表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

166/190

50話 友達、から -3-

 グロリアさんのお知り合い、ドラゴンのチルミルちゃんとピルクルちゃんからもたらされた不穏な言葉。

 なんだろう、心臓が嫌なリズムを刻んでいる。


「あの、安全って……ボクが、『君たちに危害を加えない安全な大人ですよ~』という意味ではなく?」

「命の、安全ナの」

「おにーちゃんの、安全なノ」

「えっと……ちなみに、エロい人がそのマザーという方にお会いすると……」

「死ぬナの!」

「瞬殺なノ!」


 …………ごくり。


「……で、タマちゃん。どうする?」

「あはは、嫌だなぁ、キッカさん。何言ってるんですか。エロくなければ安全だって言ってるんですから、当然………………少しだけ考える時間をください」


 果たして、このままドラゴンの里へ入ってもいいものだろうか。

 いえ、エロくないですよ?

 ボクは全然エロくはないんですが、ただ…………そう! 健全! 健全な男子ですので、いわゆるそのぉ……まぁ……平たく言うところの……エロス? 的なものに引っかからない保証はないというか、自信がないというか……健全な男子ですから、ボクは! 健全、そう健全!


「シェフ」


 命がけの黙考をするボクに、アイナさんが声をかけてくる。

 ほんの少し、不安げな表情で。


「シェフはエロい」


 んんっ!?


「……の、だろうか?」


 よかったぁ、疑問文で!

 本当によかった!


「そんなことないですよ」


 持ち得る限りの「そんなことない感」をたぎらせて、爽やかに否定する。そう、即座に!

 アイナさんに問われれば、即答で否定しますとも!

 男子として!

 そこは、もう!


「では、安心だな」


 ボクの言葉を信じ、心底安心したような表情を見せるアイナさん。


「そぅ、です、よ。えぇ、安心、ですよ…………あはは、はは……はぁ」


 なぜだろう。

 全然安心出来ない。


「ところで、たまに耳にするのだが……『エロい』とは、どういったことなのだろうか?」

「えっと……ボクには、なんと答えていいものやら……」


「ボクみたいな人のことです☆ てへっ☆」……とでも言えれば、説明は簡単なんでしょうが…………出来るはずもなく!

 エロくないですし! 健全!

 今後は健全で押し通しますよ!


「キッカは、知っているのか?」

「年がら年中おっぱいのことばっかり考えてるような人のことじゃないのぉ~」


 じとぉ~っとした視線がボクにまとわりついてくる。

 やめてください。そんな目で見ないでください。……心が折れそうですので。


「ふむ……」


 キッカさんの説明で何かを察したのか、アイナさんが小さく頷いた。


「つまり、キッカはエロい」

「誰が年がら年中おっぱいのことを考えてるかっ!?」

「え、いや、でも……」

「反論すんなぁ!」


 あぁ……

 キッカさんが自分の術中にどっぷりと。

 あれが、『墓穴を掘る』ってことなのかなぁ。

 たしかに、年がら年中考えてますよね、おっぱいのこと。主に、育乳について。


「きっか」

「きっかぁ」

「な、なによ?」

「死ぬナの?」

「瞬殺なノ?」

「あたしエロくないからっ!」


 少女相手にも手加減抜きのキッカさん。

 エロい人認定は是が非でも拒否したいらしい。……そりゃそうだ。


「じゃあ、ドラゴン、の、里に、ご案内ナの」

「ご案内なノ」


 チルミルちゃんとピルクルちゃんが揃って両手を上げる。

 こうして見れば歓迎ムードに見えなくもないのだが…………まさか、命の危険が潜んでいるとは。


 そして、もう一つ気になる点が……


「アイナさん」

「…………」

「大丈夫ですか?」

「えっ、……何が、だろうか?」


 アイナさんがとても緊張した表情をしている。

 ドラゴンの里が近付くにつれて、その緊張は顕著になっていた。


 それも仕方がないだろう。

 幼い日に、明確な拒絶を示した者たちとの再会なのだから。


「一緒に、行きましょうね」

「……一緒に…………」


 せめてボクが、ほんの少しだけでも、アイナさんの不安を取り除ける一助になれれば――そう思った。


「……うむ。一緒に行こう」


 それが成功したのかどうかは分からないけれど、アイナさんは、少しだけ笑ってくれた。



 そして数分後。

 ボクたちはドラゴンの里へと、たどり着いた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ