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スキルマ剣姫と歩くトラットリア  作者: 宮地拓海


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40話 コスプレしてみよう -3-

「…………あの、こんなのどこにあったんですか?」

「お師さんが、『機会があれば使うといいのじゃ』と、みんなに秘密でくれたのだ」


 あのカエル……ボクの知らないところでアイナさんにプレゼントを……それも、こんなにもアイナさん好みの物をっ!


「やはり、思った通りだ……とても可愛いぞ、にゃんこシェフっ!」


 ボクは今、ネコの着ぐるみを着ている。

 いや、着せられている。


 もっふもふのボディ。

『?』のような、ユニークな形の尻尾。

 なぜだか紫という奇抜なカラーの毛並み。

 そして、……どうせなら顔を完全に覆い隠すフルフェイス系ならよかったのにと思わざるを得ない、ボクの顔が完全に丸見えタイプのかぶり物。


 もっこもこなぬいぐるみの顔だけがボク、というシュールな出来映えだ。

 計ったかのようにサイズがぴったりだった。


 お師さん……あなたは、どんな使用用途を想定してこれを入手してきたんですか?


 だがしかしっ!

 こんなユニークな格好をさせられていることなど些末なことなのだ!

 見よ、アイナさんをっ!


 青と白を基調とした清楚でありつつ可愛らしいドレス!

 エナメルの靴は丸っこく、白いソックスと相俟って幼さを醸し出す。

 立派に……立派過ぎるほどに育ちきったアイナさんのプロポーションとのギャップが、…………堪りませんっ!

 何より目を引くのがどーんと張り出したおっp……頭の上で揺れ動く大きなリボン! これは可愛い! ザ・少女! ザ・穢れなき天使!

 邪な気持ちで見るなど不可能! だから見てませんよ! お腹をきゅっと締めるようなデザインのジャンパースカートのせいでなお一層強調された『どどーん!』って効果音がぴったりきそうなあの大きな膨らみなんて! チラッとしか!



 あぁ、めっちゃ可愛い……いとおかし……



「わはっ!? なになに! もしかしてタマちゃん!?」


 背後からキッカさんの声がして、振り返ると…………ウサギさんがいた。


「ありがとうございますっ!」


 はっ!?

 思わずお礼が、口をついて!


 だって、しかたがないですよ、これは!

 魅惑的な黒いスーツが大人の色気を演出しつつも、まっしろな耳と尻尾が無垢な少女を思わせる、反則級の可愛さなんですもの!

 そして…………やはりキッカさんの脚は、美しい。

 なんでしょう……ふとももからヒザ、スネにかけての緩やかなS字曲線が絶妙のバランスなんですよね…………もしキッカさんが壷だったら「いい仕事してますねぇ」って言っちゃってるところだ。


「ちょっ……じろじろ見過ぎ! ……まだちょっと恥ずかしいんだから、あんま、見んな」

「は、はい……すみません」


 思わず顔を逸らせる。

 おかしい……これまで、キッカさんには全然ドキドキしなかったのに……

 …………疲れてるのかな?


「二人とも、もふもふで可愛いぞ」

「……あんたは……………………けしからんわね」


 キッカさんの視線は、アイナさんの体の中のとある一部に釘付けになっている。

 鎧を着ていないせいで、こんなにも、これほどまでにも強調されている。


「ホントもう、ありがとうございますっ!」

「こら、そこのネコ。さばくわよ?」


 ウサギが刃物をチラつかせる。

 いやいや。バニースーツみたいな布地の少ない衣装のどこに隠し持ってたんですか、ナイフ……


 それにしても、なんとも賑やかな雰囲気になったものだ。

 衣装を変えるだけでこんなに華やかになるなんて。


 そういえばこの衣装……青いドレスの女の子と、ウサギと、紫のネコ。

 お師さんの部屋にあった不思議の国の女の子の絵本のようだ。


 なんとなく、予想していた方向性とは異なるような仕上がりになっているけれど……特にボクが……ネコって……着ぐるみって…………けれど、こういう不思議な感じも楽しくていいかもしれない。そんなことを思った。


「じゃあ、【ファームフィールド】へ行きましょう!」

「【ファームフィールド】? なんで?」

「収穫祭ですから」


 収穫を祝うのであれば【ファームフィールド】が最適だ。


「そこにお店を出します」

「お店?」

「シェフの作る料理のお店だろうか?」


 キッカさんとアイナさん、二人の目がきらりと輝く。

 やはり、お祭りといえば食べ物だ。


「本番は明日ですけど、今日は前夜祭ということで」

「よし、食べよう! お肉二本しか食べてなかったしね!」

「キッカの足肉」

「あたしの足じゃないから!」


 そんな、ちょっと不思議で、すごく楽し気な雰囲気に包まれたホールの中に、



 ガチャ!



 と、ドアが開く音が響いた。

 そして、【ドア】から顔を覗かせたのは……


「………………え?」

『……ガ?』


 ……ドラゴン、だった。


「ドラゴン…………です、よね?」

「そ、そうね……そう、見える、わね」

「うむ。ドラゴンだな」


【ドア】の向こうから店内を覗き込むドラゴン。

 そして、驚くべきことにそのドラゴンは――



『アイナ……?』




 ――アイナさんの名を呼んだ。






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