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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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44話 横たわる -1-

「人間に、追われ、わたし、たち、ドラゴンは、人間の、来ない、場所、へ、移住、した。それは、とても、環境の、いい、場所、とは、言えな、かった」


 曰く、砦崩壊後もドラミルナのドラゴンスレイヤーたちは度々ドラゴンの里を襲撃したらしい。

 また、里の場所を知られたことでドラゴンは安らげる日々を失い、幼い者、力のない者の体力と精神をどんどん削り取っていったのだそうだ。

 そして、ドラゴンの長であるクイーンドラゴンは決断を下した。

 人間のたどり着けない場所への移住を。


「クイーンは、そこが、生き物に、とって、優しい、環境、で、ないことを、知って、いた。けれど、幼き者、を、守るために、苦渋、の決断、を、した」


 痩せた大地では作物は育たず、以降ドラゴンたちは慢性的な飢饉に喘いでいるのだという。

 狩りを出来る者も限られ、徐々に、里全体の力が失われていったのだそうだ。


「動ける、者は、もう、少ない……わたし、は、危険を、承知で、里を、出た。食料、と、新天地を、求め、て」


 ドラゴンはその巨体と凄まじいパワー故に、生きているだけでかなりのエネルギーを消費するらしい。

 空腹では、空を飛ぶことすら難しいのだとか。


 グロリアさん自身、もうすでに数週間何も食べていなかったようで、随分と弱っていた。本来なら、飛ぶことすら難しい状況だった。

 それでも、里を助けたい一心で空へと飛び立った。


「わたし、が、やらなければ、里は、滅びる……今、こうして、いる間も、里の、者たちは、飢え、苦しんで、いる、はず……。だから…………」


 横たわるボクの枕元に正座して、切々と、こんこんと語るグロリアさん。


「わたしは、こんな、くだらないこと、で、足止めを、喰らって、いる場合、では、ない、というのに、状況が把握出来ない程度の脳しかないのかこのウスラバカヤロウ」

「……申し訳ないです」


 鼻血を噴き出して倒れたボクへの怨嗟を込めて。それはもう、存分に練り込んで。

 枕元からじっくりねっとり注ぎ込まれる怨嗟の感情が、減った血の気をさらにどん引きさせていく。


「恥知らず、破廉恥男、オープン・ザ・むっつり」

「相変わらず、罵詈雑言はすらすら言えるんですね……」


 ボクが倒れたせいで【ドア】は一時停止し、深い渓谷の下の岩肌にくっついている。

 お店のフロアに寝かされているボクを、邪眼をギラつかせるグロリアさんが覗き込んでいる。

 キッカさんは立ったまま、あきれ顔でボクを覗き込んでいるし、お師さんはここ最近ずっと行方知れず。


「シェフ。タオルを濡らしてきた」


 甲斐甲斐しく看病してくれるのはアイナさんだけ……あぁ、天使。


 …………だが。


「あぃ……、あにぎゃとぅごじゃりましゅ!」


 ボクは、まともにアイナさんの顔を見ることすら出来ないでいる。

 大空を舞っていたあの神々しい姿が、ボクを心配してくれていたあの慈愛に満ちた表情が、ボクを包み込んでくれたあの優しい香りが、そして――あの堪らん柔らかさが一気に思い出され、瞬間的に脳をショートさせるのだ。


 アイナさんを見ると…………恥ずかしいっ!

 穴があったら、その中に入って叫びたい! 神の名を!


 この幸運を与え給うた神の名を。

 あの神聖なる柔らか物質を生み出した偉大なる神の名を。

 けれど、


 あの膨らみを生み出した神の名を、ボクはまだ知らない。


 なので、神の偉業を称える言葉を叫ぶことにする。

 神様――



 おっぱいは、最高ですっ!



「シェフ……泣いて、いるのか?」

「……ぐすっ。…………泣いて、ないです……っ」


 これは涙ではありません。

 神へ捧げる、ボクの純粋な感謝の結晶です。


「……わたしが拭こう」

「ひゅぃっぐっ!?」


 静かに、タオルが頬に触れる。

 アイナさんの持つ、濡れたタオルが、ボクの顔を……撫でる。


「……ごふっ!」

「シェフッ!? またしても血がっ!?」


 込み上げてくる感情を抑えることが出来ませんでした。

 ……もう、血液、なくなってもいい。


 ボクの死因は、『幸福』だったと、後世に伝えてくだ……さ…………い……


「シェフ!? ダメだ、目を開けるのだ! 今眠っては死んでしまうぞ!」

「……いいんじゃん。幸せそうだし」

「キッカ、に、同意。むしろ、トドメを、刺す、べき」

「シェェェェエエエエフッ!」






レビューをいただきましたよっ!


別のシリーズではお馴染みの、 [2017年 09月 17日 10時 19分]の方!


とにかく楽しい文脈で、賑やかなのにとっ散らかっていない。

読み手にしっかりと伝えたことを伝えつつも、独自の匂いや味をこれでもかと押し出した書き口はお見事!

まったく知らない人が読んでも「あ、これ面白い」と思ってしまう文章って実はなかなか難しいんですが、うまく読み手を巻き込んで共犯関係にして楽しんでしまおうという試みが見事にハマった、面白いレビューでした!


そして、大体どんな話かこれだけで分かるという、ね。

ぽぃ~んです。男子は、ぽぃ~んに人生のすべてをかけることが出来る、そんな生き物なんです、よね?(同意を求める目「じぃ~」)


レビュー4件目です!

どうもありがとうございました!!



あはぁ……しあわせだなぁ(*´▽`*)

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