二人だけの秘密Ⅱ
七年前のあの日の流れ星は、夜空に蒼い軌跡を残した。
星が消えてしまった辺りから僕はしばらく視線が外せなかった。そこに大切な言葉が隠されているかのように思えた。けれども大切な言葉は、いくら探してみても、ついに見つからなかった。
僕は、すぐ横に座る遼子に視線を向けた。二人の目と目が合った。遼子も僕とほとんど同じ動作をしていたようで、それがお互いわかったものだから、僕たちはどちらからともなく微笑みあった。微笑みは絡まりあい絡まりあい、星空に昇って溶け込んだ。
まだ春浅い海辺の丘は、冷たい潮風を僕たちのところまで届け続けていた。
その次の日、僕は東京の大学に進学するために故郷を後にした。遼子は地元の短大に進むことになっていたから、僕たちはその日を境に離れ離れになった。
七年なんて、あっと言う間だった。大学を出て、仕事にも慣れた。今、故郷に向う列車に揺られながら、遼子は星からの大切な言葉をあの日みつけていたのだろうかと考えた。僕のポケットの中に忍ばせたこの小箱は遼子にどのように映るのだろうか。
小箱には流星をあしらったブルーダイヤの指輪が秘密の言葉を詰め込んでそのときを待っている。