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第3話


拓朗が三人を送り届けマンションに帰ってくるとリビングにエプロンを付けた紀香がいた。

拓朗は紀香がなにか雰囲気が違うと感じた。

紀香はにこにこと微笑みながら拓朗に駆け寄ってくると、とんでもない事を言い出した。


「お帰りなさい。先生、お風呂を用意してあります。

どうします、お風呂にしますか、それともわ・た・し?」


可愛らしく首をかしげながら、紀香はにっこりと微笑み、くるっと背中を向けた。

ブルーのエプロンの紐は、何一つ隠すもののない真っ白な紀香の素肌の上で結ばれていた。


「先生、ここは後ろから私を思いっきり抱きしめるシーンだと思うんですけど」


恥ずかしそうに俯きながら顔だけ拓朗の方に向け上目使いで見詰める紀香の姿に拓朗の心臓は跳ね上がる。


「なっ、なっ、なにを、お、おい、藤井・・冗談は・・すぐに服を着ろ。俺は外で待ってるから」

拓朗は紀香の身体にドキドキしながらも全力で理性を発揮し背を向け玄関に向かった。


玄関を出てマンションの廊下で拓朗は考えた。

彼女達が自分に好意を持っている事は、いくら朴念仁の拓朗でも分かっていた。

彼女らの過激なスキンシップやわざと下着を見せ付けるような仕草で、いやでも分かってしまう。


ドキドキとうるさい心音を抑えるように深呼吸を繰り返す拓朗。


だが、自分の容姿はお世辞にも良いとは言えないだろう。

学生時代は牛乳瓶の底というあだ名を付けられたように、分厚い眼鏡を掛けているし髪もぼさぼさだ。

お世辞も言えない性格も社交的とは言えない。

女性と付き合った経験の無い拓朗はなんで彼女らが自分に好意を持つのかよく分からない。


それも相手は自分のクラスの教え子だ。

とてもじゃないが相手をする事なんてできない。

出来る訳がない。



「先生っ!」


急に玄関のドアが開き、エプロンを脱いだ紀香が飛び出してきた。

マンションの廊下の天井の灯りで真っ白な紀香の体が輝くように映える。


「う、うああぁ、ばっ、馬鹿っ!」


拓朗はあわてて紀香の肩を抱き寄せ、一緒に玄関に入りドアを閉める。


「藤井っ、何考えてんだ。誰かに見られたらどうするつもりだっ」


「別に構いません」


「なにっ!」


「私は平気です」


「お前は・・なんのつもりだ・・」


それには答えず紀香はリビングに戻ってしまう。

このまま外の廊下にいたら、また紀香が廊下に出てくるかもしれない。

しかたなく拓朗も紀香を追ってリビングに入った。

一糸纏わぬ紀香の姿に心は躍るが、紀香を前にすると目のやり場に困る拓朗。


「先生、先生も分かっているはずです。私は先生が好きです」


「……」


「だから私の初めてを貰ってください」


真剣な顔で見詰めてくる紀香を前にして、拓朗はこの場をどうやって凌げばいいのか分からない。

拓朗も紀香も心臓がおかしくなったのではないかと思うほどドキドキしている。

二人とも顔が真っ赤だ。

そして拓朗は紀香から目を離す事が出来ずにいた。

それでもなんとか言葉を紡ぎだした。


「藤井・・すまないが、俺は・・お前の気持ちに・・」


拓朗が拒否する気配を察した紀香は、リビングからベランダに出るガラス窓の前に立った。


「先生は私のお願いを断れないよ」


「?・・・何故だ」


「先生、今、私がベランダに出て大声を出したらどうなるかな。

ねえ、このまま周りの部屋の人や下の道路を歩いている人にに助けを求めたらどうなると思う。

誰か助けてー…って」


「なにっ!」


「先生は社会的に即死だね。そ・く・しっ!」


紀香はにっこりと笑顔で拓朗に言い放った。

その言葉を受け拓朗は絶句したが紀香が言う意味も理解した。


――― これは罠だ。どうする。どうしたら…ああ、俺はもうだめかもしれない。フーコ、トーコ


「……即死…」

呆然した顔でつぶやく拓朗。


「即死とは、人が即時に 死亡することである…という意味だよ。先生」

わざわざ説明するように話す紀香。


「わかってるよっ!」

思わず声が大きくなってしまう拓朗。


「だから、私のお願いを叶えて、先生」


拓朗よりずっと背の低い紀香は体を隠そうともせず両手を胸の前で合わせ上目使いでじっと拓朗を見詰める。

その切なそうな紀香の仕草に拓朗の理性が崩れはじめる。


――ー抱きしめたい


それでも紀香の服を見つけよう周りを見渡す拓朗。


「私の服なら先生の寝室に脱ぎ捨ててあるんだよ。誰が見ても無理やりって分かるようにね。

だから先生、もう無理だってば」


そして紀香はいきなり拓朗の胸に飛び込んできた。

真っ白で柔らかすぎる感触が拓朗の理性と判断力を奪っていく。


「もう先生には私のお願いを叶えるしか道はないの」


いっきに勝負に出て、そして覚悟を決めた紀香を前にして、拓朗は紀香の真剣な表情を見た。

これは冗談ではなく本気だと分かってしまった。


「脅迫だぁ」


紀香に敗北した拓朗は条件闘争に入ろうとしたが、紀香は無条件降伏を要求してきた。

ただし、絶対に拓朗の立場が危うくなるような事はしないし、秘密は守ると言う。

さらに紀香は拓朗の逃げ道を塞ぐための策を繰り出してくる。


「うふふ、じゃあ、せんせっ、私といっしょにお風呂に入ろ」


半ば諦めかけ、しかも誘惑に耐え切れなくなった拓朗は了承してしまう。

教え子と一緒に風呂に入っただけでも完全にアウトである。


―――やったぁ、みんなやったよー、もう先生は私達のものだよ


紀香は完全に計画が成功したことを喜んでいた。

この計画は4人で相談して作った計画である。

四人共最初がいいと主張したが、家が近い紀香が作戦上一番都合が良かったのだ。


こうして拓朗は教え子である藤井紀香と関係を持ってしまった。

拓朗自身も紀香に対し憎からぬ思いを抱いていた事も事実である。

半月以上にわたり女子高生達の挑発攻撃に晒されてきた拓朗の理性が切れてしまったのである。


拓朗は抜き差しなら無い状況に追い込まれた。

紀香と関係をどうしたらいいのか、経験の無い拓朗には判らなかった。

紀香は幸せそうだった。


だがそれだけでは済まなかった。

次の日の勉強会で拓朗は更なる決断を迫られる。

生まれたままの姿で立つ四人を前にして、拓朗には拒否できるはずも無かった。


「先生、紀香だけじゃなくて私達も・・・ねっ、先生は断らないよね。断れるはず無いし」

小悪魔を思わせる笑顔で山咲奈々美が言う。


「絶対に内緒にするって約束するし誰にもバレないようにするから。

でも私達が学園を卒業したら一人だけを選んで欲しい」

と、篠崎ミサ


「選ばれなかったら悲しいけど、先生を恨んだりしないから。いや恨むかも」

と、相沢 純


「それまでは平等に可愛がってね。先生」


そして、どうしようもなく篠崎ミサ、山咲奈々美、相沢 純とも関係を持つ事になってしまった。

もちろん四人共 拓朗が初めての相手であった。

そして彼女たちは心から喜んでいた。


「先生は人生勝ち組だね。美少女の女子高生を四人も愛人にしたんだからさ」

しれっと山咲奈々美が言うが、拓朗は浮かぬ顔だった。


―――ああ、フーコとトーコの言ってた通りだった。女の子は野獣だ


確かに16~7歳の女子高生を四人も相手にするのは男として幸せかもしれない。

四人共十分に可愛い女の子だ。

それぞれ個性的でおそらく男なら誰でも惹かれるくらいの容姿を持っている。

だが世間にバレたら、それこそ拓朗は社会的に抹殺されてしまう。

いやそれだけでは済まない筈だ。


(これは困った事になったぞ)

と拓朗は思っていた。

思ってはいたが、毎日交代で迫ってくる彼女達の誘惑に拓朗も耐えることはできなかった。

彼女達のあまりにも美しい身体を前にして拓朗は自分を制御する事が出来ずにいた。


紀香達は拓朗の全てに夢中になっていた。

もう何の遠慮もしてこなくなった。

そしてどんどん大胆になっていき自分の欲望に忠実だった。


その彼女達と気兼ねなく付き合っていくうちに、彼女達の気持ちに答える様になった拓朗も彼女達を愛するようになっていく。


そして彼女達は何度も拓朗と濃密な時間を過ごし経験を積んでいくうちに、女の歓びを知るようになりどんどん美しくなっていく。


拓朗も4人もの美少女とそういった経験を積む事で、自信ができたのか男としての魅力が増えていった。


紀香達四人は夏休み中に拓朗を美容室に連れて行き髪を整え、そしてコンタクトレンズを拓朗にプレゼントした。


―――ああ、フーコとトーコになんて言おう。髪の毛は他人に切らせちゃ駄目って言われてたのに


拓朗は映画『海猿』の伊藤○明に容姿も雰囲気も良く似た超イケメンに変身した。


四人は大喜びだった。

誇らしい気持ちでいっぱいだった。

自分の恋人は今まで会ったこともないくらいの素敵な男性だ。

今の先生は清潔感があり上品で知的で、そしてセクシーなイケメンだ。

性格も優しくて思いやりに溢れ、一緒に居て少しも肩が凝らない人だ。

だけどベッドの上ではすごく逞しくて夢中にさせてくれる。

これ以上無いくらい理想的な恋人なのだ。

こんなに素敵な人は二度と私の前には現れないかもしれない。


全員でホテルのプールや銀座に買い物に行った時など、拓朗は多くの女性たちに注目されていた。

もちろん彼女達も多くの男に注目されていたが。

なんと自分達の母親が変身した拓朗に対し今までと態度を一変させていた。


「まあ、對馬先生なのですか…見違えました。お髪切られたのですね。眼鏡は?」


「コンタクトに替えたんですよ」


「まあまあ、散らかってますけどお上がりになってくださいな。どうぞどうぞ、なにか冷たいものでも・・」


今までと180度違う態度を取る自分達の母親を見て警戒心が生まれた。


「ねえ、このまま夏休み明けに学校に行ったら、先生は注目の的だと思うんだけど」


「うん・・・どうしよう」


四人とも自分たちが拓朗と特別な関係であることを知られる訳には行かないと思っている。。

だが他の女に拓朗を譲るつもりは毛頭無い。


「ねえ、先生には学校では眼鏡だけはして貰おうよ。ヘアスタイルはしょうがないし」


だが拓朗はコンタクトレンズを気に入っていた。

視野が広くなるし重い眼鏡よりずっと楽だったからだ。




夏休みも終わり、私立松涛学園高校の生徒達も先生方も憂鬱な顔を揃えた始業式の日を迎えた。

松涛学園高校は私立だった為、公立校と違い、先生方も生徒よりは若干少ないが夏休みは長い。

拓朗もイメージチェンジ後の初登校であった。

始業式の日、拓朗は注目の的であった。


始業式が始まる前、登校時から拓朗は生徒達から注目されていた。


「はあぁ、かっこいい」


「ねえ、誰?新任の先生かな。かっこいいね」


「うん、うちの對馬先生と替わってくれないかな」


「藍、ひっどーい。でもそうなったら・・・いいなあ」


その二人の女生徒は拓朗の担任する女生徒で進藤麻奈美と矢島藍だった。

二人の会話は直ぐ前を歩いている拓朗に聞こえていた。

拓朗は振り返ると二人に言った。


「おい、進藤それに矢島か。おはよう。それで俺と替わって欲しい先生って誰だ」


「えっ、えっ、あの、えーっ、ひょっとして對馬先生・・のわけないですよね」


拓朗はやれやれと言った顔で

「あのなあ、わけないですよねって・・お前らクラス替えして欲しいなら言え、学年主任に頼んでやる」


「えっ、えっ、えーっ、ほんとに對馬先生なんですか」


「床屋に行ったんだよ。いままでは自分で切ってたんだけどな。藤井達に無理やり連れて行かれたんだ」


「えーっ、それだけですか。あのトレードマークの眼鏡はどうしたんですか」


「ああ、コンタクトに変えたんだ。こっちの方が楽だし視野も広くなるからな」


「先生っ、すごいです。すごくかっこいい」


「そうか、ああ、お世辞でも嬉しいよ。なあ、お前たちは俺の可愛い教え子だ。

クラスを替わりたいなんて言うな」


「…はい…先生。あの…もちろんです。絶対にそんな事いいません」


熱っぽい目で見てくる二人の女生徒を尻目に、教職員室に入るとそこでも騒ぎだった。

拓朗が自分の席に座ると、すぐ正面の席にいる女性教師が困惑した顔で話してきた。


「あの、そこは對馬先生の席なのですが・・あなたは?」


「やだなあ、青木先生、私ですよ、髪型を変えたんですよ。ああ、それと眼鏡をコンタクトに替えました」


「えっ・・・じゃあ、對馬先生なんですか」


「はい・・そうですけど。なんでですか?」



「「「「「えーっ!」」」」」



拓朗の周りにいた先生方から一斉に驚きの声が上がる。

拓朗はびっくりして立ち上がって周りを見た。

ほとんどの教師が拓朗を見ている。


「えーっと、先生方、ただ床屋に行って髪を切っただけですよ。あとあの眼鏡は重いからコンタクトに替えました。そんなに驚くほどですか」


前に座る女性教師が顔を少し赤らめながら言った。

「ほんとに對馬先生なんですか・・まるで別人ですよ。確かに雰囲気は對馬先生のような気が・・」


そのあと教頭に呼ばれ對馬拓朗本人であると確認後、教職員室で教頭から全員に伝えられた。

「えー、間違いなく對馬先生です。ずいぶんイメージが変わりましたけど」


しかたなく拓朗は持って来た眼鏡をかけたところ全員が納得した。

「なるほど、確かに對馬先生のようですね」


だが今はコンタクトレンズを使っているので眼鏡ははずして始業式に出席した。


校長と教頭の訓話も終了し生活指導の体育教師が始業式の終了を宣言して終わる予定だったのだが。


「では、これで始業式を終了します。皆さんは各自教室に戻り、夏休みの課題を担任の先生に提出してください。それで今日は終わりになります。…ああ、それと…」


生活指導の教師がにこにこして拓朗を手招きして呼ぶ。

拓朗はなんで呼ばれたのか分からず周りの教師達をみるが、皆ニコニコして拓朗を見ている。

教頭を見ると、やはりニヤニヤして拓朗に促すように手を振っている。

しかたなく拓朗は生活指導の教師の隣に立った。


生徒たちがざわめく

「皆さん、静かに・・皆さんが式の間、気にしていたこの方は新任の先生ではありません。

皆さんもよく知っている對馬先生です」


「「「「えーっ」」」」


「「「「まさか」」」」


生徒達のどよめきが体育館に響き渡る。


「皆さん静かにしてください・・・すいません、對馬先生、眼鏡をかけてください」


なるほどと思いながら拓朗はポケットから眼鏡を取り出し生徒達を見た。

生徒達が静かになる。

そしておもむろに拓朗は眼鏡を掛けた。

次の瞬間、体育館が驚愕の声で包まれた。


「「「「あーっ!」」」」


それでもまだ信じられないといった声が多く上がっていた。


「皆さん、静かにっ、驚いたのも無理はありませんが、對馬先生は髪型を変えられ、眼鏡をコンタクトに替えられたそうです」


次第に静かになり生活指導の教師がドヤ顔で話し出す。


「皆さん、分かりましたね。對馬先生は髪を整えられ、眼鏡を外されただけですが、ずいぶんイメージが変わられ、男前になられました。皆さんもこれを機会に松涛学園の生徒として相応しく、常にきちんとした髪型に整え服装も正して学園生活を送ってください」


どうやら生活指導の教師はこの一言が言いたかったようだ。

それを聞き拓朗は苦虫を口いっぱいに噛み潰した顔で眼鏡をはずした。

教師達は皆笑っていたが、男性体育教師の中には爆笑している者もいたし、女性体育教師達は顔を赤くして拓朗をみている。


「ああ、それから明日から二日間は実力テストです。皆さんの夏休みの努力の結果を見るテストです。

十分に体調を整え頑張って下さい。では始業式を終了します」


松涛学園では一学期の期末テストは行われない。

その代わり夏休み明けにテストがあるのだ。

生徒達が夏休みにどれだけ実力を身につけたかを測るテストである。

都内でも有数の進学校である松涛学園は生徒の自主性を重んじる校風である。

夏休みに遊んでいるような生徒は落ちこぼれてしまうのだ。



ところで生徒達の一部で真剣な顔で拓朗を見ていた女生徒が数人いた。

女子バスケ部の部員達である。


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