仲間初ゲットイベント
一葉は情に負けて願いを承諾してしまった。アイリスと名乗る少女は神のくせに威厳が欠けている気がする。
ここは初めの移動から察するに電脳空間であると一葉は思った。「人間が創った」、「圧縮世界」がこう仮定することで納得もつく。しかしそうとなれば聞かなければならないことがある。
「なあ、アイリス。どうやったら元の場所に戻れるの?」
アイリスはこちらを見つめて、希望に満ちた顔で、
「うん! 無いよ!」
一葉は絶望の顔をし、アイリスを睨んだ。
「でも大丈夫だよ。あくまで『基本帰れない』だから、帰ることは可能だよ。ポータルさえ開けば帰れるから。あとついでに言うけど、カズハの世界は時間がすご~くゆっくりになっているから安心して」
「帰れはできるんだな。よかった~! それにここで活動しても現世界に影響はないか。って安心できるかっ!」
帰路については不安が残るが理解はできた。次にアイリスの言っていた危機について聞かねば話が進まない。
「それじゃ、『危機』って何なんだ?」
「ざっくり言うとバグが大量発生したの」
アイリスは苦笑いしながら、そう答えた。電脳世界ならバグはどうしても致命的なのだろう。
「この世界を守護している神は最新世代の神まで総動員したんだけど追い付かなくって……」
バグが多いのは、もはやこのシチュエーションではただのテンプレイベントである。
「私たちもバグ潰しに行ったんだけど、やっぱり私たち古いから対応できなくて…… 吹き飛ばされて、みんなバラバラになったの。私はその時たまたまポータルを見つけて、この状況に至っているの」
『古い』という単語に違和感がある。電脳世界で『世代』が『古い』のだからバージョンが対応しきれていない、という解釈でいいのだろう。
「アイリスたちはどんな世代の神なの?」
「私たちは初代ビスポリス神で通称『ヘプトガイア』。七人の神で構成された神軍だよ」
今が第何世代までいるのかわからないが、初代神なら旧バージョンなのは当たり前だろう。
バグ、ウイルス、破損データ、そんなものが電脳世界の敵なのだろう。一葉はこんな暇つぶしがあっても楽しいだろうと楽観的に考えアイリスに協力することを改めて決意した。