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第10話

ブラジルワールドカップのおかげで執筆があまり進みません。

やっと一話書き上げましたので更新します。

次回は三日後くらいでしょうか

「いいか、レッグスルーはボールを自分の懐に入れるように意識して、足の間を通すとスムーズに出来る様になるから。左右どちらからでもやれるように頑張れ」


拓朗の指導を受け奈々美たちは、見る見るうちに上達して行った。

拓朗もどんどん吸収していく彼女らに教えるのが楽しくて時間を忘れてしまうほどだった。


亜理紗やバスケ部員達は奈々美たちが目を見張るほど上達していくのを見て驚いていた。

特に亜理紗には信じられなかった。

――う、嘘でしょう、さっきまではドリブルもぎこちなかったのに、なんであんなに上手くなってるの。

いくら對馬先生の指導が良くても、わずかの時間であんなに上達するなんてありえないわ。


里奈も思っていた。

――すごいっ、對馬先生の指導は半端じゃない。

紀香や奈々美があんなに速く動けるようになるなんて、それにすごくスムーズにボールコントールが出来てる。

ああ、對馬先生がコーチになってくれたら、全国制覇だって夢じゃない


その時、亜理紗の時計のアラームが鳴った。

「あっ、みんな休憩よ。水分補給して」

部員たちが疲れたように歩いて自分のバッグに向かう。

だが、奈々美たちは練習が楽しいのが休憩を取ろうとしないでスピンムーブからのドライブに入る練習をしている。

拓朗が休憩を告げると四人とも走って自分のバッグからタオルと飲み物を持って来た。

拓朗のタオルはリサが用意していた。

五人で和気藹々と楽しそうに談笑しているのをアリサは見ていた。


――なんてこと、あの子達、一時間以上ドリブルからディフェンスを抜く練習を続けていたのに、なんであんなに元気なのよ。あんなにスタミナがあったなんて思わなかった。

あの様子では試合では最初から最後までコートに残っても大丈夫じゃないかしら。


その後は奈々美たち四人は拓朗からシュートを教えて貰っていた。

「いいか、お前たちは身長が低いからポイントガードが向いていると思う。

だからドリブルで相手を翻弄しろ。そしてシュートはフローターシュートがいいと思う」


「フローターシュートですか」


「ああ、ちょっとやって見せるから」


拓朗はジャンプシュートのようにジャンプして利き手のだけでふわりとボールを投げた。


「これはフックシュートのように見えるけどフローターシュートだ。これなら身長差がある相手のブロックの外からふわっとシュートをする事が出来る。手首と指を上手く使って柔らかくやるのがコツだ。これを高速でできるように練習しよう」


やがてコツを掴んだのか奈々美たちはシュートが入るようになった。


「じゃあ、おれがディフェンスになってやるから一人づつどんどんシュートを打て」


奈々美たちは少しづつフローターシュートをものにして行った。

彼女達はシュート成功率が3割を越えた頃には練習が楽しくて時間を忘れていた。


奈々美たち見違えたように上達して行った。


「ドロップステップはディフェンスを背負った場合の有効な武器になる。そのままフックシュートにいけ」

「ディフェンスにジャンプシュートを意識させスクープシュート打つ事で幅が広がるんだ。思い切って行け」

「もっとジャブステップの切れを良くしてドライブに入れ」


紀香たちは頭の回転も鋭くなっていた。

拓朗の教えの先まで考えて動くようになった。

今まで練習してきたテクニックを応用して様々な動きを見せる。

そのスムーズなボール捌きは練習を始めた時とは別人の動きだ。


「よし、これならなんとか通用するはずだ。今日はもう良いだろう。みんなあがるぞ」


拓朗がそうつぶやいた時には夕方の4時を回っていた。

四人はすぐにタオルと飲み物を用意して休憩に入る。


久しぶりのバスケで思うように動けるのが楽しくて奈々美はもっと練習をしたくなった。

「先生、休憩してからもう少しやりたいなぁって思うんですけど」


「だけどいいのか、買い物したいんじゃないのか」


「もちろん、それは今日行くけど、先生、今日は私達いっぱい時間があるの」


「うん?どういうことだ。時間があるって」


リサが神妙な顔で話し出す。

「今朝、お母さんから言われたんだけど、お父さんとお母さんが…」


どうやらリサの父親は婿養子で実家が新潟で農家をやってるらしいが跡継ぎがいない。

そして実家の両親はいよいよ年齢的に来年からは農業は無理だと言う事になって、リサの両親は新潟に相談に行ったらしい。理沙の兄は有名商社のドイツ支社で働いていて家にはいない。

さらにリサの家には家政婦が二人来ているのだが土日はお休みでいない。

と、説明すると何か思い出したのかリサはバッグから携帯を取り出しどこかに電話をかけはじめた。


「だから、今日と明日はみんなでリサの家でお泊まり会なんだ」


「あんなに広い家に一人でいるなんて無理だよね。絶対怖いよ。リサが可哀想だよ」


「そうだっ、先生もリサのお家に泊まって貰おう。楽しい夜になりそうだよ、うん」


「えっ」

拓朗は自分の耳を疑った。


「だからさ、先生もリサの家に泊まってよ。お風呂も綺麗だしすっごく広いんだよ」


拓朗は即答した。

「無理に決まってるだろ。よりによって親がいないときに上がり込むなんて」


「なによ、先生。私達のメイド姿を見たくないの」


「先生っ、何時も言っている通り先生には拒否権は無いんです。

私達のお願いを先生は断れないの」


奈々美と純は引くつもりは無さそうだ。


「いや、拒否権は無いってひどくね。それに今回は無理だ。生徒の家に泊まりこむなんて。今回だけは拒否権を発動する」


そこにどこかに携帯で電話していたリサが拓朗に携帯を突き出してきた。

「先生、お母さんが話したいって」


「えっ、俺に」

「うん、お母さんが先生にお礼を言いたいって」


仕方なく携帯を受け取る拓朗。


『もしもし、對馬ですが』


『あっ、對馬先生ですか、篠崎リサの母です。いつも娘がお世話様でございます』


『あっ、いや、こちらこそ、昨日は有難う御座いました』

昨夜、リサは母親から家政婦さんが作ったローストビーフを土産に持たされ拓朗の部屋にやって来た。


『まあ、あんなもので宜しければいつでも娘に持たせますのでお気になさらないでください。

それより今日と明日は勉強会でまた先生にお世話になるそうで本当に有難う御座います。

確かに私達も山咲さんや藤井さんが一緒に泊まってくれるとは言え、女の子四人ではちょっと不安だったのですが、先生も一緒に家に泊まってくれると娘に聞きまして、主人共々安心いたしました。

先生にもご都合もあったかと思いますが、今回はよろしくお願いします』


『あっ、いや、その…』


『それで御夕飯のことですが、今日と明日は家政婦のフミさんとシノさんがお休みなものですから、失礼ながら近くのお寿司屋さんに出前を頼んであります。先生のおかげで娘も信じられないくらい成績が良くなりました。今後ともどうかよろしくお願いします』


『はぁ、あの…分かりました』


断りきれず失礼しますと電話を切った後、はあぁとため息をつき、リサに携帯を返す拓朗。

リサを初め四人は満面の笑みだ。


「先生、これで私達のメイドコスを堪能できるね。やったね」


「ねえねぇ、明日もあるんだから、他にコスプレ衣装も買って来ようよ。ミニスカポリスとかどうかな」


「そうねぇ、ピンクのミニスカナースがいいかな。ねっ、せんせ、診察してって感じで」

そう言って恥ずかしそうに両手で胸を隠すような仕草で上目使いで拓朗を見る奈々美。


その奈々美をみて拓朗は決心した。

――よし、俺としてはミニスカナースを希望しよう


「今日と明日は夜遅くまで”お勉強”できるし、初めて先生と朝を迎えられるよ。うれしい」


「うちのお風呂はけっこう大きいから、お風呂でも”お勉強”できるよ。

先生、5人いっしょでも入れちゃうし嬉しいでしょ。あっ、りポD買っておくね」


紀香はこれからの極めて楽しい時間を考えて、練習どころではなくなってしまった。

「やっぱり今日はこれで練習は終わりにしようよ。すぐ秋葉に行こ」


拓朗も内心はけっこう嬉しかったりするのだが顔に出さずに言った。


「うん、そうだな、やれやれ、じゃあ、山口先生に挨拶して帰ろう」


亜理紗はニコニコと嬉しそうに歩いてくる紀香達を見て思った。

――彼女達ずいぶんご機嫌ね。久しぶりのバスケがそんなに楽しかったのかしら。

それにしても彼女達はずいぶん運動神経が良かったのね。

学業の方も相当頑張っているみたいだし、なにか集中力もすごいしスタミナもある。

でも夏休みの間に急に良くなったとしか思えない。

それに急に雰囲気が大人になったっていうか、余裕すら感じる。

髪の毛も肌も艶々して女っぽくなった。

なんとなく腰周りが充実してきてスタイルも以前より良くなっている気がする。

里奈の言うように別人のように綺麗になった。

ヘアスタイルだけの所為じゃないだろう。

對馬先生の存在が彼女達を変えたんだろうけど、そんなに急に変われるものなんだろうか。

ひょっとして彼女達と對馬先生は………まさかね。

でもあの気兼ねなく付き合っている恋人同士のような雰囲気は……

でも四人共恋人になるわけ無いし、考えすぎか。


「山口先生、今日はこれであがります。明日も午後1時頃来ます」

と、拓朗が言うと亜理紗は頷くしかなかった。

あれだけ内容の濃い練習をされては文句のいいようが無い。

だが、拓朗も紀香達もあまり疲れているようには見えなかった。


拓朗も引き上げると聞いた里奈がたまらず拓朗に話しかける。

「對馬先生も帰られるのですか、えーと、私達の練習も見てもらえないでしょうか」


すかさず奈々美が立ち塞がる。

「駄目よ、先生は考古学部の顧問なの。バスケ部のコーチじゃないんだから」


拓朗も申し訳なさそうに話す。

「ああ、すまないが今日はこれから山咲達と約束があるんだ。これで帰ろうと思う」


亜理紗はつい聞いてしまう。

「約束って何ですか」


「えっ」


まさか女子高生四人を連れて秋葉にメイド服やナース服を買いに行くとは間違っても言えない。

拓朗は気まずそうに俯いてしまい言葉が出ない。


その様子を見て亜理紗もバスケ部員達も思った。

――あやしい。


「對馬先生、その約束って今日じゃないと駄目なんですか」

「その約束は練習より大事な事なんですか」

次々とバスケ部員達から質問が出る。


ここで拓朗に代わり奈々美が前に出た。

「あのねぇ、私達は今日十分に練習したし、先生も今日はもう良いだろうと言ってくれたの。それに私達の約束の事はあなたたちにはまったく関係の無い事。

聞く必要は無いでしょ」


黙り込む部員達、だが亜理紗はどんな約束なのかを聞きたかった。

拓朗は以前と変わらぬ、いやそれ以上のパフォーマンスを見せてくれた。

月曜日の試合は問題なく勝てるだろう。

それにあの指導力もすばらしい。

練習では集中力を途切れさせること無く指導し、休憩時には完全にリラックスさせていた。


だが亜理紗は5年間も拓朗を思い続けていたのだ。

あの藤井さん達四人と對馬先生はあまりにも仲が良すぎる。

まるで気兼ねなく付き合っている恋人同士のような柔らかな空気が流れているようだ。

教師と生徒の関係を疑うなんてしたくはないが、拓朗の事となると亜理紗は冷静でいられない。


「對馬先生、男性教師と女生徒がプライベートで親しくするのは誤解を招く事になります。

今日の練習を見まして先生と山咲さん達は余りにも親しくて、教師と生徒の関係を超えているように見えました。私もこの学園の教師として對馬先生に尋ねたいと思います。

今日はこれから藤井さん達とどんな約束をされているのですか」


非常に厳しい顔で亜理紗は拓朗に聞くのだった。

まるで浮気した恋人を問い詰めるように。


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