奴隷としての生活:神殿サッカー編その一
さて、俺は家に帰ると早速ミウにサッカー大会に参加すれば自由民になれるかもしれないことを話した。
「王家主催のノモス対抗のサッカー大会に参加できるの?
そうなんだ、それってすごいことだと思うけど頑張ってね」
ミウはアカーナをあやしながら、笑顔で言ってくれた。
「ああ、頑張ってエジプトの人間に認められるようにしないとな」
そんなことを話した後は夜になったので俺たちは寝た。
・・・
『……い、……い……、おい、私の声が聞こえるか?』
何かに呼ばれてオレは目覚めた。
そしてオレの目の前には頭が隼の人間の形をした何かがいた。
「……だ、誰だ?」
『私の名はホルス。
エジプトの王を守護する物である』
ホルス?言われて見れば確かにそうだ。
「か、神様?
けど俺は王家とは何の関係もないただの奴隷ですが?」
『汝をこの世へ呼び覚ましたの私の協力者トートである。
そして、何時に与えられた使命はこの度行われる球技にて私のチームを優勝させることである』
「な、なるほど」
『そして其のための力を私は汝に与えよう』
「力?」
『うむ、汝の望む身体能力である』
「それはありがたいですが……何か代償とかあるんですか?」
『それは汝の働き次第だ』
「つまりあっさりまけたら……」
『うむ、其のようなことはないと思うがな』
まじか……。
『では明日よりよろしく頼むぞ』
「アッハイ」
・・・
朝になって目が覚めた、なんか妙な夢を見た気がする。
マイボールでリフティングや壁パスやらやってみたが、特段普段と変わりはない気がする。
「所詮夢ってことか? はあ」
「一体どうしたの?」
「あ、ごめんごめんなんか変な夢を見てさ」
「変なお兄ちゃん」
朝の食事が済んだら俺はホルス神殿へ向かった。
ホルス神殿は王宮のそばにあるがそれほど人は多くない。
アメンラーやオシリス・イシスなどの神に比べるとホルスの人気はいまいちなようだ。
そして、サッカーコートの場所を聞いてそちらへ向かう。
コートの中にはワセトの中から集められた選手候補らしい人間が集まっていた意外と多いな。
残念ながら見知った顔はいない、俺と一緒に遊んでいた連中は奴隷や平民ばかりだが多分ここにいるのは神官やら富裕層やらが多いのだろう。
「さて、俺がどれだけ通用するかだな」
エジプトでは男は15で成人だから俺はとっくに成人している。
しかし、体の大きさでは負けてるんだよな。
しばらくして、頭に隼の被り物をした男が俺に近づいてきた。
『やあ、よく来たな』
あれ、何か俺以外にははっきり見えてない感じ?
『そうだ、残念ながら現代の神官には私の姿は見えていない』
げ、じゃあ昨日の夢は正夢?
『そういうことだな、安心しろ、トートより知識はえている』
神様の言う事なら大丈夫だろう……多分。
そして神官長らしい男がやってきた。
「うむ、みんなよく集まってくれた。
近年のホルス神への信仰の低下は嘆かわしいことだ。
我が神殿への捧げ物や寄付も年々減っている。
この度のこの球技大会は我が神殿の威光を知らしめるよい機会である。
皆にはぜひ頑張って欲しい!」
「はい!」
「今日は全員の適正を見るぞ。
軽く体を温めた後、100メートル走、100メートルドリブル走、リフティングとポジション適正を見るための軽い練習試合をしようか」
おお、いきなりセレクションか、腕がなるぜ。




