奴隷としての生活:数学とペット・家畜編
さて、アカーナが生まれたからにはちゃんと稼ぎを増やさないといけない。
今日の俺の仕事は、国の穀物倉に収められた穀物の袋の整理と数の確認だ。
収穫された小麦や大麦が何袋収められたか数えて計算し記録する役割だな。
これは結構高い身分の人間が本来やることでエジプトに来て2年ほど経ったが、俺も結構認められてきたらしい。
「っとここかな、今日の場所は」
本来なら奴隷身分の人間がやることじゃなくてエリートである官僚の役目なんだが、読み書き計算ができポケット電卓というチートアイテムのお陰で掛け算や割り算のできる俺は何かと重宝されているらしい、子供もできて物入りな俺としてはとてもありがたい。
まったくもって俺の強い味方が”ソーラー電池付き電卓”だ。
現代だとどこにでもある手軽な道具だが、古代エジプトではなにかすごい魔法的な道具扱いだな。
スマホと違ってソーラー電池があるから電池切れもないし、構造も単純だからそんなに簡単には壊れない。
最初は取り上げられたことも有ったがアラビア数字はエジプト人には意味不明なのでこれは俺しか使えない。
エジプトの数字は一、十、百、千、万、十万、百万などの桁の象形文字しかなく、これらの象形数字をまとめて書くということは出来ないので、数字の数だけ並べて書くんだ、ちなみにエジプトにおける桁の最大は百万で 「ヘフ」と読み「無限」を意味するヘフ神と同じ意味になりこれ以上は全部ヘフつまり無限大と同じ認識だ。
例えば5を漢数字でエジプト数字的に書くと一一一一一、8なら一一一一一一一一、
99なら十十十十十十十十十一一一一一一一一一、
9999なら千千千千千千千千千百百百百百百百百十十十十十十十十十一一一一一一一一一
みたいな感じだな。
これで四則演算をやって記録するのはすごく大変なのは感覚的にわかるだろう。
「1,2,3,4,5,6,7,8…お、ミーコどこにいってたんだ?」
ミーコというのは人間の女性ではなくメスの猫のことだ、口に加えたねずみをおれにもってきてくれたらしい。
「あー、またネズミを狩ってくれたのかありがとな。
でも俺は食わないから自分で食ってくれ」
ミーコの頭を撫でると嬉しそうに”ナーオ”とないて、ネズミを食べはじめた。
うん、別にいちいち見せに来なくてもいいんだけどな……。
俺がネズミを狩ったミーコを褒めてやったらそれ以来見せに来るようになったのだが、ネズミだけじゃなく鳥だの虫だのでも見せに来るのは困ったもんだ。
とは言え猫は気まぐれだからいつもくるわけでもない。
ちなみに猫の家畜化が世界でも最も古く行われたのは、ここ古代エジプトで、紀元前4000~5000年頃にはすでに、ネズミやヘビなどの害獣駆除の為に、猫が家畜化され始めたらしい。
まあ其のためにはかなり長い期間人間は忍耐を強いられたようだ。
猫は気まぐれに噛んだり引っ掻いたりするからな、でもま、子猫は可愛い。
そして、エジプトは多くの宗教的部族を抱えた都市によって構成される連合都市国家で、多くの都市では、それぞれが精霊の化身、神としての崇拝対象をもっており、それは多くの場合動物だったんだな。
エジプトの猫の神様は有名なバステトだ。
一方、アジアでは人間のもっとも古い友達である犬は猫ほどはエジプトではメジャーじゃなかった。
アフリカには狼はいないのかアヌビスは犬もしくはジャッカルの頭と言われるが基本は農耕のエジプトでは狩猟用の犬はさほど必要とされていなかった、王族や貴族などは趣味の狩りの時に猟犬を使うけどな。
一方農耕に重要な家畜が牛だ。
力強く畦を耕す牛は勿論神として崇められ、雌牛ハトホル女神や牡牛アピス神などもメジャーな神様だ。
ロバや馬は車をつけたりして荷運びに使われたが牛ほどはメジャーな存在ではないようで、神としては崇められなかったようだ。
重いものはナイル川の船を使って運ぶほうが多かったしな。




