第28話
今回で最終話の予定だったんですが、書きたいことがあって長くなってしまいました。それで次回が最終話エピローグになります。
王者・王華高校との試合の前、里奈はコートでレイアップシュートを次々と決めていくメンバー達を見ていた。
―――ついにここまで来たんだ。
1年前は想像すら出来なかった夢のまた夢の舞台、ウィンターカップの決勝戦。
あの頃は、ろくに練習も見ず威張り散らすだけの顧問と、つまらない毎日に嫌気が差していてバスケを辞めようかなんて考えていたっけ。本当に何もかも変わった。
今は充実した毎日、部活も学校もなにもかも楽しいし、なにより先生がいるだけで私は満たされる。
今日の相手は王者・王華高校、対戦できるだけでも名誉なこと。
だけど少しも負ける気がしない。
これだけ頼もしい仲間と100%信頼できる對馬先生がいるんだ。負けるはずは無い。
王華高校のキャプテン日下部 伊織も松涛学園の練習を見ていた。
―――あの子の3ポイントシュートは注意が必要ね。すごく綺麗なフォーム
監督は今日の相手には勝てないだろうって言ってたけど、勝ちたいなあ。
私は1年生の時から試合に出させてもらって、公式戦では1度も負けないで来たけど、とうとう最後の試合で負けるのかな。
やっぱり世の中、何もかも思い通りうまくいく筈ないよ。
でもまあ、最後の試合の相手はあの拓郎様だし、それだけが救いかな。
国営放送で放送が始まった。
「解説の仙道さん、ついに決勝戦となりましたが、この試合の見所を教えてください」
「はい、高い身体能力を持つ選手が多い松涛学園に対して王華高校の井植監督がどういう作戦で当たって来るかですね」
「初出場の松涛学園はこれまで圧倒的な強さで勝ち進んできました。それは井植監督も警戒しているのでしょうか」
「と、言うより、松涛学園の佐々木キャプテンをはじめ藤井選手、山咲選手、篠崎選手、相沢選手など女子の高校生とは思えないほど圧倒的な身体能力を持っています。王華高校としては普通に戦ったら勝てないと理解していると思いますので、何か作戦を考えていると思っていいでしょう。井植監督は百戦錬磨の監督ですし、選手も経験豊富な選手ばかりですが、松涛学園の選手達のような優れた身体能力を持つ相手と戦うのは初めてでしょう。先ほど試合前に少し井植監督と話をしたのですがあれほどのチームを見たのは長い経験の中でも初めてだといってました」
「ですが、松涛学園は平均身長が165cmと大会出場校で一番小柄なんですよね。
王華高校は平均172cmですからかなり有利にはなるのではないでしょうか」
「いやそれが松涛学園の選手達はジャンプ力も非常に高いのです。
恐らく平均的な女子バスケット選手より20cm以上高く飛べるようです。ですからまったく有利とは言えないのです」
「はい、わかりました。松涛学園は今回が初出場ですが、全国的に非常に高い人気になっています。
仙道さんの言われた選手の能力も素晴らしいのですが、人気の原因は選手の方々の優れた容姿にもあるようです。
それと松涛学園を率いる對馬拓郎顧問も中沢優奈アシスタントコーチも高い人気があります」
「まったくですね。美男美女ばっかりで本当に羨ましい限りです。ところで對馬監督は高校時代、非常に優れた選手で3冠も達成しているのですが、なにか身体能力を上げるような特殊なトレーニング方法を知っているのかもしれません」
確かに拓郎は”特殊なトレーニング方法”をハーレムメンバー全員に寝室で行っているが、教えることはできない。
逆にに知られたら拓郎は破滅である。
そして試合が始まった。
松涛学園に対し試合巧者である王華高校の選手は、絶妙のフェイクでデフェンスをかわし得点を重ねていく。
まだ緊張の残る松涛学園の選手達はつい相手の絶妙のフェイクに反応してしまう。
だがゴール下のせめぎ合いでは松涛学園が有利に進めリバウンドは多く取っていた。
前半終了時点で28対22と王華高校が6点リードしていた。
「ここまでは王華高校が6点のリード。松涛学園はついにこの大会で初めて前半戦リードを奪われました」
「そうですね、さすがは井植監督です。松涛学園の選手達は一試合毎に成長してきましたが、それでもまだ経験が足りていません。
それに対し王華高校の選手は3年生が主体で試合運びが絶妙です。シュートフェイクやパスフェイク、ショルダーフェイクを上手く使って松涛学園の選手達を翻弄していました。非常に高い技術を持っています」
「松涛学園はこれまで前半でリードされたことは無かったのですが、競った試合はありました。
ですが後半に入ると一気に点差を広げることが多かったと思います。仙道さんはこれからの展開はどうなると思われますか」
「そうですね。これからが松涛学園の選手達にとって本領発揮でしょう。
このままの展開で終わると言うことはまず無いでしょう。
松涛学園の選手も慣れて来たようですし、彼女達はスタミナも並外れています。
普通はきつくなってくる第3ピリオド後半辺りから、逆に動きに鋭さが増してくるんです。
そこを王華高校の井植監督がどう考えてるかですね」
ハーフタイムに井植監督は選手を前に檄を飛ばしていた。
「ここまでは良くやった。ここまで相手を押さえるとは予想以上だった。で、どうだ相手は」
「そうですね、やはり疾いです。少しでも油断すると見失ってしまうほどです。
それにあの佐々木さんというキャプテンは瞬発力が全然違います。あんな相手はいままで対戦したことがないと思います」
「いや、全員そうだよ、私がマッチアップしてる山咲きさんだってすごいよ。みんな足も速いし」
部員達から意見が出るが、それはほとんど里奈達を絶賛する言葉だった。
「そうだな、お前達はあの子達を相手によくやってきた。
だがな、問題はこれからだぞ。お前達もビデオで何度も見たとおり、相手は後半になると動きのキレが良くなって来るんだ。
普通は苦しくなってくる時間に相手はエンジン全開って感じだ。
本当に恐るべき相手だ。6点くらいのリードなどまったく意味は無いと思ってあたれ。
これからは小手先のテクニックは通用しなくなるだろうが、とにかく相手をリズムに乗らせるな。
相手のペースを狂わせるんだ。第3ピリオド開始2分したらいきなりスローペースに持ち込め」
「「「はいっ」」」
拓郎はこういった展開になると、ある程度予想していた。
だがこれほどフェイクがうちの選手に有効だとは思わなかった。
それだけ王華高校の選手の技術が高いと言うことだろう。
「つい、反応しちゃうんだよね。やりづらい相手だよ」
「だけど、なんとかなりそうだよ。もう簡単には引っかからないよ」
「みんな、後半も王華高校は何らかの手を打ってくるはずだ。
どんな手を打ってくるか正直俺にもわからんが、ひとつだけ言える事がある。
いいか相手のペースに巻き込まれるな。自分達のペースを守るんだ。
あれほどの試合巧者に対して難しいとはおもうが、何とか自分達のリズムを作れ」
「「「「はいっ」」」」
「それから、第4クオーターに入ったらマンツーマンでオールコートであたるつもりだ。
それぞれ自分のマッチアップした選手の動きを掴め。いいな」
第3クオーターでは勢いを取り戻しつつあった松涛学園だが、王華高校はいきなりゲームをスローペースに変えてきた。
それによってまたペースを崩された松涛学園は自分達のリズムを掴めない。
だがそれでも身体能力の差はいかんともしがたく少しずつ得点差が縮められ、第3クオーターが終わった時には2点差までになっていた。王華高校のキャプテンの伊織は松涛学園の選手に自分達が付いて行けなくなって来たことを感じていた。
「だめだ、もうフェイクも通用しない」
そして第4クオーターで松涛学園はマンツーマンでオールコートで当たって来た。
若干だが疲れの見える王華高校に対して、まったく動きが衰えないどころかキレが良くなっていく松涛学園はターンオーバーを量産していく。王華高校はリバウンドも取れなくなっていた。
「松涛学園、ついに逆転っ」
あっという間に逆転された王華高校は、なすすべもなく得点差を広げられていく。
「これまでか。ここでオールコートでこられたら、もうどうしようもない」
と、井植監督は力なく座り込んでしまった。
王華高校は第4クオーターでは6点しか得点できなかった。
そして試合終了のホイッスルが鳴った。
里奈や奈々美達の歓喜の瞬間である。会場からも大歓声が沸いた。
「「うわあぁ、やったぁ。勝ったぁ」」
抱き合って喜ぶ松涛学園バスケ部員達を見て、王華高校のバスケ部員達は拍手をしていた。
負けたが全力は尽くしたんだ悔いは無いと思っていた。
松涛学園バスケ部員達はどれだけ練習したんだろうと思った。
3年生は引退だが、1・2年生はこれからはこれまで以上に練習しようと決心していた。
「47対59 松涛学園逆転勝ちです。ついに王者・王華高校が敗れました。
勝ったのは初出場の松涛学園です」
拓郎と里奈を胴上げした後、次々と部員を胴上げしていく松涛学園を見て、王華高校の選手達も井植監督を胴上げした。
井植監督は嬉しそうであった。そして引退していく3年生部員も胴上げされていた。
テレビのインタビューが終わり、表彰式では全員がメダルを貰い、そして里奈が金色のバスケットボールを模した優勝盾の受け取った。校長先生や引退した3年生部員も着て祝福され、新聞と雑誌の取材や写真撮影に応じ祝勝会の会場に向かって移動になった。
翌日、学園に行くと屋上から『祝・全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会優勝・松涛学園女子バスケット部』と書かれた大きな垂れ幕が下がっていた。
看板屋さんにいつ頼んだのであろうか。
陸上部顧問の関口や教頭は、里奈達の陸上部への勧誘は諦めていた。
里奈達がテレビや新聞の取材で
『これからもバスケット一筋で頑張っていきます』
と何度も言っていたからだ。
陸上部顧問の関口や教頭は諦めるしかなかった。
さらに学園に里奈達のテレビの出演以来が殺到していた。
なんと国営放送の大晦日の夜、赤白歌合戦にゲスト出演して欲しいと依頼があった
学園としては里奈達がよければ出演しても良いと許可した。
しかしそうなると他局も黙っていない。
おかげで部員だけで無く拓郎と優奈も含めて冬休みは大忙しであった。
中には男性タレント達とバスケット対決やフリースロー対決などの企画もいくつかあったし、CM出演依頼もあった。
まさに世間は松涛学園女子バスケット部の大ブームになっていたのだ。
「もう、最近は街に買い物にも出られないよ」
「絶対コンビニなんかいけない」
「まあまあ、ブームはそんなに続かないから」
部員達は嬉しさ半分といった感じだ。
「お正月に親戚がいっぱい来て、お年玉はすごかったし、褒められまくったよ。相沢家の誇りだって」
「うちもそうだよ、たくさん色紙が用意してあってさ、うんざりするくらいサインを書かされた」
それぞれプライベートで色々あったようだが、皆嬉しそうだった。
余談だが、学園がこのバスケ部員達の人気を利用しないわけが無く、東京の各中学校に対する学校説明会で拓郎と優奈と部員達を手分けして派遣した。今では松涛学園は東京では一番有名な高校になっていた。
それぞれ派遣した中学校の学校説明会では大騒ぎになったが、松涛学園の入学試験では応募が殺到し例年の数倍の応募者数となった。
学園の偏差値は上がるし、莫大な受験費が学園を潤すことになった。
そして女子バスケ部にも10人を超える新入部員が入ったのである。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
1年後……
松涛学園女子バスケット部は3冠を達成していた。
夏のインターハイ、秋の国体、冬の全国高等学校バスケットボール選抜優勝大会と全てで優勝した。
拓郎が顧問になってから松涛学園女子バスケット部は公式戦で一度も負けなかった。
試合では拓郎や里奈達は相手選手達からサインを求められるほどだった。
松涛学園女子バスケット部員達は妖精軍団とかスーパーJKと呼ばれ全国的に人気は沸騰していた。
若者向けのファッション雑誌で読者モデルとしても起用され、表紙を飾る彼女達は海外でも人気が出ていた。
そして多くのCMに起用され、この1年テレビで彼女達の姿を見ない日は無かった。
里奈や奈々美達の進路については、バスケの名門大学や実業団からかなりしつこい勧誘があったが、彼女達は東大受験一辺倒ですべて断っていた。
拓郎と新キャプテンの進藤結衣は学校説明会に連れ出され、東京の中学校に行った事があるのだが、結衣もすでに爆発的な人気がでていたため、とんでもない大騒ぎになった。
今では中学の女子バスケ部員にとっては松涛学園は憧れであり、拓郎の人気も高かった。
当然男子中学生にとっても、松涛学園女子バスケット部員達は憧れている。
味をしめた学園はそれからも何度も拓郎と結衣を学校説明会に派遣していた。
おかげで全国から昨年を上回る応募があった。学園としては万々歳である。
里奈達の卒業式の日は松涛学園の門にマスコミが殺到した。
大変な騒ぎだった。
そして今日は里奈達が受験した東大の合格発表の日だった。
発表会場には多くのマスコミが来ていた。
里奈達の結果と喜びの声を伝えるためである。
やがてそこに7人の異彩を放つ美少女達が現れた。
拓郎のハーレムメンバーだ。
自信と覇気に溢れ、まだ可憐で幼さを残す顔立ちだが美の女神を思わせる外見を持つ清楚な美少女達だった。私服姿で現れた彼女達はさすがにファッション誌のモデルを務めるだけあってセンスは抜群だ。
周りを明るくするような華やかな雰囲気で周囲の者たちの目を引き付けている。
里奈達を知らない受験者の父兄達も『只者ではない』とすぐに分かるほどのオーラを放っている。
すぐにテレビカメラが近寄ってきて、里奈達を追い始めた。
やがて彼女達は合格者の受験番号の掲示板の前に来ると自分達の番号を探しだす。
そして見つけると胸の前で両の拳を握り締め可愛くガッツポーズを決めていった。
レポーターの女子アナがその姿を見て駆け寄る。
「佐々木さん、藤井さん、皆さん合格されたんですか」
「はい、全員の番号を確認しました」
「まあぁ、おめでとうございます」
その瞬間、大歓声に包まれたが、そこに大勢の男達が現れた。
「おめでとう、我々は、君達を心から歓迎する」
と言って来たのは東大生だろうか。
いきなり里奈達を胴上げし始めた。
「キャー、止めてよぉ、スカートなの、パンツが見えちゃうよぉ」
「ほんとに止めてぇ、スカートがめくれてるでしょ。ああん、お願いだから止めてえ」
「あああん、足を開かないでよぉ、ミニスカートなんだから。ああん」
という彼女達の言葉は万歳の声で周りの人間には聞こえてないようだ。が、本当はどうなのだろうか。
しかしテレビカメラの集音マイクは、その里奈達の声をしっかりと捕らえていた。
「「「「「「ばんざーい、ばんざーい」」」」」」
胴上げされる7人のあられもない姿はしっかりとテレビカメラに捉えられていた。
他にもビデオカメラで、その姿をとっている者も多かった。
「藤井紀香のパンツはピンクだったな」
「おう、佐々木里奈はブルーだった」
この様子は夕方のニュースや、夜のニュースでも取り上げられ、彼女達の衝撃映像は多くの視聴者を悦ばせていた。もちろん動画投稿サイトにも多くの動画が投稿され爆発的にアクセスされていた。
おかげで、さらに彼女達の人気は爆発的なものになっていった。
その夜、ニュースを見た彼女達はぷんすか怒っていた。
「悪気があったとは思わないけど、あの人達、テレビ局に頼まれてたんじゃないのかなぁ」
「酷いよね、先生以外の男には絶対に見せたくなかったのに」
「何百万人に見られたよね。あははは」
と言う、唯一Gパンで行った金森裕子だけは気持ちよく胴上げされていた。
「まったくもう、スカートなんかで行くんじゃなかったぁ」
「まあまあ、中身を見られたわけじゃないんだし」
「冗談じゃないわよっ、まったくぅ」
なにはともあれ、拓郎のハーレムメンバー達は東大に合格したのであった。
エピローグはハッピーエンドとブルーエンドどちらにしようか考えています。
どっちにしろ2日後くらいに更新する予定です。




