練習ノート
時計
黒く細い、何の光沢もない無機質な腕が「10」に触れようとしている。
ただ、どこにいるのか、それを伝えるためだけに生きている。
そのものだけを見てしまえば、無骨でぱっとしない。
しかし、私はかの者のおかげで生活が成り立っている。
今に生きる私は君たちがいないと「社会」なるものに消されてしまうのだ。
ああ、なくてはならぬ存在なのだよ。
ただ、ときどき、私は君を見たくないときがある。
時を伝えてくれるきみから解放されたいと思うときがある。
すまない、とんだ戯れ言だ。きみの見つめる眼差しから逃れることは出来ないとわかっている。
役に立たない装飾で己を着飾るよりも、ずっと頼もしい、君は。