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第18話

拓郎は部屋に戻ってベッドに寝転がって考えた。


―――こんな事が許されるはずがない。


拓郎の頭の中に紀香や菜々美たちと関係を持った時から常にあった言葉だ。

だが毎日が新鮮で楽しかったのもあるが、断ち切るすべがなかったことも確かだ。

いつの間にか彼女たちは拓郎の心の中に入り込んでかけがえのない存在になってしまっていた。


『学園を卒業したら一人だけを選んで欲しい』と言う言葉。

まだ1年半先の事だが拓郎自身選ぶことなど出来ないだろうと思っている。

だがずっとこの関係を保っていけるはずもない。


佐々木里奈が言った『ハーレム』と言う言葉。

初めて言われたが考えてみれば言われたとおりだ。

4人の女の子と望まれたまま関係してきたが、やはりこんな事は常識ある人間のする事ではない。

だが、あの魅力的な身体を俺は手放せるだろうか。


よく考えてみれば菜々美たち4人と里奈たち3人のうち、誰かが父兄や学園に話したらどうなるのだろうか。

もちろん俺は解雇されるだろうが、おそらく学校側は保護者や生徒への見え方が良くないので隠すだろう。

というか大っぴらには言わないように指導すると思う。

と言う事は俺一人が責任を取ることで菜々美たちは守れるのか。

だが下手をすると青少年保護条例かなにかで俺が訴えられるかもしれない。

どっちにしろ俺にとっては破滅に等しい不名誉な事態になるはずだ。


つまり俺はあの7人の女子高生に生殺与奪の権利を握られているのだ。


今更こんなことに気付くなんて俺はなんて世間知らずの馬鹿なんだろうか。

もちろん、菜々美達がそんなことをするとは思っていないが、里奈達はどうだろう。

教授達と世界中の遺跡を巡って、世界の人々の暮らしを見てきたけど、みんな懸命に生きてる人ばかりだった。そんな人たちを見て来て成長してきたつもりだった俺は、本当に何も考えて無かったんだな。


どうする、学園を辞めて菜々美達とも別れて、一からやり直すか。

それとも佐々木の希望通り女子高生7人のハーレムを形成するか。


俺は菜々美や紀香、リサ、純と別れたくない、本当に心から一緒に居たいと思う。

佐々木里奈はフーコそっくりで惹かれてるし、彼女は理知的で好みのど真ん中だ。

松本詩織も清楚な雰囲気で好ましいと思うが、空気を読まない無神経さが残念だ。

金森裕子については性格も良く知らない、だが控えめで優し気な目が好ましい。


ああ、もう、俺なんかどうなっても良いや。

俺なんてフーコとトーコに会わなければとっくに終わっていた命だ。

今更、保身に走ってどうする。

それよりこれからは菜々美達を守って生きていきたい。

少なくとも彼女たちには自信をもって胸を張って生きて行けるようになって欲しい。

彼女たちは素晴らしい。

何もかも一生懸命で、俺の知らないところでも懸命に努力しているのだろう。

俺も、せめてあの子たちの心に残るような男になるため頑張りたい。



佐々木里奈の要望にも応えよう。

菜々美達が許したのなら、もう仕方がない。


よしっ、そうしよう。


拓郎はそこで思考を止め眠りについた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




月曜日は憂鬱だ。それが雨の日なら尚更だ。

あ~あ、月曜日なだけでも嫌なのに雨かよ~みたいな感じだろう。

だが今朝の松濤学園の生徒たちは拓郎と亜里沙の話題で盛り上がっていた。


「ねえねえ、聞いた」


「ああ、對馬先生の事でしょ。山口先生にデートを申し込んだんだって」


「そうそう、山口先生もすごく嬉しそうにOKしたって話だよ」


「でもそれって今日の放課後の男バスとの試合で對馬先生が勝った場合でしょ」


「うん、そうなんだよね。これはもう絶対に見に行かなくちゃね」


「なあ、それ本当かよ」


「本当だよ。女子バレー部の人から聞いたんだから」


山口亜里沙はこの学園の男子生徒の憧れでありマドンナなのだ。

そして拓郎も女生徒達に人気急上昇中の男性教師である。

思春期真っ只中にいる女子高生にとって、このての噂は大好物である。

ある事ない事、どんどん話が大きくなっていった。

そしてあっという間に全校に知れ渡っていったのである。


もちろん拓郎も亜里沙もその噂は否定していた。

だが二人とも午前中の授業は2~3回あるだけで、全教室を回れるわけではない。

しかも亜里沙は聞かれるたびに残念そうに話すので、さらに噂は加速していった。

やがて教職員たちにもその噂は耳に入り、拓郎は質問されるたびにうんざりしていた。

特に女性教師からの尋問は苛烈であった。


「だから中沢先生、それは違います。部員たちと夕飯を食べに行こうって話なんですよ」


「でも女子新体操部の新川さんが、はっきりとお二人のお話を聞いたって言ってるんですけど」


「それは…土曜日はそんな話になっていたんですけど、昨日になってやっぱりみんなで行こうって事になったんです」


「本当ですか、なんだか山口先生は對馬先生ほど強く否定してないんですけど」


「青木先生まであんな噂を信じているのですか」


寺尾佑理や中沢優奈、青木智子などの女性教師が次々と拓郎の席に来ては亜里沙との事を尋問していくのだ。

それも職員室にいるのに大声で、まるで周りの人間に拓郎が否定するのを聞かせるようにしているようだ。

完全に拓郎が亜里沙の事は何とも思っていないと確認するまで、それは続いた。


さらに昼休み前には拓郎と亜里沙は校長室に呼ばれ教頭から事情聴取を受ける羽目になっていた。

だが、完全に誤解が解けたと言う訳ではなく拓郎は男性職員や男子生徒からやっかみの視線を受けていた。


校長室から出た拓郎は疲れ果てた表情で、いつものように考古学部の部室に昼食を取りに行った。

入り口で菜々美達が待ちくたびれた様子で拓郎を待っていた。


「先生、今日は部室はバスケ部に譲ったんです。屋上に上がる階段でお昼を食べましょう」


「ん、なんだ。バスケ部に譲ったって、なんでだ」


「それは、その…放課後の試合で里奈が部員に気合を入れるために集めたみたいです」


「そうなのか、いやそんなに頑張ることも無いんだけどな。まあ、いいか」


「先生っ、里奈たちは負けたら部を辞める覚悟なんですよ。先生も頑張ってください」


「そんな、そこまで阿久先生が嫌なのか」


「そりゃ、そうですよ。まあいいからご飯食べに行きましょう」



今日は雨が降っていたため屋上は使えない。

5人は屋上に上がる階段の踊り場でレジャーシートを敷いて弁当を食べ始めた。

周りには誰もいないことを確認して話し始める。


「先生、昨日の里奈の話ですけど……」


「ああ、あれな、うん、あれから部屋で考えたんだが受け入れようと思うんだ。

だけどお前たちはいいのか。お前たちがどうしても嫌なら断るつもりなんだが。

だが断ったら佐々木たちがどうするのか分からんしなぁ」


それを聞いた紀香が悲壮な顔で応える。


「嫌だけど、本当に嫌なんだけど、仕方ないし…でもこれからは絶対に誰も入れないから」


「うん、それにこれからは誰にも知られないようにしようね。先生も気を付けてね」


「ああ、そうだな」


5人はしんみりとした雰囲気になってしまう。


「ところで、亜里沙先生との噂、すごい広まってるね。先生は完全に学園の男子たちを敵に回したね。

みんな見に来るっていってたから今日の試合、先生は完全アウェーだよ。あははは」


「笑い事じゃないぞ。職員室でもアウェーだ。

それにさっき校長室に呼ばれて教頭から事情聴取を受けたんだ。

おまけに今日もし勝ったら祝勝会をやるって言ったら、何人かの先生も出席するってさ」


「へえー、誰が来るんですか」


「ああ、中沢先生とか、青木先生とか女性職員が何人か来るって言ってた」


「なるほど、先生と亜里沙先生を見張るってわけですね」


「私たちもバスケ部員もその噂についてはデマだよって言ってるんだけど」


「でも土曜日に現場にいた他の部の人たちが『本当だよ』って言ってるんですよ」


「まあ、問題ないさ、試合が終わったら実際にみんなで飯を食べに行くんだから」


「……亜里沙先生はその祝勝会に参加できるかなあ」


菜々美がボソッと独り言を言ったが拓郎は聞き取れなかった。


「ん?なんだって」


「いえ、何でもないです…あは」



その頃、考古学部の部室ではバスケ部員を集めて里奈が亜里沙を追放する話を進めていた。


「と言う訳だからみんなも協力して」


ほとんどの部員が大賛成と同意したが、少数の一年生部員は戸惑っているようだ。


「ちょっと酷いような気がする」「うん、そこまでするのは酷過ぎると思う」


「でもね、對馬先生は今日の試合でも『全員が参加して戦おう』って言ってくれたんだよ。

亜里沙先生なら考えられないことだと思わない」


「そうですね、對馬先生と山口先生は正反対な感じがします」


「これからは對馬先生が監督・コーチになるんだよ。

インターハイ出場だって少しも夢じゃないし、頑張れば誰だってメンバーに選ばれると思う。

亜里沙先生は邪魔者以外の何者でもないよ」


「そうだ、これからは對馬先生と部活をやれるんだ」


この言葉で全員の意見が一致した。

女子バスケ部も一致団結したようだ。

そして今日の試合は絶対に勝つと気勢を上げていた。



同じ頃、体育科職員室の阿久も同僚の体育教師から、拓郎と亜里沙の噂を聞いていた。


「對馬の野郎、もう勝ったつもりでいるのか。

くそっ、こうなったらどんな手段を使ってでもあいつを叩き潰してやる。

あいつさえ潰せば他の女子など赤子の手を捻るようなもんだ。見てろ」


と、阿久は拓郎に対する嫉妬と怒りで頭が沸騰しそうだった。



男子バスケ部員も男子生徒達から熱い声援を受けていた。


「今日の試合頑張れよ。心から応援してるぜ」


「頼むから勝ってくれ。山口先生を守るんだ」


「いいか、絶対にあの二人のデートは阻止してくれ。勝ってくれ」


さらに女性陣からも応援された。

女生徒も拓郎と亜里沙が接近するのは面白くないと思っている者が多かった。


「頑張って、試合見に行くから」


寺尾佑理や中沢優奈、青木智子などの女性教師まで


「いいこと、今回は絶対に勝つのよ。死ぬ気で頑張りなさい。私も精一杯応援します」


とまで言ってきた。


今までこんなに応援して貰った事など一度も無かった彼らは感激していた。

それに勝てばあの藤井や山咲達がマネージャーになってくれるし、山口先生は副顧問になってくれる。

さらに女子バスケ部と合同練習もやれるし良い事づくめだ。

それになにより今回は学園のヒーローになれるチャンスだ。

ひょっとしたら俺にもモテ期がやって来たのかもしれない。


男子バスケ部員たちは、かつてない程の闘志を燃やし試合に挑むことになった。



こうして様々な思惑が絡む中、拓郎は平常運転で授業を進めていた。

男子生徒から敵意の籠った視線を受けているのは痛いほど感じていた。

だがムキになって噂を否定しても逆効果になると思い自重していた。

それでも授業の終わりには「みんな、あの噂はデマだぞ」とだけ言っていた。



今回の拓郎対男バスの試合は生徒達にとって娯楽の少ない学園生活の中で絶好の娯楽となった。

さらに今日は雨天でグラウンドでの部活が出来ない野球部やサッカー部、陸上部の部員たちも第2体育館に試合を見に来る様だ。

生徒会もこの試合に対しては学園全体が注目していることに気付いていた。

そして大多数の生徒と教職員が見に来ると予想し準備を進めていた。


松濤学園第2体育館はインターハイのために建設された体育館である。

生徒会は今回の試合では公式試合の会場として使用される場合のセンターコートを準備した。

おそらく300人くらいの生徒や教職員が観戦に来ると予想されたためだ。

女子バレー部や体操部、バトミントン部などに許可を得て、今回はバスケ部だけがこの体育館を使用する。

もちろん他の部員たちは快く了解してくれた。

その代り二階席の一番いい場所を要求してきた。

実際、放課後になって徐々に生徒が集まってきた。


拓郎や女子バス部員たちが姿を現し柔軟体操やアップを終える頃には、200人以上収容できる二階観客席はほとんど埋まっている。教職員がや生徒会役員がすわるパイプ椅子も40席用意されていた。


菜々美達や女子バス部員たちもこれほど大勢の観客の中で試合をするのは初めてで、みんな緊張した面持ちだ。拓郎は特に緊張した様子は無い。

拓郎は懐かしい思いでコートとか観客席を見ていた。

拓郎の高校バスケ時代の最後の公式戦がこのコートだった。


そこに男バス部員たちが阿久を筆頭に入ってきた。

途端に観客席から歓声が上がる。


「男バスーっ、がんばれー」「がんばってー、負けないで」「死ぬ気でやれー」


と、ほとんどの生徒が男バスを応援しているようだ。



「まったく何でこんなことになったんだ」


と拓郎は嘆くが仕方がないだろう。


「あっはっは、先生、予想した通り完全アウェーだね」


「藤井、俺はこんなアウェー感は生まれて初めてだよ。やりづらいなぁ」


「あはは、先生が亜理紗先生をご飯に誘ったりするからだよ。自業自得だね」


「まあまあ先生、全力でプレーして彼らを黙らせてやりましょう」


紀香と違い里奈は全く笑顔を見せないで闘志を燃やしているようだ。

そこに男子バスケ部キャプテンの安藤が顔を出した。


「對馬先生、先生と試合ができるなんて僕たちにとって大変名誉なことです。

有難う御座います。部員達も喜んでいます。

僕たちも全力で頑張りますから今日はよろしくお願いします」


「たしか主将の安藤君だったね。こっちこそよろしくな。

そうだな、よし、俺も今日は全力を出すぞ。」


と二人は握手する。

拓郎の言葉を聞いた里奈と菜々美は初めて笑顔を見せる。


阿久と亜里沙は何か言い合いをしているようだ。

阿久は不敵な笑顔でいるが、亜里沙は憤慨している。


その後、教頭から

「今日は對馬先生のバスケットを見せて頂く試合です。怪我の無いように頑張ってください」

という間の抜けた挨拶の後、ルールの説明が始まった。

オフィシャルズは引退した三年生の元部員たちである。


「今回は對馬先生のチームは女子バスケ部員と考古学部の女子たちです。

男子と女子では身長差や体重差と体力差が大きいですから女子の消耗が激しいと思われます。

ですから今回は特別に對馬先生のチームは全員がベンチ入りで交代は自由とします。

男子バスケ部はベンチ入りは10人までとしてください。よろしいですか」


亜里沙がうなずくと、阿久も仕方ないといった顔で頷いた。


「それから、あらかじめ言っておきますが、今回の試合は對馬先生は別として男子対女子です

選手間同士の肉体の接触は原則として禁止です。もちろんゴール下のせめぎあいの時はある程度仕方ないですけど、手で体に触ったり押したりしたらパーソナルファウルになります。

悪質な場合はアンスポーツマンライク・ファウル、ディスクオリファイング・ファウルになります。

とくに男子の場合、女子への接触は厳しく見ますからファウルには充分注意してください」


と説明があった。

阿久は『まあ、對馬の野郎だけ潰せばいい』と考えていたため、特に抗議はしなかった。

男子バスケ部員は『ちょっとやりづらいかな』とは思ったが、オフィシャルズの言う事ももっともだと思ったため何も言わなかった。


すでに二階席は満席でコートの周りにも立ち見の生徒たちが集まり熱気で暑いくらいになっている。

5分間のアップの後、大歓声の中、試合が始まる。


拓郎チームのスターティングメンバーは拓郎と純、里奈と一年生部員二人だ。

ジャンプボールのジャンパーは拓郎だ。

男バスのジャンパーは拓郎より10cm近く身長が高いが拓郎は絶妙のタイミングとジャンプを見せボールを純にパスした。

純は素早くドリブルで切れ込んでいく。そして後ろも見ずにパスする。そこに拓郎がいた。

拓郎はそのまま走りこんでジャンプしスピンしながらダンクシュートを決めた。


会場は一瞬シーンとなったが、すぐに大歓声が沸いた。


「うわああ、すっげえ」


「なんだよあれ」


男バスの選手も驚いている。


「まさか、これほどとは」


「さすが對馬拓郎」


ジャンプボール後10秒と掛からずダンクシュートを決めた拓郎チーム。

デフェンスでは身長差があり過ぎるためパスカットはなかなか出来ないが、一年生部員などはちょっとぶつかっただけでも派手に弾き飛ばされてしまうため、男子も強引に切れ込んでいけない。

第1クオーターだけでチャージングの反則を6回も取られているのだ。

これには阿久も怒ってブロッキングじゃないかと抗議したが


「最初のルール説明で女子への接触は厳しく見ますと話した通りです」


と言われ黙り込むしかなかった。

拓郎チームは拓郎にボールを集め確実に得点を重ねて行った。

拓郎はハーフタイムまでに3ポイントシュートは8本打って6本決めていたし、2点シュートはダンクシュートを含めて9回決めていた。リバウンドも7本取っていたし、相手のシュートもかなりブロックしていた。

男バスチームは拓郎に対しダブルチームでオールコートで当たってきた。

完全に拓郎を封じ込めようという作戦だったが、拓郎の動きが切れすぎて止めるどころか後をついていくのが精一杯だった。。

拓郎以外の他のメンバーも拓郎にデフェンスが集まるためそれなりにシュートを決めている。

特に菜々美や紀香はフローターシュートを何本も決めていたのだ。


なんと第2クオーター終了時点で52対28と拓郎チームが大きくリードしている。


ハーフタイムまで阿久は頭が沸騰していたがなにも打つ手は無かった。


「先生、對馬先生を止めるのは無理です。あまりにも次元が違い過ぎます」


「動きが予測すら出来ないんです。見えないし」


「對馬先生はNBA選手並みじゃないでしょうか」


ハーフタイムで男バスの選手はみんなヘトヘトだった。

それに比べ拓郎チームはみんな元気だ。


「くっそう、まさかあれほどとはな。5年のブランクがあったというのは嘘だったのか。

仕方がない、こうなったらラフプレーで奴を止めるしかあるまい」


「無理ですよ。後をついていくのが精一杯でブロックするどころじゃないんですから」


「もうどうしようないです。こんなに大勢の前でラフプレーなんて出来ませんよ」


「っじゃ、どうするんだ、これじゃあの男にいいところだけ見せられただけじゃないか」


「最後までやりますけど、何か作戦は無いんですか」


「そうだな、奴以外の相手は小さいんだ。3ポイントシュートはブロックできないだろう。

後半は3ポイントシュートを多用していけ。それからダブルチームはやめて奴のマークは一人にしよう。

このままじゃ、奴以外にも多く得点されてしまう」


「そうですね、デフェンスを固くしてオフェンスは3ポイントシュートでいきましょう」


阿久は大した作戦も立てられずにいた。

拓郎の能力が高すぎて作戦など無意味とも思える。



見ている生徒や教職員もすでに拓郎のプレーに魅了されていた。


「對馬先生、かっこいい」


「對馬先生って何であんなにかっこいいの」


「すっごいよね。見惚れちゃったよ」


中沢優奈をはじめ女性教師陣も拓郎に魅了されていた。目がハートになっている。


「はあぁ、對馬先生、素敵すぎる」


「本当にすごい人」


もう、勝負はついていると思うのだが誰も試合を止めようとは思わなかった。

ずっと拓郎のプレーを見ていたいと誰もが思った。



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