意義有り転生物語
「はい次の方どうぞ」
「失礼する」
「では異議申し立ての内容をお願いいたします」
この場所に来るのは体感時間も含めると3年と少し……本来の予定より早いというか早すぎた。
輪廻転生事務所、そう魂がこの場にやってきて次の受け入れ先希望や強制執行などを含めて管理している場所である。前世の行いがよければそれなりの待遇をもって接してもらえたり希望の転生先を選ばせて貰える。
因みに地獄というのも一つの世界であって罪のある魂だけでなく、実は就職先として斡旋される職場だったりする。
「実はですね前回の転生の際に平穏、安全な世界、田舎暮らしと希望を出したのですが……」
「なるほど、今回のケース突然の魔王で叶わなかったと」
「はあ、端的に云えば其の通りです」
「ですのが次回転生先としてかなりの優遇をもって提示されたこの案件を蹴りたいと仰るのは?」
「できればなんですがもう一度あの世界への転生を希望したいんですよ」
「また変わったご希望ですね、次の世界はこう言ってはなんですが天界の一部ですよ?」
「はい判った上です」
ああ、頭を抱えるのも判る。こんな内容を申請する馬鹿なんて今まで居なかっただろう。
「少々お待ち下さい」
受付の女性は一旦上司に相談する為に席をはずした。奥で書類を見た女性の上司も同じく頭を抱えているようだ。申し訳ない気持ちになるが叶えて頂きたい。
頭を抱えていた上司の方ももう一度ため息をついて更に上の方へと話にいったようだ。
魂暦もベテランどころか最長に近い私のこんな願いは今までに無かったのかもしれない。本来はそろそろ天界でゆっくりのんびりと過ごすのが当たり前で今回は前倒しの措置だったのだろう。罪を犯した魂は別として基本的に魂は自由な存在だから今回のような事件が起こるのだが、それもまた一つの理。
何がいいたいか……バグといわれた魔王でさえも悪質な行為にはしった魂であり世界の仕組みの一つとされる。時折力を溜め込んだ異世界を跨ぐ魂が存在する。これはどうしようも無いらしい。
思考の海に浸っていると目の前に一人の女性とも男性とも判らない人物が現れた。
「君が今回の意義申請者ですか……天界行きを望まず再度同じ世界か」
「できれば魔王を倒す担い手として送り込んでいただきたいのですが」
「うーん」
そんなに難しい事はお願いしていないと思うのだが・・・・・・同じ世界で生まれ変わるなんて別段珍しい事では無いし。
「魔王討伐って現地の人には難しいんだよね」
「はあ」
「(なにせ今回の魔王って通常のと違うしなあ・・・)ボソボソ」
「それでは別世界からの派遣というなの召喚ですか?」
「うーん……あ!」
ッピッピッピチーン! とでも効果音が鳴るかの如く閃いたようだ。平手に拳を打ち付けているなどこの方は日本に関係する方なのかもしれん。
「貴方にはやはり一度天界へ行って頂きますね」
「ですが」
「話は最後まで聞いて下さい、簡単に魔王に勝つなど不可能なのはお分かりになりますね?」
「それはまあ」
「ですので貴方には天界の武神達の下で修行をして頂きます。期間は問いません、まあ可也の時間拘束されますが時の流れの違う場所での修行ですから派遣される召喚まで十分な時間があります」
「では!?」
「ええ今回のバグ担当として貴方を採用致しましょう」
「ありがとう御座います」
ドン! と判子を押された書類が受理された事で挨拶を済ませた私は天界へと転生した。修行の為に天界でとなれば相当な訓練に……ってそこまで必要な魔王って変だろうと其のときの私が気づく事も無く、更に此れが百万年ぶりの出来事に繋がっているとは思いもしなかった。
――天界――
「おお! お生まれになられた」
「目出度い!」
「宴じゃ」
なんですかねこの騒ぎ?
よく分からないが物凄く祝われているのは間違いない。うーん修行の為に生まれたのだけど……まあ体も出来上がってない赤ん坊である。そうして祝いの席は体感時間で約1年続いた。
それから10年適度な運動と神通力(魔法)の勉強をしながら体を作っていった。
そこから20年、実戦を踏まえた神通力の修行と戦闘技術を叩き込まれた。
さらに1000年程かけて武者修行として天界の名だたる軍神や武神に師事を仰ぐ旅に出た。
綺麗な武神は好きですか? と言いたく為るほど意外に武闘派な女神様が多く天界では死なないのに死ぬかと思った。いやマジでなんつーかうん大きな声では言わないけど普通に武神やってる男神よりも……
ゴホン、まあそんなこんなで可愛がられた私だが□□□という名前を頂いた。まあちょっと発音を表す文字の無い名前なんで困るのだが普段の会話はできるってどうなんだろうか不思議だ。
まあお陰様で今では武神と言われる方々と対等に戦えるというハイスペックな状態。
あれ? ここまで強くなる必要あるんですか……どんなけ魔王スゲーノ。
そう思った貴方! 鋭い実に鋭い。
彼の魔王と云われる憎い敵なのだが実は長年に亘って地獄に潜伏していたという前世も魔王という札付きの魂が数万年に亘る活動によって現れたという超ハイスペック(天界調べ)の由緒正しい魔王だった。
大幅に力を削がれた筈の彼が如何にして魔王に返り咲いたのかは不明なのだが一部の天界のミスなども含まれているのだとかなんだとかとオネーサマ方から教えていただいた。
さて、そんなこんなで今から魔王退治にでかけます。
別に桃から生まれる訳でもないし普通に召喚魔術に介入して乗り込むだけなんだけどね。
色々と世の中にはルールを守らないといけない事も多々あるのだけど今回は特別。
オネーサマ方が暴れてるけど大丈夫かな男神様達、まあなんとかなるだろ神様だしな。
では行って見よう。
結論から言わせていただこう。
1000年の修行はやりすぎだったんじゃね?
一撃だったんですけど!? まあ魂の捕縛だったりなんだと諸々大変な処置は待ってたんだけどさ。
それと天界で1000年、変だと気づけよ俺!
俺、神様になってました。
転生初年度にものすっごいお祝いになったのは百万年ぶりの天界での神様誕生だったからとか、オネーサマ方から色んな意味で可愛がられたのもその為だったとか、軍神や武神も弟を鍛える為に張り切りまくって予定より10倍近い年月を費やして鍛えたとかお笑いですかそうですか。
うん、1000年以上生きていたのも天界だからじゃなかったのね。
そんなこんなで新しい神様やってます。




