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第1話

もうすぐ夏休みを迎える7月半ばの昼下がり、藤井紀香ふじい のりかは歴史の授業を受けていた。

歴史教師は對馬つしま拓朗たくろうである。


「いいか、古墳時代の群馬は東国文化の中心地だったんだ。

なにしろ群馬は「埴輪はにわ王国」と呼ばれているくらい、日本における埴輪研究の中心地ともいえる。

唯一の国宝埴輪である「武装男子立像」は、群馬県太田市から出土してるし、国宝・国指定重要文化財の埴輪全42件のうち、じつに19件45%が群馬県から出土しているんだ。

それなのに太田市はこの国宝を出土した天神山古墳や女体山古墳をきちんと保護しないばかりか、真ん中に道路を通してしまい、日本ばかりか世界中に太田市の文化の低さを露呈してしまった。本当に嘆かわしいと思わないか」


この授業を受けた者は、今後この地方都市の名を聞くたびに文化レベルの低い町と思い出すだろう。

拓朗の授業はたまにこのように脱線するが、生徒には概ね好評である。

この先生は本当に歴史や考古学が好きなんだなあと思わせるくらい熱心である。


拓朗は私立松涛学園高校の歴史教師である。

去年の4月にこの高校に赴任してきた。

紀香のクラスである二年四組の担任で考古学部顧問でもある。


拓朗は残念なイケメンだ。

顔立ちは端正で整っているが、ボサボサの髪に分厚い眼鏡かけている所為で、まったく冴えない風貌である。

体つきは高校時代バスケットでインターハイに出場したこともあり、また大学時代は世界各地の遺跡などの発掘作業を積極的に手伝いに行っていた為か、上背も高く贅肉など無い引き締まった体つきをしている。

髪を整えコンタクトレンズにすれば相当もてるのにと紀香は思っていた。

だが拓朗はそういったおしゃれとかにはまったく関心が無い23歳の独身青年であった。

なにしろ拓朗は大学時代に一人暮らしを始めてからは、髪は伸びたら自分で適当に切っているくらい容姿に無関心だった。

もちろん今まで彼女など出来た事は無い。


拓朗は学生時代、世界中の遺跡を教授らとまわっている。

知的な冒険を多く経験して、世界中の人々の暮らしも見てきた、

そういった経験が拓朗自身の内面を大きく成長させてきた。


世界中の遺跡付近に住む人々は概ね貧しい生活であるが、助け合い支えあって懸命に生きていた。

そういった人々の暮らしに触れ拓朗は人と接っするにあたり容姿や外見に拘らなくなっていった。

当然、自分の容姿や外見も気にしなくなった。

ただし、子供の頃からの潔癖な性格は変わらず清潔な暮らしは心がけている。


大学に残るよう教授に強く勧められたが、拓朗は教師の道を選んだ。



今年の6月末の事である。

拓朗が顧問を勤める考古学部は廃部の危機に陥っていた。

部員は全員が3年生で7月末に、全員引退してしまう。

そうなると考古学部は廃部だ。

そこで拓朗は部員を集めるように生徒会から言われていたのだが、部員募集の張り紙をしてもさっぱり入部希望者は集まらなかった。


7月になって、拓朗は鈍った身体を鍛えなおそうと毎朝6時に起きて学校の校庭を走っていた。

ある日の事、いつものように走った後、体育館で腹筋運動などのストレッチを行ない、体育館の横にある水道で眼鏡をはずし、髪を洗って、タオルを濡らして身体を拭いた後、乾いたタオルを捜していたら横から声を掛けられた。


「はい、これ、せんせっ」

と目の前にタオルが差し出されていた。


「んんっ?」


眼鏡をはずしていたため、女生徒が四人いるのは分かったが顔まで判別できない。

タオルを渡してくれた生徒に顔を近づけて見ると藤井紀香だった。


「ちょっと、先生、タオルを渡しただけで、チュウしていいとは言ってないです」

と言って紀香が後ずさる。


「おお、藤井か、おはよう」

タオルを受け取り顔を拭きながら挨拶する拓朗。


「もう、びっくりしたよ。いきなりチュウしてくるんだもん」


「ちがうっ、眼鏡が無いと近くで見なきゃ誰だか分かんないんだよ。まったく」


ちなみに拓朗の今の姿はランニングパンツとシューズだけである。

髪は洗ったばかりで後ろに流してあり、眼鏡は掛けていない。

普段はザンバラな髪型も今はオールバックになっていて、眼鏡も無いので完全な素顔である。

四人は拓朗の素顔を真近で見て、その肌が綺麗で端正な顔立ちに見蕩れてしまう。


――ああ、先生って男の人なのになんて綺麗な顔なんだろう。

クラスの男の子なんてみんなニキビだらけで気持ち悪いのに、先生は少しも嫌な感じがしない。

それにバランスの取れた男らしい身体も綺麗――


「せ、先生、結構良い身体してますね。それに・・・すごく綺麗な肌・・まつ毛がすっごく長いし」


誰か藤井の後ろにいる生徒が言う。

だが余裕の無い拓朗の耳にその言葉は入ってこなかった。


「藤井、すまないが俺の眼鏡を渡してくれ。誰だかさっぱり分からん」


「はい、先生」


眼鏡をかけてようやく安心した拓朗は四人を見た。


四人共拓朗が担任を務める二年4組の女生徒である。


藤井紀香、篠崎ミサ、山咲奈々美、相沢 純の四人であった。


春に家庭訪問をしたときにそれぞれの家に行ったが、四人共裕福な家庭で良家の子女だった。

彼女らは家ではお淑やかに、いかにもお嬢様然としていたが、普段、学校では地味な感じの女子高生だ。



数日前、彼女らは朝、宿題の答えあわせをやろうと早く学校に来たとき拓朗が走っているのを見たのである。

それから毎朝、隠れて拓朗を見ていたのだ。

水場で身体を拭く拓朗の姿をデジカメで撮ってもいた。


「ねえ、對馬先生って、ほんとはすっごくかっこ良かったんだね」


「うん、びっくりした。あのぼさぼさの髪と牛乳瓶の底みたいな眼鏡で騙されてたね。

だっさーとか思ってたよ」


「身体も引き締まってるし、非の打ち所が無いって感じ。マジでイケメンだわ」


「ほんとうに目が綺麗で整ってるよね。中々居ないと思う。あんなに素敵な人」


「長いまつ毛がひわいね、って感じ。

私達以外に誰も気付いていないんじゃないかな。今がチャンスかも」

四人共顔を赤らめながら話していた。



そして今日、意を決して拓朗の所に来たのである。


「先生、毎朝、精がでますね。急にどうしたのですか」


「うん、去年やっとの思いで創部した考古学部が廃部になりそうなんだ。部員募集の張り紙を張っても入部したいって生徒が一人も来ないんだよ。

生徒会から最低でも四~五人は部員がいない場合は休部か廃部になるって言われちゃってさ」

紀香達もその話は噂で聞いていた。


「三年生の先輩たちは今月に引退ですしね。先生は困ってるんですね。

でもなんで急に走ったりしてるんですか」


「ほら、そうなるとどっかの運動部の顧問にされそうだから、今のうちに鈍った身体を鍛えているって訳さ。

まあ考古学部以外の顧問になるなら出来ればバスケ部がいいんだけど」


四人は顔を見合わせて頷いたあと、拓朗に向かって言った。


「じゃあ、私たちが考古学部に入部してあげましょうか」


「マジかっ!助かるよ。やっとできた考古学部を廃部にしなくて済む。やったぜ」


「そんなに嬉しいですか。じゃあ、条件があるんですけど」


「おお、なんだ、言ってみろ」


「えへへ、先生の家ってここから歩いて10分位の所にあるんですよね」


「ああ」


「試験の前に勉強会を開いて欲しいんですけど。分からないとこも教えて下さい」


「何だそんな事か、お安い御用ってやつだな。いいよ・・・って待て、俺んちでやるのか」


「そりゃそうですよ、夏休み中とか夜遅くまで学校にはいられないじゃないですか」


拓朗は考え込んでしまった。

というのは補習以外で、特に男性教師が女生徒を自宅に呼んで個人授業をするなんて良いのだろうか。


「ああ、先生。校則の事ですね。大丈夫ですよ。奈々美のお母さんには許可を得てます」

山咲奈々美の母、初美はこの学校の理事である。


「すでに許可を得てるのか、なんでそんなに準備が良いんだ」


紀香はそれには答えずしれっと言う。

「先生、廃部の危機なんでしょ、考える余地なんて無いと思いますよ」


「いやその通りなんだが、校則はともかく一部の生徒を贔屓するみたいで気が引けるって言うか」


「先生、可愛い部員のためなんだから問題ないです」


拓朗は了承する事にした。

やましい事など何も無い。と思う。


「ああ、そうだな、分かった。その条件を飲もう、じゃあ、みんな放課後に部室に来てくれ」


こうして考古学部の存続が決定したのだった。




夏休みになった。


私立松涛学園高校は都内有数の進学校である。

生徒には夏休みの課題が山ほど出る。

さらに休み明けには実力テストがある。

そのため拓朗の家で勉強会が頻繁に行われる事になった。

もちろん学校にも許可を得たし、彼女らの親にも了承を得ている。

事前に拓朗は4人の家庭を尋ね、きちんと説明して回ったのだ。


「まあ、先生は熱心な方ですね。今が一番大事な時期ですから、是非にでもお願いしたいですわ」


それぞれの親は拓朗を歓迎してくれた。

拓朗の容姿を見た母親達は、自分の娘が不純な目的で勉強会に参加するとは微塵も思わなかったのである。



「おはよ、いやあ暑いね。汗びっしょりだよぉ」


と言いながら朝10時頃四人は集まってくる。

そして必ず「せんせえ、シャワー借りるね」と脱衣室に入っていく。


拓朗も最初はそれを断った。


「おい、俺だって男だぞ。年頃の娘が男のマンションでシャワーを使うって・・どうなんだ」


しかし、断ったのは良いが暫くすると四人もの女子高生の汗の香りは甘く部屋中に漂い、拓朗はたまらない思いに駆られてしまい、すぐに降参した。

(女の子って、なんでこんなにいい匂いがするんだろう。だめだシャワーを浴びて貰おう)


「ああ、みんな、やっぱりシャワー使っていいぞ」


だが最近の女子高生は拓朗が思っていたよりも手強かった。

いや彼女達は特別だろう。


「先生は私達の身体の匂いを楽しんでいたんじゃなかったの」


「匂いフェチだとばっかり思ってた」


「そっかあ、そうなんだ。先生がそういうのが好きならシャワーは我慢する」


「うんうん、先生の好みの女の子になりたいし」


「ねー」


あははは、きゃはははとからかってくる。


拓朗は、くっそーこいつらと思いながらも言わざるをえなかった。


「やっぱり汗臭いんだよ。女の子なんだから仕方が無い、シャワーを浴びてきなさい」


それでなくても真夏で、みんな肌を露出している。

彼女達は、拓朗のマンションに着くと直ぐに薄着に着替えるのだ。

上はキャミソールかタンクトップで、下はホットパンツか超ミニのスカートだ。

学校の制服とはまるで違って露出部分が多い。

生足の太股が眩しく見えるし、上から見れば胸の谷間がなまめかしい。

拓朗も男である以上、どうしてもそこに目がいってしまう。

(こいつら、俺を挑発してるんじゃないだろうな)

と思うような格好である。

どうしたって狭い拓朗のマンションのリビングでは、彼女らの甘い香りが漂ってしまい、拓朗は男の生理現象に困る事が多かった。



実は彼女らは拓朗を挑発していた。

あの体育館の横の水場で見た拓朗の姿を見た時から拓朗に憧れていた。

というより拓朗の眼鏡を外した素顔を見た時、四人共拓朗に強く惹かれてしまっていた。

そして拓朗の人柄に触れるたびに、憧れが強くなり好意が増して行った。


拓朗は上背も180センチ位あり逞しい身体をしている。

性格も穏やかで大人だ。

同級生の男子なんてまだまだ子供で、拓朗とは比べ物にならないし雰囲気が全然違う。



紀香達四人はこの夏休みの間に拓朗と初めての経験をしたいと思うようになっていった。


彼女達も性に強い興味を持つ普通の女子高生なのだ。

同級生の中には、彼氏が出来て経験している娘もいる。

別に好きでもないバイト先の大学生と興味本位で経験したという娘もいた。

でも私は心から好きな相手と結ばれたいと思う。


勉強会が始まってから彼女達は、夜ベッドで拓朗のランニングパンツ一枚の写真を見ながら、自分を慰める事も多くなった。


拓朗は髪はぼさぼさだが、いつも清潔そうな真っ白なシャツを着て、顔もニキビなど出来た事は無いだろうと思えるほど肌が綺麗である。

拓朗は髪を整え眼鏡をはずせば、誰が見ても清潔感があるなあと印象を持たれる事は間違いなかった。


――― 私の初めては先生と ―――


と四人が決めるのに時間は掛からなかった。


だが拓朗を攻略するのは容易な事ではないと理解もしていた。

まず普通に告白しても断られるだろう。

それどころか、二度と部屋に入れてもらえないかもしれない。

なにしろ担任教師と教え子の生徒なのだ。

それだけでも困難なのに、さらに拓朗はかなりの朴念仁だ。

簡単には手を出してこないだろうという事も分かっていた。

だから暫くの間は挑発して、拓朗の外堀を埋めることにした。

そして拓朗のガードが下がった時にある計画を決行しようと相談していた。

四人は最終的には一人を選んで貰うにしても卒業までは拓朗を共有しようと相談して決めていた。

普通は男を共有するなどあり得ないが、拓朗に関しては四人が四人とも引かなかったのだ。


そうして8月初旬には四人共、事故を装って拓朗の前で全裸姿を見せていたばかりか、過激なスキンシップも実行していた。

拓朗と腕を組んで昼食の買い物に行ったときはノーブラの胸を拓朗の腕に押し付けたり、背中に押し付けたりもしていた。


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