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奴隷としての生活:エジプト神話ホルスの復讐とミウの出産編

 さて今日は、家庭教師の日だ。


 俺はネフェルウラー王女のところへ行ってエジプトの神話を教えることにした。


「さて、ネフゥルウラー王女。

  オシリスが冥界に降る前に、オシリスとイシスは共に一夜を過ごし、イシスは懐妊し息子のホルスを身ごもりました」


 因みにこの死んだオシリスとイシスが交わって子供を産んだのが、後に処女懐胎として伝わったらしい。


 イシス信仰は、エジプトからギリシャに伝わりギリシャ、そして後のローマでも帝国全域でイシスは崇拝されたんだ。


 そしてイシスが子供ホルスに授乳する様子などは、のちのキリスト教にてイエスの母・マリアへの信仰の元になったとも言われているようだな。


「さて、オシリスが冥界に下った後のイシスは、ネフティス・ホルスとともに辺境で質素に暮らしていました。

 しかし、イシスによる復讐を警戒していたセトは彼女たちの居場所をつきとめると、自らの監視下で彼女たちを働かせるのです。

 ネフティスには畑での麦の栽培を行わせ、イシスは家の中で製糸・機織り・衣装作りを行わせました。

 これらが女性の仕事となったのはこの時の名残ですね」


 ネフェルウラーが感心したようにいった。


「なるほど、そうだったのですね」


 俺は頷いて続ける。


「さてそんな様子を見て心を痛めていた神様がいました。

 彼等の出産にも関わった知恵の神トートです。 

 太陽神ラーが産めば災いを呼ぶといい生むことを禁止し、自分が知恵を絞ってなんとか出産させた兄弟たちが殺し合い、憎しみあう様子は彼にとっても非常に残念なことでした。

 トートはイシスのもとへ行きイシス達のセトの監視下からの脱走を手伝い、イシスは逃げ出して人の来ない川の中州に家を作り、ホルスを育てました。

 しかし、セトはイシスが家を離れたすきに蠍の女神セルケトの目をかいくぐって、毒蛇にホルスを噛まさせ、その毒でホルスを昏睡状態にしてしまいました。

 其の毒はイシスやネフティス、癒やしの女神でもあるセルケトでも消すことができず、イシスは時を止めることでなんとかホルスの命をつなぎとめ、トートが毒消しの魔法でホルスを救います。

 イシスは、その後はコブラの女神ウアジェトとセルケトによって、ホルスを守らせることにしました」


「それで大丈夫になったのですか?」


「そして、ホルスの復讐には父であるオシリスも助力し、オシリスは夜の間ホルスがセトと戦えるように戦うすべを教え宮廷での儀礼も教えたのです。

 それによりホルスは無事成人することができたのです。

 ホルスは父母の敵を取ることを決意し、叔父に当たるセトへの復讐を決意して、イシスとともにヘリオポリスに乗り込みました。

 ホルスとセトは抗争を初め、オシリスの正当な後継者はどちらなのか、イシスを席から外させて川の中州で神々の間で裁判が行われました。

 神々は揉めに揉めた後、古き神々であるクヌム神やプタハ神に裁定を願いましたが、彼等は裁定を辞退してしまいました。

 困った神々は古き戦の女神ネイトに裁定を願い出て、彼女はホルスの王位を継がせるべきと裁定を下しました。

 しかしラーはセトの味方をしたため、ホルスは不利になりました。

 セトはラーの息子であるとも言われています。

 そこでイシスは老婆に化けて中洲への渡し守・アンティに金の指輪を与えて買収し、中洲へ乗り込んだのです。

 そして島に渡ると、イシスは若い美女に姿を変え、セトに近づきました。

 セトはそれがイシスだとも知らずに声をかけます。

 イシスはうそ泣きをしながら、セトに訴えました。

 自分は未亡人で、夫が死んだ後、夫の弟がやって来て、息子を殺そうとしうたうえ、財産と家畜を奪っていってしまったと。

 セトがそれに対し息子という正しい相続人がいるのに、その財産を奪おうとするものは、国から追放すべきだといってしまいました。

 魔術でセトの声を録音したイシスは島々のその声を流しました。

 墓穴をほったセトは、神々の支持を失い、怒ったセトはアンティの踵の皮を剥いでサンダルを履けなくしました。

 さらにセトは巨大な豚に姿を変えてホルスを襲いました。

 神々の面前で行われたこの行為にラーは怒り、豚は未来永劫、忌まわしい動物とされました。

 ラーは機嫌を損ねて地上から去り冥界に引きこもりました。

 そんなラーに妻であるハトホルが自分の秘所をラーに見せて喜ばせ、忍耐強く説得したことで、ラーは機嫌をなおし、彼を再び地上に戻したのです」


 それを聞いて彼女は苦笑した。


「ラーも困った方ですね」


 全くだ、因みにアマテラスの引きこもりの話の元はこれだと思うぜ。


「さて、セトはホルスにカバに変身して川に潜り、先に陸に上がった者が負けという勝負を持ちかけました。

 イシスは銅の銛を投じてホルスを援護しようとしましたが、間違って息子に投げつけてしまい、息子が痛みに苦しんだので苦しんだので魔術で銛を外し。次はちゃんとセトに命中させました。

 しかしセトが自分とお前は同じ母から生まれたのに殺すのかと彼女を言いくるめ、イシスは銛を魔術で外してしまいました。

 間違って銛を突き立てられた上にセトを見逃した母に怒ったホルスはイシスの首を刎ね落としてしまいました。

 しかし彼女は魔術で分身を作り出していたので助かりました。

 ラーはその行為に対しホルスに罰を下し、ホルスの両目を奪って山中に埋めました。

 しかしハトホルが彼の眼窩に雌アカシカの乳を与えて復元させたのです。

 その後、神々の助言によってホルスとセトは一時和解し、同居するのです。

しかし、セトがホルスに危害を加えたことにより助けに入ったイシスによってセトは両手を切り落とされます。

 しかし、これは後に復元しました。

 最後の戦いでセトはホルスに対して石の船を作って勝負することを持ちかけ、セトは言った通りに石の船を作るのですが、ホルスは杉の木をコンクリートで覆った船を作ったのです。

 そのためセトの船は沈み、ホルスの船は沈まずにすみました。

 しかしセトはカバに変身して水中からホルスを殺そうとしたのですが、ホルスはやりでセトを貫いてセトから睾丸と片足を奪ったのです。

 このように最終的にホルスが勝利し、父の仇討ちを果たすことに成功したのです。

 オシリスはトートとの相談し、地上の王権をホルスに譲位しました。

 ファラオはホルスの化身であると言われるのはこの話が元になるのです」


 因みに睾丸と片足というのはセトの息子と重臣を殺したということだとは思うけどな。


 ネフェルウラーが感心したようにいった。


「なるほど、そうだったのですね」


 俺は頷いて続ける。


「因みにオシリスはもともとエジプトに住んでいた人々、セトは東からやってきた人々を表しているらしいですよ」


「そうなのですか」


「そうらしいです、ヒクソスをエジプトから追い出したあなた方はホルスの化身ということですね」


 ネフェルウラーがパアット笑顔になった。


「なるほど、嬉しいです」


 まあ、そのわりにはホルスはアメンラーやオシリスほどは信仰されてないようにもおもうけどな。


「さて時間ですね、今日はこのくらいにしておきましょう」


「はい、先生ありがとうございました」


 俺はネフェルウラーの部屋を出て、給料を受け取って家に戻った。


「ただいま、ミウ」


「おかえりなさいお兄ちゃん」


 新婚旅行から戻ってきてミウのお腹は膨らんでいた。


 勿論食べすぎて太ったわけではなく子供を妊娠していたんだ。


 まあ、結婚したからやることはやってたんだ。


 ミウの両親からも子供はいつできるのかとプレッシャーかけられてたしな。


 俺はミウのお腹に耳を当ててみた。


「もうそろそろかな、元気に生まれてきてくれるといいな」


「うん、きっと大丈夫だよ」


 しかし、古代では出産時に母子ともに死んだりすることも多かったようだからちょっと心配だ。


 さて、エジプトでは人間はクヌム神によりナイルの粘土で作られるとされている。


 なので、同じ泥で作られた日干し煉瓦は人間と同じものとされ、出産時にはレンガを置いて、仰向けではなく、左右に人から腕を支えてもらい其の出産レンガの上にしゃがんで行われる。


 王族や貴族の場合は出産用の穴の空いた椅子を使うらしいが平民や奴隷にはそんなものはない。


  やがて時が流れ出産の時が来た


 メスケネト神殿でミウは子供を産もうと頑張っている。


 俺にできるのはギュッと手を握って励ますことだけだ。


「ウゥーーーー」


「頑張れ、ミウ」


「う、うん……」


 ミウは陣痛のたびにぎゅっと俺の両手を握り、苦痛に耐えている。


 やがてミウは痛みが強くなると


「ウーーーーーーー、フーーーーーー、ンーーーーーーー!!!」


 ミウがいきんで、血だらけでシワシワの子供が産み落とされた。


「おぎゃーー」


 赤ん坊は元気な産声をあげ、助産婦がナイフでへそのおを切り取って産湯につけた。


「やった!産まれた!ミウ大丈夫か?」


「あぁ、うん……大丈夫だよ、お兄ちゃん」


 ミウはニッコリ笑ってくれた。


 結果は母子ともに健康で異常なしとのこと。


 本当に無事でよかったぜ。


「この子の名前はアカーナでどうかな?」


 ミウはニコリと笑って


「はい、とてもいい名前だと思います」


 こうして俺達の娘はアカーナと名づけられた。

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