクローから解放されたボクを待っていたのは、マザーさんの冷ややかな瞳だった。


「誰でもよい、その不埒な人間のオスを地下牢へ放り込んでくるのじゃ!」


 熱弁が過ぎて実刑判決が下ってしまった!?

 思いっきり逆効果だった!?


「それから、そこのウサギの少女」

「へ? あたし?」

「そなたとは仲良くなれそうな気がする」

「……このタイミングでシンパシー感じられると、非常に不愉快なのだけど……!」


 乳友の友情が芽生えた瞬間だった。

 でも、マイノリティーを共通の敵と見做して結ばれる結束力なんて悲しいだけです!

 そんなの、本当の友情じゃない!


「みなさん! もっとおっぱいについて語りましょう!」

「そこのエロ人間を極刑に処せ! 今すぐにじゃ!」


 悪化したぁ!?


「待ってほしい、マザー」


 アイナさんが声を上げる。

 ボクのピンチを救ってくれるのは、いつもアイナさんで――


「一つ聞いてほしいことがある!」


 ボクは、その優しさに一層――


「シェフは、大きな胸が嫌いなのだ!」


 惹かれて……んんっ!?


「それは……真か? アイナよ」

「うむ。真実だ」


 え?

 いやいやいやいや。

 嫌いどころか、大好きですけども?

 愛していると言っても過言でないほどに。


「事実……わたしは避けられている」


 そんなわけないじゃないですか!

 え?

 なぜ?

 一体どこでそんな勘違いを?


 ボクのなんらかの行動が、アイナさんにそんなことを感じさせていた……の、だろうか? 

 それとも、マザーさんを落ち着かせるための方便?

 そうであってほしい……けれど。


「……アイナは、嘘が吐けるような娘ではなかったな。確か」


 そうなんですよねぇ!

 アイナさんはどこまでも真っ直ぐな人で、こういうとこで口から出任せを言えるような人じゃないですよね。


「だから、シェフは……わたしよりも、キッカやグロリアと仲がいい」

「……剣姫さぁ。それ、暗にあたしたちをディスってるわよね?」

「……大きく、ない、と、言っている、のと、同義」


 キッカさんとグロリアさんの周りに暗黒色の空気が充満していく……が、それはさておき。

 アイナさんには、そういう風に見えていた……のか?


「だから……!」


 アイナさんの言葉を否定したいのに、何を言えばいいのか分からなくて……頭が混乱して…………

 結局何も出来ないでいるボクを置いて、アイナさんが言葉を重ねる。

 マザーさんに向かって。

 素直な、本心であろう言葉を。


「わたしは、平らな胸のあなたたちが羨ましい!」

「「「「「よぉし、そのケンカ買ったぁ!」」」」」


 敵意と憎悪が神聖なる神殿に溢れかえっていく。

 引き返せないくらいに悪化した場の空気にくらくらと目眩を覚える。


 どうしよう……

 こんなにこじれてしまっては、もうまともな話すら出来そうにない。

 なにか……

 この状況を収める手段は……


「ほっほっほっ。ここは、ワシの出番のようじゃのぉ」


 明るく落ち着いた、余裕のある声が聞こえた。

 振り返ると、どうやってぐるぐる巻きの麻袋から脱出したのか、一匹のカエルがそこに立っていた。


「お師さん……」


 こじれにこじれたこの状況を打破するために、お師さんがやって来たということは――



 余計にこじれるな。これは。



「お師さん、ハウスッ!」

「それはさすがに酷いじゃろうて、ボーヤよ」


 いつものように、のらりくらりと締まりのない顔でボクの言葉をかわし、マザーさんの前へと進み出るお師さん。

 一体何をしでかす気なんですか……



 果たして、ボクたちはこの荒みまくったドラゴンの女性たちと、分かち合うことが出来るのだろうか…………







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ