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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第98話

「すいません。ここで止めてください」


「ジーク、待ちなさい。まだ、距離がありますよ」


「良いんですよ。と言うか、被害を増やしたくないですしね。こんな良い馬車が粉々になるのをみたくないし」


ジークの言葉で馬車は止まり、ジークは馬車から飛び降りる。


「確かにね……弁償とか言われても困るし」


「そ、そうですね」


「わかりました」


ノエルとフィーナはアーカスの罠を体験しているためか、ジークの後に続いて馬車を降り、アズは従者に指示を出す。


「今更だけど、領主様も行くつもりなんですか?」


「当然です。私が直接、説明をします」


3人に遅れてアズが馬車を降りる姿にジークは苦笑いを浮かべる。しかし、アズは彼女の責任感からか直接、アーカスを尋ねると答える。


「……よせば良いのに」


「何事も経験と言いますし……そ、それにジークさんがいますし、大丈夫ですよ」


アズの行動はアーカズの家にたどり着くまでがどれだけ大変な事か理解しているノエルとフィーナには無謀としか思えないようで心配そうな表情で言う。


「付いてくるのはかまいませんけど、急いでいるからと言っても、慌てない事。後は力づくで突破をするとか考えないでください。身体を張るのは脳みその存在していないフィーナの担当なんで」


「……任せましたよ。フィーナ」


「ちょ、ちょっと待ってください!? 領主様までその反応ってどう言う事ですか!?」


ジークはアズにアーカスの家に行くまでの注意点を話した。その言葉の中にはいつものようにフィーナへの暴言が混じっており、彼の言葉に納得したようでフィーナに頭を下げるアズ。しかし、バカにされたフィーナは納得などできるわけもなく驚きの声を上げた。


「あ、あの。領主様、その反応は少し酷くないでしょうか?」


「……ノエル、私も領主として指揮を執っていましたから、色々な報告が上がってきているんです」


「えーと」


アズはルックルでのフィーナの働きも聞いているようであり、それを踏まえたうえでの評価だと答え、ノエルはどんな反応をして良いのかわからないようで眉間にしわを寄せる。


「ノエル、いい加減、目を逸らすな。ルッケルに行く時だって、フィーナのせいで面倒な事になっただろ」


「あれはジークが悪いんでしょ!!」


「俺が悪い事なんて、1つもない。お前がウチの商品を盗んでいくのが悪いんだ」


フィーナは責任をジークになすりつけようとするが、当然、ジークは彼女の言葉を斬り捨て、フィーナは彼を睨みつけた。


「それじゃあ、時間もないらしいし、行きますか? 今日中にアーカスさんの家に着ければ良いけど」


「あ、あの。ジークさん、それってどう言う事ですか? この間は割と早く着けましたよね?」


ジークはやはりアーカスの家に行くのは乗り気ではないようで乱暴に頭をかいた後に歩き始める。ノエルは彼の言葉に不安しか感じないようで顔を引きつらせた。


「……ノエル、良いか。罠はあれだけじゃない。1番、性質が悪かった時はアーカスさんの家にたどり着くまでに3日かかった。それも領主様が出した使者が何度も場を荒らしているから、どんな罠になっているかがわからない」


「……罠を使いきってくれてれば楽よね」


ジークは振り返り、ノエルに気を引き締める必要があると言い、フィーナはジークへの怒りより、これから起こりうる惨劇の事を考えたようであり、道の先にあるアーカスの家を思い浮かべてため息を吐く。


「あ、あの。今更、何ですけど、どうして、アーカスさんは家までの道に罠を仕掛けているんですか?」


「確かにそうよね。人間嫌いだとしたって限度があるわよ。ジーク、あんた、何か知らないの?」


4人でアーカスの家に向かってしばらく歩くと罠がある場所に着き、ジークが罠の確認を始める。ノエルは彼の手伝いをしようと思ったのか、ジークのそばにいたのだが、ふとした疑問が頭をよぎった。


「えーと、前に聞いた事もあるような気がするんだけど何だったかな? ノエル、あんまり前に出るなよ。罠が発動しても困るし」


「は、はい。気を付けます……ジークさん、わたしが手伝える事ってないんですか?」


「手伝う事か? ……」


ノエルはジークに手伝う事はないかと聞くとジークは彼女を見た後に何かあるか考え始める。


「ジーク、あなた達は冒険者としての技能もあるように見えますが、ノエルはなんの技能を持っているんですか?」


「いや、領主様、別に俺とノエルは冒険者でもないんですけど、冒険者はフィーナだけですよ。俺やノエルはあくまで薬の材料集めに必要な事しかやってませんから」


アズの疑問にジークは苦笑いを浮かべて彼女の言葉を誤魔化そうとする。


「そうですか? まぁ、血筋と言う事でしょうか?」


「……」


アズはジークの言葉に彼の両親の事を思い出したようであり、つぶやくとジークの瞳は鋭くなり、アズを睨みつけた。


「ジークさん、落ち着いてください!?」


「……わかってるよ」


ノエルは彼の様子に慌てて彼の服をつかみ、ジークは首を横に振る。


「……ジーク、失礼しました。失言でした」


「いえ、別に気にしないでください」


アズはジークの様子を見て、深々と頭を下げて謝罪する。ジークはアズの様子に謝罪を受け入れるが不機嫌そうな表情のままであり、彼女と距離を取りたいようで罠解除に戻って行く。


「あの。ジークさん、罠解除って器用さがあった方が良いんですよね?」


「ん? まぁ、魔法的なものもあるから一概には言えないけどな。物理的な罠なら、ありかもな」


「そ、それなら、支援魔法を使います」


ノエルは場の空気を戻したいようで、ジークに話しかけると支援魔法の事を思い出したようで杖を手に取ると両手で握り締めた。


「あー、待て。ノエル」


「へ?」


ジークは彼女の提案を嬉しく思いながらも何かあるのか、彼女を止める。しかし、既にノエルの魔法の発動は始まっているようで杖の先端は淡い光を上げている。


「ノエル、罠には魔法の発動を感知して発動するものもあってな」


「そ、それって、あ、あの」


ジークは嫌な予感しかしないようで眉間にしわを寄せると、ノエルは自分の行動が裏目に出ていると思ったようで顔を引きつらせ、彼女の杖の先端の光に同調するように道の先にいくつもの光が浮かび上がり始めた。


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