黄の少女イベント
「とりあえず何から手を付ける?」
まずはそこからである。一葉は日頃からノープラン行動が多いが、さすがにこんな知らない世界で計画無しでの人助けは無理と判断した。バグ潰しか、仲間の救出か、情報の収集かしないといけなさそうなことは山ほどある。
「他のみんなとの合流が先かな。ばらばらになった位置から考えてそんな遠くにはいないと思うし。そのついでにここらへんのバグを倒しておくか」
アイリスは合流を選択した。一葉はこれに関して異議はない。むしろ自分もこれのつもりだった。なぜならバグを自分で倒すことができるかわからないし、仮に強大なバグが現れた時に対処ができないからである。
アイリスは特殊な能力なのか、仲間の位置がだいたいわかるらしく、「たぶんこっち」と一葉を連れていった。進む途中に人や動物はおろか動くものが景色以外になかった。どこまで歩いても景色は幻想的なフワフワした世界で変化がなかった。
アイリスは急に止まって「ここら辺にいる」と言って周りを探し始めた。一葉も探すが何もこの場所は初めの場所とほぼ同じで物の配置が違う程度、としか思えない。
岩の陰を覗き込んだ一葉はつい見逃しそうになった。岩陰にはなにやら金属の板のような物があった。いや板ではない、盾だ。さらに盾の陰には少女が寝ていた。これがアイリスの言っていた仲間だろうか。少女は顔に光が当たって目が覚めて一葉の顔をみるやいなや、無言の悲鳴とおびえた顔をした。
「カズハー、いたー? ……あっ!オルミス!」
少女はアイリスが探していた仲間で間違いないようだ。オルミスという少女はアイリスの顔を見て安堵の表情を浮かべた。しかしその顔は百パーセント安心ではなく、謎の少年が目の前にいる恐怖と疑問も含まれていた。
「オルミスー。またそうやって隠れてるー。見つけにくいよおー」
「ア、アイリスさん、その人は誰ですか……?」
「この人は……救世主ぅぅ~~!! だよ」
アイリスは何故か自分を救世主と言ったが、少女に事情と一葉について言い誤解を解いた。
「失礼しました、カズハさん。私はオルミスと申します。どうか存在を忘れても名前だけは覚えていてください。」
「オルミスは堅いなあ。まあ存在は薄いのは確かだけど」
オルミスはアイリスと比べて身長が低く、髪は黄色のボブカットである。服装はアイリス同様近未来的な服で、カラーリングは黄色だった。アイリスと同じく色は各部位の同じであった。手には体を隠せる位の大きな黄色の盾を持っていた。
「オルミスったらまた神器出しっぱなしで重くないの?」
「落ち着くんです、持っといた方が」
大きな盾が“神器”と聞いて納得した。ならば、アイリスはどうなのか見てみたいと思った。
「アイリスの神器はどんなんなの?」
「え、見たいの? いいけど」
そう言ってアイリスが手を横に突き出すと光が集まり、いかにもファンタジックに大きな神器が出てきた。アイリスの神器は身長を超える長さの槍である。アイリスの槍は水色の光を放っていた。
「あんまり神器好きじゃないんだよね。重いし、大きいし」
一葉は人探しをあと五人もしないといけないという途方もない思いと、仲間が増える安心感に見舞われた