第17話
すぐに対策を練った方が良いという里奈の言葉に拓朗や紀香達は固まった。
「そ、それは本当のことなの」
里奈達三人は呆れ顔で肯定する。
「もちろんだよ、こんな事で嘘ついてどーすんの。
だいたい奈々美達は目立ち過ぎなんだよ。先生は人違いかって言うくらい劇的に変わったし。あっ、先生、もちろんこれは良い意味で言ってるんですよ。
それから奈々美達だって人が変わったかのように可愛くなって、今じゃ男子達の憧れの的だよ。
注目されるのは当たり前のことでしょ。
そのあんた達が学年で20位以内に入れば先生の勉強会も注目されるに決まってるじゃない」
「そうだよ、女の子から見ても羨ましいくらい都会的で可愛くなってさ。
さらに成績もびっくりするくらい良くなって目立たない訳ないでしょ。
成績も学年で20位以内だけど男子から人気も20位以内には充分入ってるよ」
「それも全部先生のおかげなんでしょうけど、私達は先生と奈々美達の関係を知ったから納得できる。
だけど大勢の生徒や先生方はそんな事情は知らないから不思議に思ってるはずだよ。いや中には先生と奈々美達のことを疑ってる人もいるかも。特に女性は勘が良いからね」
三人の話を聞いて拓朗も奈々美達も声も出せないくらい動揺している。
「先生、どうしよう」
「どうしようって言われてもなぁ、お前達の成績が上がったのはお前達が頑張ったからだ。
俺は勉強方法と暗記方法を教えただけだしな。特別な事は何もしてないし」
「でも確かに私達は目立っていたかも、最近は男子達が妙にやさしいし、すごく視線を感じるようになったし」
「明日からどうしよう。どうすればいいの」
対策も何もあったものではない。
拓朗をはじめ奈々美も紀香も黙り込んで頭を抱えている。
このままでは埒があかないので里奈が考えを話した。
「先生、だから私達を勉強会に参加させてください。そうすれば先生が奈々美達だけを贔屓しているとか、先生と奈々美達のことを疑う人も少なくなると思います。先生は誰でも受け入れてくれるという印象をみんなが持つと思います」
「でもそうすると、大勢の生徒が勉強会に参加させてくれってくるんじゃないか」
「先生は明日の男子バスケ部との試合で勝って女子バスケ部の顧問になります。
先生の時間も有限ですから、奈々美達や私達は今まで通り勉強会は続けるけど、女子バスケ部の顧問になると時間的にも、先生の負荷的にもこれ以上勉強会のメンバーは増やせないと断れます」
「なるほど」
「さらに私達は東大志望ということを学園側に言えば良いと思います。
おそらく了承されると思います」
「……ふむ」
「学園が問題にするとすれば、一部の生徒を特別扱いにしてるとか贔屓してると言う事になるでしょうけど、元々この勉強会は奈々美達が考古学部に入部する条件として出してきたもので、それを先生が快く受けボランティアで始めたものですよね。
私達は奈々美達の友人として仲間に入れて貰った訳です。
それに先生は理事会にも学園にも親御さんにも許可を得てボランティアでやっています。
他の生徒のことを断ったとしても、ちゃんとした理由もありますから誰にも苦情を言われる筋合いはありません」
この意見に奈々美も紀香も賛同する。
「そ、そうよね。その通りだわ」
「先生、里奈の言うとおりにしましょう。ああ、よかったぁ」
拓朗は里奈が理路整然とこの難問の解決策を出してきた事に驚いていた。
この少女は美しいだけじゃなくとてつもなく頭が切れる。
拓朗はこの佐々木里奈と言う少女に心が惹かれていくのを感じていた。
「うん、分かった。佐々木の言うとおりにするのが一番良さそうだ。
佐々木達にも勉強会のメンバーになって貰おう。みんな良いな。
佐々木、松本、金森、君達を歓迎する。これから宜しく頼む」
「「「はい、こちらこそよろしくお願いします」」」
里奈、裕子、詩織の三人は心から嬉しそうに笑顔で答えた。
里奈は思っていた。
―――やったぁ、これで第一歩は踏み出せた。それに秘密も共有したし、ここまで入り込んでしまえば目標のハーレム入りまで後一歩といったところね。あとは先生と既成事実さえ作ってしまえばいいのよね。
そして最後に先生に私を選んで貰えば完璧なんだけど。
純とリサも納得したようだ。
「まあ、しょうがないね」
「これからもよろしくね。里奈ありがと。今回は助かったよ」
「ううん、私も勉強会に参加できることになって嬉しいし、これからは仲間だね」
”これからは仲間だね”と言う里奈に対し奈々美は警戒心を高めた。
―――仲間か。里奈はこれから本格的に先生の攻略にかかるはず。
仲間でもあるけど、最大のライバルになるかもしれない。
秘密も共有し共犯者ともいえる里奈が先生に手を出すのを止める手立ては無い。
あの里奈のことだから、あの手この手で容赦なく先生に迫るはず。
先生も里奈の事を気に入ってるみたいだから時間の問題だろう。
こうなったら里奈達とも協定を結んだ方が良いかも知れない。
もう先生とは離れられないし、私が選ばれないで捨てられるくらいなら死んだ方がマシ。
私の物にならないなら先生には誰も選ばないで居て欲しい。
大学生になってもずっとずっとこのまま皆で先生を共有していきたい。
何時になるか分からないけど、私が先生から離れられるようになるまで。
そんな時がくるかどうかさえわからないけど。
「とにかく対策も取れたしツイスターゲームをやろうよ」
と純が言い出した。
不安も解消し安心したのか表情も明るい。
「先生にお願い出来るチャンスなんてそうそう無いんだし」
―――そんな事ないだろう。
いつも無茶なことさせられているじゃないか
だいたい昨夜だって四人を相手に体力の限界まで頑張ったんだぞ
と拓朗は思ったが口には出さなかった。
奈々美は里奈達と話すため拓朗に席を外して欲しかった。
「そうね、じゃあ、私達は願い事を考えますから先生はお風呂にでも入ってください。
ちょっと汗臭いですし」
拓朗はくんくんと自分の腕に匂いを嗅いだ。
「うん?そうか。分かった。だがあまり無茶なこと書くなよ。学生らしい願い事なら歓迎だけどな」
と言って拓朗がリサに案内されて浴室に向かうと、奈々美は里奈に向かって言った。
「里奈、今回の事は感謝するわ。だけどあなたたちの本当の目的は勉強会に参加することじゃないわよね」
「えーっと、いや、それは……」
「惚けなくてもいいわよ。先生を狙っているんでしょ。
先生も私達もあなたたちには弱みを握られているんだし、はっきり言ってくれていいのよ」
奈々美は里奈達がここまで協力してくれているのは親切心だけじゃない事は分かっていた。
出来れば先生には手を出して欲しくは無い。
だけど自分の事を思えば里奈達の気持ちも分かる。
だから確認したい、これから協力体制を築いていけるのかを。
バスケ部時代は里奈達は信頼できる仲間だった。
だが今回は男がらみだ。
女は好きな男のためなら簡単に女の友情など裏切るかもしれない。
今だって紀香や純、リサと仲良く先生を共有していること自体が奇跡のようなことなのだ。
本音を言えば私もそうだが、先生を独り占めしたいとみんな思っているはずだ。
だがそれが出来ないからみんなと仲良くするしかないんだ。
真剣な表情の奈々美に里奈はごまかしは効かないと判断した。
「わかったわ。勉強会に参加して成績を上げたいのもあるけど、もちろん先生が目的よ。
先生があなた達四人を恋人にしていると聞いて驚いたけど、同時に自分たちも仲間にしてもらえれば先生に恋人として扱って貰えると思って嬉しかった。私は先生とならやっても後悔なんかしない。
いや…どうしても初めては先生がいい」
「私も里奈と同じ気持」
「私も」
と詩織と裕子も頷く。
リサも戻ってきていて里奈の話を聞いていた。
「そう、やっぱりね」
奈々美は里奈に確認しなければならなかった。
「里奈、先生はあなた達が関係を迫れば、わたし達との事もあるから先生は断れないと思う。
でもね、先生はわたし達との関係でもずいぶん苦しんだんだよ。
わたし達はそれが良く分かっているから固く決心していることがあるの」
「……奈々美の言ってる事は良く分かってるつもり、私も同じ気持よ。
たとえ自分を犠牲にしてでも先生を守るってことでしょう」
「分かってるならいいわ。じゃあ、新しく協定を結びましょう」
紀香は『新しく』と聞いて疑問に思った。
「ねえ、奈々美、新しく協定を結ぶってどういうこと」
「うん、最初はさ、『先生には卒業する時に一人だけ選んで』ってお願いしたじゃない。
でもさ、それって…もう無理でしょ。選ばれなかったらどうするの」
「……うん…どうしよう」
「ねっ、リサも純も、『もし自分が選ばれなかったら』って考えたことない?」
「……寝る前に良く考えるよ、選ばれなかったら死のうとか」
「そうね、少なくとも先生に選ばれた人を憎んでしまうと思う…」
「私もそう、だから先生には選んで欲しくないし、たぶん先生には誰か一人を選ぶなんて出来ないと思う」
「先生が誰も選ばないでわたし達と別れるってこと……そんなの…やだっ、私は…」
「えーっと、そうじゃなくて…大学生になっても先生と付き合って行こうと思うの」
「ああっ、そっか、そうだよね。そんなに結論を急ぐ事無いって思うよねぇ」
「うん、だから私たちが卒業しても、先生にはこのままの関係を続けて貰おうよ」
奈々美の話で”新しく協定を結ぶ”ことになった里奈達は對馬ハーレムのメンバーとして認められたようだ。
細かい約定を確認しあって7人の女子高生は固く手を結んだ。
奈々美たちはこれで先生との秘密は守られるし、大学生になっても拓朗との関係は継続できると安心し、里奈も詩織と裕子も純粋に對馬先生のハーレム入りを喜んだ。
だが里奈には自信があった。
―――先生は私のものよ。先生が私を見る目はみんなとは違う。
それは一年の時に最初に会った時から思っていた。
懐かしがるような、憧れみたいなものなのか解らないけど、先生が私を見る目は他の子とは違う目だったことは確かだ。
あの時はまさか先生が私の憧れの神城高校の對馬選手とは気づかずにいたけど本当に迂闊だった。
あの時気付いていたら今頃は……
今さら悔やんでも仕方がない。でもこれからは悔いの無いようにしないといけない。
取り合えずは奈々美たちと肩を並べるくらいに先生との関係を深めないとね。
ああ、でも私の初めてを先生にあげられるだけども嬉しくって泣きそう―――
詩織がハタと気づいたように言った。
「あの…これから問題になるのは亜里沙先生だと思うよ」
「そうね、でも先生は亜里沙先生の事は何とも思っていないみたい」
「そうなの?でもこの間はご飯に誘ってたじゃない」
「そうね、亜里沙先生は見た目だけは良いからね。中身は最悪だけど…」
紀香は額に皴を寄せる。
それを見て里奈は同意するようにうなずく。
「そうね、それに亜里沙先生は對馬先生とあなたたちの関係を疑っていたみたい」
「ええーっ、そうなの?」
「うん、亜里沙先生の態度を見れば、誰が見たってそう思うわよ。
今日、『昨夜は私たちも先生の勉強会に参加させて貰いました』って言ったらほっとしたような顔をしてたし。
でもね、菜々美たちも気を付けないと勘のいい人には気付かれちゃうわよ」
「そうそう、校内ではあまり先生にベタベタしちゃ駄目よ。他にも疑ってる人がいるかもね。
それでなくても先生もあんたたちも目立ってるんだし」
「……うん、みんな、気を付けよう」
全員が頷く中、里奈が聞いてくる。
「ねえ、菜々美、紀香、リサ、純、あんたたちバスケ部に戻る気ある?」
「ある訳ないでしょ」
「絶対に嫌よ」
「やっぱりね。亜里沙先生がいる限りバスケ部には戻ってこないわよね」
「決まってるでしょ。あんなこと言われて……」
菜々美と紀香の顔が強張り怒りを露にする。
「だけど、あんたたち、成績も良くなって見返したじゃない、それにバスケでも見返したし。
今日練習試合が終わったとき亜里沙先生は真っ青な顔で呆然としてたわよ。
まあ、私たちもだけどさ」
詩織と裕子もうなずく。
「うん、びっくりした。なんであんなに上手くなってるの。ありえないよ」
菜々美たちの顔が綻ぶ。
「えへへ、実は亜里沙先生を見てざまぁとか思ったんだよね。えへへ」
「ねぇ、おもしろかったよね」
「ねえ菜々美、バスケ部辞めてからも、どこかで先生と練習してたの」
「別に、練習なんてしてないよ、やっと私たちも才能が開花したんだよ、なんてね。
実は自分でも驚いてるんだ。昨日は最初ドリブルも上手くいかなくてさ、あはは」
里奈はやっぱり對馬先生はすごいと改めて思った。
「じゃあ、紀香も菜々美も亜里沙先生がバスケ部を辞めたら部に戻ってくれるの。
亜里沙先生が辞めて對馬先生に代わったら、いっしょにバスケをやってくれる?」
「えっ、そりゃあ…まあ」
「もし、そうなったらね。やっぱバスケは楽しいし」
「そう、じゃあ、明日の試合が終わったら亜里沙先生にはバスケ部の顧問を辞めてもらおう。
そしたらみんなバスケ部に帰ってきてくれるよね」
この里奈の発言には全員がびっくりした。
「ええっ、まさか…わざと負ける気なの」
「里奈、本気?」
里奈は呆れ顔で言い放った。
「負ける気なんて無い、っていうか負けるわけ無いわよ。
今日私達は對馬先生と試合をしたけど、先生の動きは見えなかった。
紀香達も先生を相手にやってみれば解かるわよ。先生の動きは捉えられない。全部抜かれた。
私は男子バスケ部の実力をある程度知ってるけど、まず先生を止めることなど出来っこないと思う。
それに今日の先生はあれでも全力を出していないと思う。余裕があり過ぎだよ。
まあ、相手が女子だからかも知れないけど、少なくとも私達は全力で相手をして貰えなかったことは確かだよ」
「何でそう思ったの」
「そりゃ分かるよ。先生はシュートチャンスは嫌ってほどあったけど、ほとんど打たずにパスしてた。
ディフェンスを引き付けてあんた達の動きを見てたんだよ。
ディフェンスだって先生はセンターだったから動かないで、ほとんどはあんた達が動いてたでしょ。
先生は私たちの動きも見てたんだと思う。
先生が本気なら私たちのシュートなんか全部ブロックされてたよ。
先生がその気になれば私達はかるくダブルスコア以上で負けてたと思うよ」
「……なるほどね、そういえば第2クオーターでは先生は得点してなかったしね」
「第1クオーターでもシュートしてたのは最初の5分くらいだよ」
「そっか、でもそれならどうやって亜里沙先生を辞めさせられるのさ」
里奈は全く似合っていない悪人顔でニヤリと笑う。
「明日は教頭先生をはじめほとんどの先生方が見に来ると思うんだ。
それで試合が終わったら私が……」
里奈の話を全員が真剣に聞いていた。
そして納得していた。
「うん、それなら亜里沙先生も辞めると思う。いや学園も辞めるんじゃないかな」
「ちょっと酷いとは思うけど、あの人はそれなりの事をして来たんだし、しょうがないか」
「うん、あの人が辞めれば菜々美達だけじゃなく和葉達も戻ってくるかもしれない」
「そうね、對馬先生が顧問になるなら間違いなく戻ってくると思う」
ここで言う和葉達と言うのは、里奈と菜々美の中学の同級生で一緒にバスケをやってきた仲間である。
だか一年の時、亜里沙のやり方に反発し、亜里沙と衝突し部を辞めて行った人たちである。
「じゃあ、明日の昼休みにバスケ部員を集めて話しておこうよ」
「それなら考古学部の部室を使ってもいいよ。私たちは先生と屋上でお昼を食べるから」
そこに拓郎が風呂からあがってきた。
「ああ、いい湯だった。みんなも入ったらどうだ」
「そうですね、じゃあ、ツイスターゲームをやる前に交代で入ります」
なぜかリサと純が素直に答える。
リサはスチュワーデスのコスプレだったが、これでは里奈や紀香と比べてあまいと考えていた。
拓郎からの視線がほとんどない事を気にしていたのだ
―――ふふふ、この際、お風呂に入ってからベビードールに着替えよう。まだ見せてないもんね。
ショーツも先生が選んだアレに替えて、そうオープンクロッチ+パール、ふふふふ
純もやはり考えていた。
―――うーん、このバニーガールのコスプレは先生にいまいち受けてないみたい。
よし、この際、ベビードールに着替えよう。今度こそ先生を、ふふふ
先に風呂に入ったのは菜々美、里奈、詩織、裕子だ。
次に紀香、リサ、純が入った。
だが純とリサはベビードールに着替えていた。
「お、おい、相沢、篠崎お前ら、そ、その格好は」
「リサ、純、あんた達いったい何やってんのよ」
「えっ、いや、動きやすい服に着替えただけだけど」
「うん、スチュワーデスの服じゃ動きづらくて」
「純は大丈夫でしょ。バニーガールなんだから」
「いや、そうでもないんだよ。ちょっとサイズが小さくて」
だが詩織と裕子は納得しない。
「そんな服、恥ずかしくないの。だいたい……先生だっているのに」
「胸が丸見えじゃないの。いくらなんでもハレンチだよ」
「丸見えじゃないよ。ちゃんと着てるじゃない。ちょっと透けてるけど」
「別に恥ずかしくないよ。先生と女の子しかいないんだし、ぜんぜん平気よ」
と二人とも着替える気は無い様だ。
何もかも里奈たちには話してあるし、もう二人は遠慮する気は無い。
「おまえたち、その格好でツイスターやる気か」
「もちろんだよ先生、絶対勝たせてもらうからね」
「……勝った時の願い事とか、未だ聞いてないんだが」
菜々美たちは苦笑いだ。
「あはは、もういいよ先生、どうせ私たちのお願いは先生に却下されちゃうし」
里奈たちは嬉しそうだ。
「私たちのお願いはもう叶いました。勉強会への参加は許可してもらいましたし」
「うん、そうか、そうだったな」
里奈の柔らかい笑顔に拓郎も笑顔で応える。
だがその直後、里奈から出た言葉が衝撃だった。
「はい、それになにより先生のハーレムに入ることもみんなに許してもらえましたから」
里奈はここで巨大な爆弾を投下した。
拓郎の思考は停止し困惑した表情で固まった。
「………………………………」
里奈はにこにこしながら拓郎を見つめている。
詩織と裕子は緊張した面持ちだ。
菜々美たちは困惑した表情で拓郎から目を逸らしている。
先生、ごめんなさいって思っているのだろう。
「……ハーレムって……」
拓郎が呆然とつぶやくのを聞いた里奈は理路整然と言い放った。
「はい、先生、一人の男性に対して複数の愛人女性がいる状況を指してハーレムって言うんですよ。
まさに、今、先生を中心に4人の女子高生が恋人というか愛人関係にある、この状態がそうですよね。
その中に私達3人も入れて貰いたいと言う事です。すでに菜々美たちには許可を得ています」
拓郎は思考が追い付けない中、何とか言葉を繕った。
「佐々木、君は……」
「先生、私も詩織も裕子も中途半端な気持ちじゃないんです。私たちにとって先生は理想の男性であり憧れの存在であり、誰にも負けないくらい強い気持で先生の事を想っています。
決して一時の気の迷いなんかじゃありません。私たちの気持ちを受け取ってください」
里奈の真剣な目を見て拓郎は拒否できないことを悟った。
だが今でも、教え子である4人の女子高生相手でも拓郎自身、振り回され手に負えない気がしているのだ。
もちろん毎日が楽しいし、嬉しい気持ちもあるが危機感も感じている。
誰かにバレたら即破滅という命綱なしの綱渡りをしているような状態なのだ。
その上さらに3人の教え子とそんな関係になるなんて考えられないが拒否も出来ない。
この際、紀香や菜々美たちとも関係を断ち切るべきなのだろうが難しい。
なにより拓郎自身菜々美達4人を愛しく思っているし、里奈に対してもすでに特別な感情を持ちつつある。
本来、こんな事は絶対に許されることではない。いったいどうすればいいのだろう。
「少し考えさせてくれ。すまないが今日はこれで帰らせてくれ」
「先生っ」
「先生ってば」
菜々美や純が呼び止めるが、拓郎は無言でリサの家を出た。
明日も更新します。
いよいよ男子バスケ部との試合が始まります。




