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第8話

その日の夕方、拓朗のマンションに考古学部のメンバーが集まっていた。

四人はキッチンで夕食を作っていたが、全員、裸エプロンである。

作っていると言っても、それぞれが家から持って来た惣菜を温めているだけなのだが。

これは彼女達の母親や、家政婦さんが作ったものだ。


それにしても四人もの美少女がエプロン一枚でせまい部屋の中をうろうろされると、色々なものがちらちら見えてしまうし困ったものだ。

紀香達は最近、本当に可愛くなったし、自分にはもったいないくらいの良い女達だと思う。

だけど俺だって普通に健全な男なんだから色々と困ってしまう。

せめて下着は着けて欲しいものだと拓朗は思った。

この間までは、この部屋には女っ気はまったく無かったのに、今では毎日のようにやってくる華やかな美少女たちのおかげで賑やかで刺激的な日々を過ごすようになった。

拓朗はそれが少しも嫌ではない、それどころかこういった毎日が楽しくて仕方が無いと思っている。



「お母さんが、先生に食べて貰いなさいって」


「ママがねー、先生にお礼したいんだって、今度家に夕食を食べに来て下さいって言ってたよ」


今回の実力テストの結果が配られ、それを持ち帰った彼女らはすぐに母親に見せた。

松涛学園は都内でも有数の進学校だ。

その学校で学年で20位以内に入るとは、母親達も成績表を見て目を疑った位だったらしい。

なにせ一年生の三学期の期末テストでは100位にも入っていなかったのだ。

それが拓朗の勉強会のおかげと聞いて、大喜びで娘に土産を持たせて送りだしてきた。


「それでね、もう塾はいいから、これからも先生に勉強を教えて貰いなさいって」


「うちも、なんとか先生に勉強会を続けて貰えないかって言ってたよ。

これで、私も毎日先生の部屋に来れる理由ができたよ。もう最高」


「いや、あのな、成績が良かったのはお前たちが頑張ったからだ。

それと毎日ここに来るのは構わないんだが、今のその格好は…というか、毎日、過激な事は…な、まずいと思うんだ」


「何言ってるの先生、今だってちゃんとエプロン着けてるでしょう。先生だって喜んでいるのが丸分かりだよ。」


紀香は笑いながら、ほら特に下半身がとか言っている。


「これって男の夢なんでしょ、違うの、メイドコスのほうが良かった?なら、今度、秋葉で買ってくるけど」


「まあ、そりゃ今の格好の方が嬉しいけどな。メイドかぁ、それもいいな」

拓朗も自分の気持ちに素直になってきたものである。


「じゃあ、明日の午後にでも皆で秋葉にメイド服を買いに行こうよ。

明日はみんなノーパンメイドだよ。先生よかったね」

純は心からうれしそうに言う。


「いや、普通に可愛いメイド服を着てくれればいいんだ…

だから毎日、そんな過激な格好をされると、俺の身が持たないんだってば」

拓朗は困ったように言うが、すぐに純に撃沈されてしまう。


「何言ってるの、先生だって嬉しいくせに…はい、リポD買ってきておいたよ」


「今日はお母さんが先生にお礼をしなさいって言うから、これからいっぱいお礼をしようかなって思ってるんだ。先生期待して」

奈々美がエプロンの裾をひらひらさせながら笑顔で話す。


奈々美達の母親も娘がこんな形でお礼をしているとは夢にも思っていないだろう。

それに今日が特別と言う訳ではない。

これがお礼というなら拓朗は毎日のようにお礼をされていた事になる。

四人はお互いが競り合うようにどんどん過激になってきていた。


「ところでな、じつはみんなに話しというか相談があるんだ。今日の職員会議での話しなんだが」


拓朗は会議で決まった事を彼女らに話した。


「えー、じゃあ、やっぱり里奈は先生の事諦めてなかったんだ」


「ひっどーい、学校に訴えるなんて。先生っ、絶対断ってっ」


「だけどな、学校からの依頼は職員の業務になるって言われちゃってさ。断れそうも無いんだ」


「先生が適当に手を抜いて試合で負けちゃえばいいんじゃない」


「それがさ、阿久先生っているだろ。その、阿久先生がさ、男子バスケ部が勝ったら女子のバスケ部の顧問も兼任したいって言い出してさ。山口先生に副顧問になれって」


「………うわぁ、最悪」


「それで山口先生は頭に血が上っちゃって、『じゃあ、私達が勝ったら二度と私の前に顔を出さないでくださいっ』って」


「……ちょっと、気持ちもわかるかも」


「うん、俺も阿久先生の態度にちょっとむかついちゃってさ。試合を受けたんだ」


「それで、どうなったの」


「うん、明日とあさって、女子バスケ部と練習することになった。それでな、お前達にもメンバーに入って貰いたいんだ」


「じゃあ、私達も練習に参加するの」


「ああ、な、俺といっしょに戦おう。お前達もこの間までバスケ部だったんだし」


それまで黙って聞いていた奈々美がいきなり話題を変えてきた。


「先生、じゃあ、考古学部の次の顧問候補に中沢先生がいるんですね」


「えっ、ああ、そうだ、ほかには寺尾先生と青木先生だったかな」


「ちょっと、奈々美、今はそんな問題じゃないでしょ」


「ううん、ちょっと。あっ、先生、4人で相談させて。それで先生はお風呂に入ってて。

私達は11時には家に帰らなければいけないから時間が無くなちゃう」


まだ7時にもなっていないが、拓朗も真近で彼女達の姿を見続けていたので下半身の収まりが付かない。


「あ、ああ、じゃあ、先に風呂に入ってくる」

と言って浴室に行った。


「奈々美、相談って何よ。私は今すぐ先生といっしょにお風呂に入りたいんだけど」

リサが焦ったように言うが奈々美は真剣な顔だ。


「ねえ、これはチャンスよ」


「はぁ、ピンチでしょうが」


「いや、あのさ、考古学部の顧問が替わるってなったら、いま考古学部に入部しようとしている人達はどうすると思う。たぶん入部しないと思うんだけど」


「そりゃ、そうよ。私だって辞めようとおもうわよ」


「ね、そうでしょ。だからさ、それを利用するのよ」


「どういうこと」


「つまり、一度先生には教頭の命令だって事で女子バスケ部の顧問になってもらうの、そうすれば入部希望者はいなくなるでしょ。ね、それで入部試験も無くなる」


「……それで」


「中沢先生のお父さんがこの松涛学園の理事長をしてるのよ。私のお母さんも理事だし」


「?……だから?」


「うん、それで、中沢先生に考古学部の副顧問になってもらう条件で、簡単に顧問を替えない様に理事長に訴えて貰おうよ。もちろん私達も嘆願書を書いて訴える。私もお母さんにも頼んでみるし」


「ああ、なるほど、中沢先生はうちの先生に惚れてるみたいだしね」


「そして理事会で先生には考古学部に戻るように決めてもらう。これでどう」


「いいね、入部希望を取り消した人は二度と受け付けないで済むし、うん、それっていいかも」


「だけどさ、中沢先生っていう泥棒猫になりそうな人が入るじゃない」


「それでも、何十人も部員が増えるよりはずっといいわよ。たった一人だけを注意すればいいんだから」


「じゃあ、先生にはあの阿久に勝って貰わなきゃね」


「そうね、まあ、負けても先生は考古学部の顧問でいられるんだから」


「そういうこと、じゃあ、私は先生とお風呂に入ってくるわね」


そう言うと奈々美はエプロンを脱いで浴室に向かう。

結局四人共、拓朗のいる浴室に向かって行った。



土曜日は松涛学園では半日授業である。

拓朗と男子バスケ部の試合の話は一気に学園中に広まっていった。

最近では女子たちの話題の中心は拓朗である。


授業が終わって放課後になったとき紀香たちのクラスでは紀香達はクラスメートに囲まれていた。


「ねえねえ、月曜日の試合で對馬先生が負けたら、考古学部の人達の中から何人かは男子バスケ部のマネージャーにされるって本当なの」


「さあ、そんな話が出てるの。私は聞いて無いけど」


奈々美たちは惚けているが、実はこの噂を流したのは奈々美たちである。

と、言うのは朝、純の下駄箱に手紙が入っていたのだが、その手紙には

『對馬先生との試合に勝ったら、純たちに男子バスケ部のマネージャーになってくれないか』

と書いてあったのだ。

最近、見違えるくらい可愛く、女らしくなった純たちは男子から人気が高騰していた。

差出人の名は『男子バスケ部』としか書いてなかった。

その手紙を純はさりげなく机の上に置きっぱにして音楽室に授業を受けに行ってしまった。

選択授業で教室に残った男子生徒達はその手紙を読んで噂を流したのだ。


だが考古学部に入部を希望している女子には衝撃だった。


――對馬先生が勝ったら先生はバスケ部の顧問になり、負けたら私達があの阿久先生が顧問を努めるバスケ部のマネージャーにされるかもって…冗談じゃないわ。


生徒会室には考古学部に入部希望を取り消そうと女子生徒が殺到していた。

入部希望を出した生徒の半数がこの時点で入部希望を取り下げていた。


松涛学園第二体育館は今から5年前、インターハイ東京大会の年にインターハイの会場として国や都の援助を得て建設された。バスケットボールコートの他にバレーボール、バトミントンなどのコートもある。

それぞれのスポーツの大会の時は中央にコートが設置できるようになっていて、二階には200人くらい収容できる観客席もあり、選手控え室も4部屋ある。当然シャワー室や洗面室トイレなども広く充実している。

普段は、女子バスケ部、女子バレー部、女子バトミントン部、女子新体操部が使用していて、基本的にコーチや監督以外の男性は立ち入り禁止になっている。男子は第一体育館を使用している。


女子バスケ部の部員達は緊張していた。あの伝説と言われた對馬拓朗のプレーが今日から見られるのだ。

1時を少し過ぎたころ、拓朗と考古学部の四人は亜理紗に連れられてやってきた。

拓朗は白いT-シャツにグレーのジャージを履いている。

紀香達も同様の装いだが、なんとなくおしゃれな雰囲気だ。

5人ともバスケットシューズを履いている。


亜理紗が集合と言うと全員がきちんと整列する。

20名くらいいる部員の前で話し始める。


「もう、みんな知ってると思うけど、月曜日の放課後、男子バスケ部と對馬先生が試合をします。

その時、對馬先生と一緒に戦うメンバーを今日と明日の練習で對馬先生に決めてもらいます。

みんな、いいわね。気合を入れなさい。もちろん私もメンバーに入れてもらえるよう頑張るつもりよ」


「えっ、亜理紗先生もですか」

部員の中から声が掛かる。


「もちろんよ、あたりまえでしょ。あのねぇ、負けたら…わかってるでしょ」

そして拓朗が前に出た。


「みんな、俺は5年のブランクがある。みんなについて行けるか分からんが全力でやるつもりです。

よろしく頼む。それからここにいる四人はこの間までこのバスケ部のメンバーだったから知ってると思うが、いっしょに練習させて欲しい」


そう、拓朗が挨拶するとバスケ部全員から拍手が起こった。

「じゃあ、早速始めるわよ。まずはいつも通り柔軟体操から…じゃあ、はじめっ」


バスケ部員も亜理紗の紀香たちも拓朗の柔軟を見るのは初めてだった。

そして、全員が拓朗に見蕩れてしまう。


アリサは拓朗のその猫科の猛獣を思わせる柔軟体操を見て思った。


――なんて、柔らかい身体、それに全身がバネのよう。ああ、それになんて美しいの


柔軟体操が終わりフットワークの練習に入る。


「じゃあ、言うとおりに動いてね。はい、ダッシュ・ストップ・・・ターン・ダッシュ・ジャンプ・・」


フットワークの練習が始まって亜理紗は、こんどこそ本当に驚いた。

拓朗が普通に動けたからではない。むしろ拓朗は余裕たっぷりと言った感じだ。

亜理紗が驚いたのは奈々美たちのことだった。


――彼女達が付いて来れるなんて、この間までこの速さではまったく付いて来れなかったのに。

うちのレギュラー並みに動いている。それにあまり息が切れてない。

こんなことがあるのかしら。

それとも隠れて練習を続けていたのかな。

もしかして對馬先生に指導されてたとか?


奈々美のリサも純も紀香も一様に思っていた。


――ええっ、体が軽い。なんでこんなに速く動けるんだろう。っていうかもっと早くてもいいくらいだ。

それにこんなに楽にやれるなんて息も切れないし…なんでだろ


部員達の額に汗が滲んできて息も荒くなってきたので、亜理紗は休憩を取った。

だが、拓朗は少しも息が乱れていない。


「對馬先生、パス練習に入る前に部員を休憩させます。その間、先生はボールに触るのも久しぶりとのことですので、ボールになじんでください」


と亜理紗は拓朗にボールを渡した。


「ありがとう、それとそのパイプ椅子を貸してください」


拓朗はパイプ椅子には座らず、1メートルくらい離れた所にボールを持って立った。


――高校時代によくこれで練習したよな。まずイメージを思い浮かべて出来るかどうかやってみよう。


拓朗はイメージトレーニングに入った。

高校時代何百回となく練習してきたバスケのテクニックを頭に浮かべている。

ドリブルで相手を抜くテクニックをイメージしていく拓朗。


その拓朗の姿を見て部員や紀香達は思っていた。


――先生、雰囲気あるなあ。なにかオーラが立ち上ってるよう


そしていきなり拓朗がドリブルを始めた。

腰を落とし、初めはゆっくりだったが、やがて高速ドリブルにはいった。

パイプ椅子を人に見立ててすばやくドライブからレッグスルーで右に左に抜き去る。

さらに様々なテクニックを見せる拓朗。


「「「「「速いっ!」」」」


亜理紗やバスケ部員から驚愕の声がでる。


「すごいっ、ここで見ててもすごく速い。あれじゃディフェンスは簡単に抜かれちゃう」

「緩急の差が絶妙な感じ、すごくディフェンスが難しい。簡単に切り崩されそう」


亜理紗は拓朗が5年のブランクがあるようにはまったく見えなかった。

現役の選手でもあれだけ速い選手は中々いないだろう。

しかもビハインド・ザ・バック、レッグスルー、バックチェンジ、スピンムーブなどに一般的なテクニックが余りにも速くそしてスムーズな為、ジャブステップやショルダーフェイクが目立たないがかなり有効である事がわかる。


亜理紗は拓朗のシュートが早く見たくてたまらなくなった。


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