外の世界
桜の舞うこの季節。
俺の同年代はみんな今頃心がわくわくの気持ちでいっぱいだろう。
だけど、俺は違う。俺は高校生なんてなりたくなかった。
けれど俺の両親は俺が高校に行きたくないと言ったらいつだってこう言ってきた。
「高校はお前が思っている以上に楽しい場所だぞ。
高校では新しい出会いがある。 新しい友達もできる。好きな人だってできるかもしれないぞ。
高校は中学とは違って楽しいから行ってみろ」
そう言われて俺はいやいやながらも高校受験を受け、見事に受かってしまったんだ……。
俺の両親はあんなこと言ってたけど、中学1、2、3、と学校に行かずに家でずっとゲームして引きこもってた俺が友達なんてできるはずがないんだよ…。 好きな人なんて人生で1度だってできたことなんてないし…。
「いってきます」
「いってらっしゃーい!」
俺は重たい足を動かし、巨大な門を力ずくで開け学校に向かった。
まぁ、巨大な門って言ってもただのドアなんだけど、今の俺からしたら巨大な門に見えたんだ。
「よっ!テルマ!」
「だ、だれですか?」
どこかで聞いたことのある声だ。でも見たことが無い人だ。
いきなり俺に話かけてくるなんて。どこかで会ったことあったかな?
「おいおい、冗談はやめてくれよ、お前は幼馴染の顔も忘れちまったのかよ!
3年ぶりくらいか?元気そうだな!」
「えっ! お前ユウヤか?
久しぶりだな、お前も元気そーじゃねーか!」
聞き覚えのある声の正体は俺の幼馴染のユウヤだった。
俺が仲がいいと言える数少ない友達の一人だ。
「その制服。テルマお前も春桜なのか?」
「そうだけど、まさかお前もか?」
「テルマ!偶然だな!俺の春桜の入学者だよ!
同じクラスだといいな! お前明日から学校来ないとかはやめろよな!」
「なんだよ。お前とおんなじ学校かよ…。
お前うるせえからおんなじクラスはやだなぁ…。」
「おいおい。俺のメンタルはガラスのメンタルなんだぜ。
そこまで言わなくたっていいじゃねーか幼馴染くん!」
「はははっ。冗談だよユウヤ! おんなじクラスになれたらいいな!」
よかった、不安だらけの高校生活だったけど、とりあえず友達がいてくれて…。
ユウヤとは小さいころからの親友だ! こいつがおんなじ学校で本当によかった…。
「おいおい。あの人込みはなんだ?」
「どうしたんだよユウヤ」
「テルマ見てみろよ。あそこ」
「うわ、なんだよあの人込み。あんなところ行ったら窒息死しちまうよ…。」
「はははっ。テルマは相変わらず面白いな! 窒息死はしないと思うから行ってみようぜ」
「おい、待てよ!おいユウヤ!」
俺はユウヤに連引っ張られて俺が大嫌いな人込みの中に連れていかれた。
人込みの中心には、顔立ちは良く金髪ロング、モデルのようにすらっと細くて長い脚。
全世界の男性が理想としているパーツがすべてそろっているまるで完璧な女子がそこには立っていた。
「おい、みたかよテルマ!誰だよあの美人!」
「し、知らねえよ! それよりもお前いきなり人込みのなかに」
「可愛かったなぁ、だれだろうなぁ、一年生かなぁ。
どうだと思うテルマ」
「人の話しを聞け!
まあ、確かに可愛かったけど、性格はわからんけどな。
よくゆうじゃねーか、可愛い奴ほど性格が悪いって」
「おいおい、お前はあんなにかわいい子が性格悪いと思うか?
俺は思わないね!いや思いたくないね。」
とは言ったけど俺もあの女の子のことは気になっていた。
あんなに可愛い女の子きにならない方がおかしい。
まぁ、引きこもりだった俺とは無縁だろうけどな。
「あー、はいはい。
そろそろクラス表みにいかねーか?」
「おっとそうだったな!完全に忘れてたよ。
えーっと俺は3組でテルマお前は何組だ?」
「えー、俺は…。1組だ。」
「離れちまったな。まぁでも3組と1組そんなに離れてないし、休み時間とかいつでも来いよ!」
「まぁ、気が向いたらな。
人込みもなくなったしそろそろ教室いくか!」
「そうだな、じゃあなテルマ!俺あっちだから」
「おう、じゃあなユウヤ」
俺は自分の教室へと向かった。
教室のドアを開けた俺はドアの向こう側に座っていた女の子と目が合った。
俺はとっさに目をそらしてしまった。
なぜならその女の子はさっきの人込みの真ん中にいたあの超可愛い女の子だったんだ。
窓の向こう側で舞っている桜がほど良く背景になって、
その綺麗で美しい桜の背景にも負けない可愛くて美人なあの女の子は
平凡で普通の高校生活を送るつもりだった俺に、これからハプニングだらけのめちゃくちゃな高校生活になることを予感させたのだ。