奴隷としての生活:神殿サッカー編そのニ
さて、俺には一応女王の推薦もあるんだが、だからといって無条件にチームに入れてもらえる訳ではないらしい。
「まあ、そりゃそうだよな、どこから来たのか分からんやつを無条件でいれるチームはないわな」
そういや今頃気がついたがまずは100メートル走ってこの時代メートル法は無いんじゃ?
基本の長さの単位はキュビット(おおよそ50cm)じゃないのか?
『大丈夫だ、きちんとこの本にのっているとおりにさせてある』
そういってホルスが見せた本は漫画の”キャプテ○翼”しかも中学生編だ。
この頃の異次元サッカーぶりを真面目に取られてたら死人が続出するぞ。
「おいぃ?!」
それはサッカー漫画ではあっても、サッカーに、似たスタイリッシュ格闘球技だからな?
あれ、でも”シュー○”でもゴールキーパーが吹き飛んでネットに突き刺さったりしてるし、案外日本のサッカー漫画ってボールで人間を吹きとばせると思われてるのかも?
『ボールと人が宙を舞い、はるか地平線の彼方に見えるゴールにボールが人間ごとで突き刺さる瞬間の感動はなんともいえん.
というわけで頑張ってくれ』
いい笑顔で親指建てられた。
……まあ、何とかなるだろ、今日は100メートル走とドリブルとリフティング、と軽い練習試合だけだ。
軽いで済むといいな。
・・・
入念に体をほぐした後俺の100メートル走の順番が来た。
「さて、なんとかタイムがレギュラーに入れるくらいにはなってるといいんだが……」
「位置について」
其の号令でスタートラインにみんな並ぶ。
「用意」
ぐっと足に力を込める。
因みにスタートブロックもスパイクもないぞ。
「スタート!」
だっと、全力で走る。
そしなんと俺はトップでゴールに走り込んだのだ。
ストップウォッチがないから正確なところはわからないが11秒台くらいの速さじゃないか。
専門にやってる陸上部はともかく野球やサッカーの選手で11秒は相当早いぜ。
「やったぜ!」
続くドリブル走でも俺はトップだった。
「まあ、こっちは年季が違うってのもあるだろうしな」
リフティングに関しては、まあ、まあまあだったと思う。
リフティングはボールコントロールを見てると思うんだが、そこまで得意なわけでもないんだよ。
もちっと練習しておくべきだったかもな。
そして実戦形式のミニゲームだ。
俺の希望はフォワード、そして希望通りにフォワードでの参加だ。
『フフフ、ようやく君の全力を開放できる時が来たな』
「え??」
俺がフィールドの入ると景色が一変した。
「何だこりゃぁ?」
ゴールが見えない地平線の彼方だ。
『ああ、大丈夫、ちゃんとその分身体能力は上がるから心配しなくていい』
「なんじゃそりゃぁ?」
”ピィー”
しまった、開始のホイッスルがなっちまった。
『開始から度肝を抜いてやるいい、必殺シュートだ』
「そんなもんはねーよ」
そういう俺の目前に
”ドリブル”
”シュート”
の選択肢が出た?
しかも時間が止まったように周りは止まっている。
「なんじゃこりゃ?」
『無論行動選択だよ、とりあえずシュートを選択してみたまえ』
選択ってどうやるんだよ、って視線あわせたほうがチカチカ光ってるな。
俺はシュートを選んだ。
”シュート”
”必殺シュートホルスの羽ばたき”
俺は必殺シュートの方を選んでみた。
「くらえ、これが俺のホルスの羽ばたきだ!」
俺は前傾姿勢から右足を後ろに大きく振り上げ、ボールを蹴る。
蹴った瞬間にボールが大きく変形し大空に舞い上がった。
うん、どこまで高く飛ぶんだあれ。
しかし、敵選手が地面をけるとボールに向かって大きく飛んだ。
”ゴッツ”
しかし、敵はボールに吹き飛ばされてボールはそのままゴールに向かって飛んでる……らしい。
そしてキーパーがボールに向かって飛んだが、その手はとどどかずにボールはゴールネットに突き刺さった。
「ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーール!」
練習試合に参加してる中でホルスからチートな能力をもらってるのは俺だけかと思ったが、みんな多かれ少なかれとんでもない身体能力にはなってるらしい。
しかし、必殺技クラスをもらったのは今のところ俺だけのような。
今度は敵の攻撃だ。
センターサークルで敵がちょこんとパスをすると、もうひとりがドリブルで突っ込んできた。
”タックル”
”パスカット”
どっちだ……ここはタックルで行くか。
”ズザーッ”
おれはグラウンドの上をスライディングタックルで滑る。
”ガッ”
そして敵からボールを奪い取った、すぐさま立ち上がるとドリブルに移行して前に進む。
そしてもう一度必殺シュートを放とうとした。
”クッガッツが足りない”
どうやら今の自分では一試合に必殺シュートは一度しかうてないらしい。
俺は慌ててもう一人のフォワードにパスをした。
そして、ワンツーリターンでディフェンダーを抜くと普通にシュートを決めた。
そしてそこで俺は交代になった。
こうして神殿サッカーの初日は終わった。
因みに死ぬほど疲れたのは言うまでもない。
「人間将棋の感覚でサッカー漫画を現実にするなよな……」




