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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第97話

「ノエル、熱いから気をつけろよ」


「はい……苦いです」


「まぁ、良薬口に苦しとも言うしな」


ノエルはジークから渡された薬草を煎じた物を飲むと口の中いっぱいに苦味が広がったようで顔をしかめる。


「ノエル、どうなの? 調子は戻った?」


「……まだ、わかりません」


「あのなぁ。そんな直ぐに効くわけがないだろ」


フィーナはノエルに体調を聞くが、そんな短時間で効果があるわけもなく、ジークはため息を吐く。


「ジーク、どれくらいで効果がありますか? もう少し出発まで待った方が良いですか?」


「酔い止めとか、酔い覚ましは個人により、効果は違ってきますからね。正直、わかりませんね」


「そうですか。それではノエルには悪いですが、出発しましょう」


アズはジークの回答に少し考えるような素振りをすると、休憩はここまでだと言う。


「ちょっと、領主様、もう少し、ノエルの事を考えてくれても良いじゃない?」


「フィーナ、落ち着け。領主様の言い分も正しいんだから、それに本来なら、馬車に乗る前に酔い止めを飲んでおくべきだったんだ。まぁ、ノエルがここまで馬車に酔うとは思ってなかったのが原因。ノエル、悪かったな」


「……わたしもこんなに具合が悪くなるとは思っていませんでした。フィーナさん、わたしは大丈夫ですから、行きましょう」


フィーナはアズにもう少し、休憩をとらせて欲しいと言う。しかし、ノエルは自分が迷惑をかけている事を理解しているため、フィーナを止め、ふらふらと馬車に乗り込んでいく。


「ジーク、本当にノエルに飲ませたものって効くんでしょうね?」


「さあな。傷や毒に対する一般的な治療薬は人族だけじゃなく、エルフや魔族でも使っているらしいから効果があるだろうけど、正直、データが取れているわけじゃないから、ドレイクのノエルに効果があるかわからない」


フィーナはノエルの背中を見送ると、ジークを肘で突く。ジークは隠しても仕方ないと思っているようで隠すような事はしない。


「あんた、無責任ね」


「仕方ないだろ。俺だって、さっき、薬草を集めている時に気が付いたんだから、それに気がつかなかったら、確認もせずに煎じて、ノエルに渡してたよ」


「それって、どう言う事?」


ジークはノエルに飲ました酔い覚ましに何かあるのか乱暴に頭をかく。フィーナは彼の様子に何があったかわからないようで首を傾げる。


「ドレイクに対してか、ノエルがアレルギー持ちか、わからないけどな。こいつはノエルには使えない。結構、使い勝手の良い薬草なんだけどな」


「ノエルには使えない薬草?」


「あぁ。ノエルがウチにいる事を考えると少し、調べないといけないな。ノエルが病気にかかったら、医者になんて見せる事も出来ないんだから、彼女の体質に合うもの合わないものも調べないといけない」


「それって、大変よね?」


ジークはフィーナにも知っておいて貰おうとするとフィーナはジークがやろうとしている事が大変な事だけは理解できたようで眉間にしわを寄せた。


「あぁ。仮に種族へ効果がある毒なんかを見つけたら……」


「ノエルが目指す世界とは真逆よね?」


「あぁ」


ジークは発見した情報しだいでは争いを加速させるものだとも理解できているようであり、顔を引きつらせている。


「ジーク、あんた、どうして、そんな事を私に言うわけ?」


「……正直、1人で抱えるのは重すぎだからな。まぁ、薬も使い方を間違えれば毒にもなるって事で」


「何、逃げようとしてるのよ?」


ジークは話をここで終わらせようと思ったようであり、フィーナから視線を逸らすが、薬の事をあまりわからないのに聞かされたフィーナはたまったものではなく、ジークを睨みつける。


「まぁ、気にするな。お前に何かしてくれとか小難しい事は言わないから、役に立つとも思えないしな」


「それって、どう言う事よ!!」


ジークはフィーナを小バカにする事は忘れず、彼女の怒りに触れるが気にする事なく馬車の中に入ろうと歩き出す。


「ジーク、フィーナ、早くしなさい」


「了解です。フィーナ、早くしろ……と言うか、今更だけど、お前がこっちに付いてくる必要ってあったのか?」


アズはいつまでも馬車の中に戻ってこない2人に痺れを切らしたようであり、馬車から顔を出す。ジークはその言葉に頷いた後にフィーナがジオスに戻る馬車に乗っている事を疑問に思ったようで首をひねった。


「どう言う意味よ?」


「別に、アーカスさんの家に行きつく前に力尽きるより、ルッケルで手伝いをしていた方が良かったんじゃないかと思っただけだ。間違っても罠を力づくで突破しようとするなよ」


「……あんな目に遭うのは二度とごめんよ」


ジークは単純にフィーナがアーカスの元にたどり着くまでにいる必要がないと言う。フィーナはその意見には賛成する事もあったようで、過去にトラウマがあるのか顔を青くする。


「まぁ、体力系は任せるか? 俺より、フィーナの方が頑丈だろうし」


「そんなわけないでしょ。良い。ちゃんと、アーカスさんの罠を安全に解除するのよ。わたしは正面突破何かしないからね」


「別に無理強いしてるわけじゃない。だいたい、あの時だって、俺が罠を解除しているのを待ちきれなくて1人で暴走しただけだろ。ほら、さっさと行くぞ」


ジークはフィーナのトラウマに心当たりがあるのかため息を吐くと馬車に乗り込み。フィーナは付いてきた事に少し後悔しながらも、ルッケルの事を考えるとジオスにある自宅でゆっくりしているわけにもいかないため、ジークの後を追い、馬車に乗り込んだ。


「フィーナさん、どうかしたんですか?」


「ん? ノエル、顔色が良くなってきたな」


「はい。ジークさんのおかげです」


「それでは行きますよ」


2人が馬車に入るとノエルは薬の効果があったようで笑顔で2人を出迎えるが、アズは時間もないためか従者に指示を出し、馬車を走らせた。


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