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プロローグ

「はあ、やっぱり俺にはあいつほどは才能がないのかな……」


 俺はサッカー部の部室でサッカーボールを手に取り、布でボール磨きをしながらつぶやいた。

オレは多田野始ただのはじめ高校一年生だ。


 小学校や中学校の時はサッカー部のエースとしてそれなりに活躍した俺は今年の春にスポーツ特待生として、Jリーグに在籍する選手を何人も輩出している、サッカーの強豪校の高校へ入学した。

そして今は冬の全国高等学校サッカー選手権大会を目前に控えた季節だ。


 ここは全寮制でサッカーに専念する環境としては最高だ、勿論文武両道を模範とする校風だからサッカーだけしてるわけにはいかないんだがな。


 しかし、オレの今の状態はAからEまであるランクの中のBクラス要するに試合には出られない補欠だ。

勿論、一年生のほとんどは皆最初はEからのスタートだ。

だが、一年生で既にAクラスに入っているやつもいる。

俺はそいつに負けないだけの努力はしているつもりだが、その差は何なのだろうと考える。


身体能力フィジカルの差なのかな……」


 俺はどうやったら試合に出られるようになるんだろうと深刻に悩んだ。

小学校や中学校のときは試合に出してもらえていたから、思い上がっていたのかもしれない。

でも一番下のグループから這い上がって上のグループに昇っていってるやつもいる、オレにできないはずはないと思いたい。


 ボール磨きが終わればグラウンドのトンボがけだ。

大変ではあるが足腰を鍛える役に立つと考えよう。


 それが終わればやっと部活動は終わりだ。

トンボやボールを体育用具室に片付けて鍵を締め、俺のマイボールをボールネットに入れて手に取ると俺は教室に戻った。


 そして教室で教科書や筆記用具、ノートなどをカバンに詰めて、寮に帰る途中のことだ。


「いっその事何処か遠くへ行ければな……」


 別に勉強が嫌いなわけじゃないが、サッカーと勉強の両立は正直きつい。

補欠は雑用が多いからなおさらだな。


『よろしい、その望み我がかなえよう』


「な、なんだ、なんなんだこれ?」


 その声が聞こえた途端、俺の足元に黒い渦のようなものが巻き起こり、オレはその渦に飲み込まれるようにしずんで行き、やがて気を失った。

・・・

「……い、……い……、おい、生きてるか?」


 誰かが俺に声をかけてきてるようだ。

俺が目を覚ますとその場にいたのは肌の黒い、いかつい男だった。

しかも何人かに取り囲まれている。

一体どう云う状況だ?


「おい、おまえさん、一体どこからきた?」


 どこからって、そもそもここはどこだ。

しかも、よくわからんが日本語じゃない気がするぞ。

なんでかわからないが俺には相手の言ってる意味は理解できるようなんだが。


『ええと、すまないがここは一体どこだ?』


 俺の言葉に男たちが顔を見合わせている。


「何を言っている、ここは女性ファラオであるマアトカラー様の

 おわす都市ワセトだ。

 奴隷にしてもどうも見かけない顔だが一体どこから来た?」


 マアトカラーって誰だっかな?。

俺は歴史の授業で習った人名を掘り起こしてみたが、その名前は出てこなかった。

ファラオと言ってるということは、多分ここはエジプトなんだろうけど。

女性ファラオというとクレオパトラかハトシェプストのどっちかかな。


「で、お前は一体どこから来た?」


 再びの質問に俺は頭を掻きながら答えた。


『確実なことは言えないが東の果ての島国からだと思う』


 そして多分未来から来たと言っても意味がわからんだろうし、

そっちについてはいわないことにしておこう。


「東だと? 貴様ヒッタイトかアッシリアの手のものか?」


 男が俺の言葉に態度をかえた。

周りの人間も棒を俺に突きつけてきている。


 俺は慌てて手を振った。


『違う違う、そこよりもずっと遠い遠い世界の果てだと思う

 俺がなぜここにいるのかは俺にもわからないんだが』


「何か前の身元を示すものはあるか?」


 その問いに俺は学生証を見せた。

そうしたら彼等はすごく驚いていたな。

よく考えるまでもないが、この時代には写真もプラスチックもないんだから。


『一応言っておくがそれは俺が作ったものじゃないから

 作り方なんてわからないぜ』


 クレジット機能付きの学生証などの他に俺が所持していたものは取り上げられた。

まあカバンとその中に入っていた筆記用具やノート、電卓や定規、絆創膏などのあとは小銭の入った財布くらいだが、彼等は小銭を見てびっくりしていたようだ。


『あ、それは俺のいた場所で使われてた通貨だけど、大した価値はないやつだぜ』


 俺の言葉に彼等は驚いていたようだ。

よく考えりゃ銅でもこの時代には貴重品か。


「とりあえずお前の処遇については、女王の裁可を仰ぐものとする

 それまではおとなしく牢に入っていてもらおう」


 まあ、結局オレはこの日から、おおよそ3500年前のエジプトで奴隷として暮らすことになるんだがな。

そして最初は生水で腹を下して死ぬほど苦しんだ。

牢屋にもトイレはあるが水を飲む→腹をくだす→上と下から全部出る→脱水症状になる→水を飲むの無限ループだ。

正直死ぬかと思ったが案外人間の体というのは環境に慣れるれるものらしく、翌日にはなんとか吐いたり下痢をしたりしなくなっていた。

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