プロローグ
2作目です。
拙い文章ですが、長い目で見てやってください。
何時からだろう
僕の周りにきらきらした何かが集まるようになったのは
何時だったかな
そのきらきらした何かが集まって小さな動物の姿に変わったのは
その小さな動物は僕に言ったんだ
たしかに言ったんだ
ミーアキャットみたいに後ろ足で立って
僕の目を見て
―――ねぇ 名前付けてよ って
僕はお母さんを呼んで、この子を飼いたいって言ったんだけど、お母さんにはこの子が見えなかった。
それから僕は動物図鑑で調べたんだ
テンというイタチ科の幼生、つまり白テンの子供じゃないかって
だって真っ白ですごく綺麗だったんだ
僕は名前を考えた
風っていう字が頭に浮かんだんだ
―――じゃあ、風太でどうだろ
―――いやだよ、そんな男の子みたいな名前
―――男の子じゃなかったの
―――僕は女の子になりたい たくろうが僕を女の子だと思ってくれれば 僕は女の子になる
―――ふーん じゃあ 風子でいい?
―――フーコ 良い名前 フーコ 僕の名前はフーコ
フーコのごはんをどうしようと思った僕は
―――フーコ おなかすいただろ ごはんはどうすればいいの
―――たくろう 僕はたくろうに名前をつけてもらって たくろうの眷属になったから ごはんは食べなくてもだいじょうぶ
―――ごはん食べないと死んじゃうよ
―――僕の姿はたくろう以外は見えないし 触れるのもたくろうだけ たくろうが大きくなれば僕も大きくなる でもたくろうが僕を忘れたとき 僕は死んでしまう だから僕を忘れないで
―――うん、いつもいっしょにいよう
―――たくろうといっしょにいれば 僕はいつか風神になれる
―――ふうじんってなに
―――いつか分かる ずっとたくろうをまもる神さま
そして僕は お父さん お母さんがいてもいつもフーコと一緒だった。
フーコは僕以外は誰にも見えない
僕は2ヶ月前からお母さんと、この山奥の大きな病院の施設にいる。
僕はなにか難しい名前の病気なんだって
苦しくて何度も死んじゃうのかなぁって思うことがあったけど
ここに来てから2回しか苦しい思いはしていない
フーコといっしょにいるようになってからは一度も無い
フーコはいつも僕の首に纏わりついている。
僕が寝てるときは胸の上で寝ている。
フーコはふわふわで少しも重くない。
フーコと一緒に居るようになって一ヶ月位した頃
僕はおうちに帰れることになった
お母さんは泣いて、そして笑っていた
「拓ちゃん、昨日の検査でわかったんだけど、拓ちゃんのリンパは正常な状態になってるって
拓ちゃん、喘息の発作も出ないし退院できるようになったのよ」
フーコが風の幕で僕の呼吸を楽にしてくれてた
それにばい菌が入らないようにしてくれてたんだ
それから僕はおうちに帰ってきた
もちろんフーコもいっしょに
それからしばらくして、お父さんとお母さんに高い山の一番上にあるおおきな湖に連れて来てもらった
すごく綺麗な水で森に囲まれた湖
その湖畔の小さなコテージに泊まった
夜中にフーコに起こされて窓から外を見ると湖面にフーコのときと同じ小さなキラキラが集まっていた
お父さんとお母さんは寝ている
キラキラした何かはいきなり窓を通り抜けて、お部屋の中にいる僕の隣に透明な女の子の姿で立っていた
―――ねぇ お名前を付けてくださいな
―――えっ 君も名前がほしいの
―――今 生まれたばかりですもの
女の子は僕と同じくらいの年だと思うけど生まれたばかりだって言った
透明だけどきれいな子だってわかる
すごく長い髪の毛も透明だ
僕の頭に水という文字が浮かんだ
―――水子は絶対にいや
何で僕の考えていることがわかるんだろう
―――じゃあ 透きとおってるから 透子っていうのはどう
―――トーコ わたしはトーコ
トーコはうれしそうに微笑むと僕の手をとった
そしてすっと僕の中に入ってしまった
僕はびっくりして
―――トーコッ
トーコを呼ぶと僕の手のひらから顔だけ出して言ったんだ
―――驚かなくていいのですよ わたしはあなたの中にいるのが一番居こごちが良いんです
―――なんで僕の中に居るのさ
―――たくろうさん 人は半分以上が水でできてるのですよ
それから僕は体調の悪いときが無くなった
だいたいごはんのあと気持ちが悪くなるんだけど
いままであれるぎーという病気で食べられないものが多かったんだ
でも何でも食べられるようになった
それから疲れなくなったんだ
お父さんとお母さんは喜んでくれた
そしていままで行ってなかった小学校に行くことになったんだ
今まではお母さんが勉強を教えてくれてたけど3年生から学校に行ける
フーコも僕が元気になってから女の子のすがたにもなれるようになった
真っ白な髪で真っ白な身体で背も僕と同じくらいですごくかわいい
―――たくろうが好きそうな姿になってみた
だ そうだ
トーコも透明から普通に肌色になってきた
だけど髪の毛が水色なんだ
―――たくろうさんがもっと大きくなれば私たちも成長します 楽しみにしててくださいね
ウン タノシミダヨ
お風呂に入るときはトーコも僕から出てくる
そして3人ではいるんだけど そのときが一番恥ずかしい
学校は楽しかった
フーコはテンの姿で僕の首にいて トーコは僕の中に居る
ふたりは僕にしか見えない
先生が教えてくれることは なぜがすんなり頭にはいってくる
何より楽しいのは体育だ
僕の中のトーコがすごいんだろう
かけっこでは僕が一番早い
6年生より早いって先生がほめてくれた
僕が走るときは 僕だけいつも追い風だ
フーコのせいだろう
プールでは先生が僕に水泳の選手になれと言っていた
でも僕はテレビでやってるバスケットのアニメに夢中になった
あのルカワみたいなバスケットボールの選手になりたいって思っていたんだ
だけどなぜか女の子の友達ができない
なんとなく避けられている気がする
―――たくろうには男の子の友達が多い たくろうには女の子はいらない
―――たくろうさん 女の子はみんな飢えた野獣みたいなものです あぶないのです 近寄ったら食べられてしまいますよ
とフーコとトーコが言うんだからそうなんだろう
僕もなるべく近寄らないようにしよう
中学に入ってすぐ僕に精通がきた
僕はすごく恥ずかしかったけど なぜかフーコとトーコは大喜びだった
ふたりともぼくと同じように成長してたからお風呂に入ったときなんか大変だった
絶対に人には言えないようなことを二人にはお風呂でして貰っていた
二人ともものすごく楽しそうだった
―――これはたくろうのためなんだよ いいかい僕たちもしかたなくやってるんだ わかってるよね
―――たくろうさん ほかの人にはさせてはいけませんよ ないしょですよ
モチロンワカッテルヨ
中学と高校は充実した毎日だった
高校は男子校を選択した
フーコとトーコのお陰でバスケットでは結果を出せた。
全国レベルで有名になった
僕がもうすぐ大学という時 フーコとトーコは精霊界というところに呼び出された
妖精から精霊になれたんだって
―――たぶん2~3年はこっちには戻してもらえない たくろうが心配
―――たくろうさん 私たちが居ない間は目立たないようにしててくださいね
目を悪くしておきますからめがねを掛けてください。
―――たくろう 髪の毛は伸びたら自分で切るんだよ 他人に切らせちゃだめだよ いいね
―――たくろうさん こっちに帰ってきたらすぐにたくろうさんのところに行きますから いい子にしててくださいね そのとき目は治して上げます 女の子は近づけちゃだめですよ
次の日の朝 二人は居なかった
僕は太陽がまぶしかった
そして大学ではバスケットはやらず 考古学にのめり込んでいった。
そして大学を卒業して高校教師になった。
二人はまだ帰ってこない