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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
951/953

第951話

「……そうか。沈めちゃったか」


「反省はしている」


「いや、ジークは反省していないでしょ」


王城に到着したジーク達はアンリが診察中と言う事で王城の一室に案内された。

ジーク達が王城に来る事は予定されていたため、エルトとライオも王城に残っていたようですぐに部屋に来てくれる。

魔術学園から王城に来るまでにヴァリウスに会い、絡まれたために攻撃をして来た事を2人に話す。

エルトは面倒になったと言いたいのか大きく肩を落とすと不味いとは思っていたようでジークは気まずそうに首筋を指でかく。

しかし、ライオにはジークが反省しているようには見えないようであり、苦笑いを浮かべた。


「いや、反省はしているぞ。それにカインもブッ飛ばして良いと言っていたし」


「埋めても良いと言っていましたね」


「そうですね」


ジークは反省をしていると言うのだけど、それは聞きようによっては制裁が足りなかったとも聞き取れ、エルトとライオの眉間には深いしわが寄る。

2人の心配を余所にミレットはくすくすと笑っており、ジークは小さく頷いた。


「とりあえず、アンリのところに来る予定の時は魔術学園から歩いて王城に来るんだね。それなら、私はその日は魔術学園にいるようにするから、私の研究室を訪ねるようにしてくれないかな? いくら、マグナ家の次期当主とは言え、私が相手なら少しは静かにしているだろう」


「そうだね。ティミルはカルディナの警護をジークに任せたけど、どうも、今日の事だけを聞いていると不安にしかならないし」


「そうか? カインと違ってあいつ、弱いぞ」


ライオはジーク達がヴァリウスに絡まれないように考えてくれたようで自分を訪ねるように言う。

エルトはティミルが人選を間違えたと思ったようであり、ライオの意見に賛成するがジークはヴァリウスを歯牙にもかけていないようである。

カルディナはクーを抱きしめているのだけれど未だにカインを尊敬しているためか、当然だと言わんばかりに大きく頷いている。


「例える相手が間違っているよと思うよ」


「……カインは魔導士と言っても肉体派だからね。剣とかの武器を使いたがらないけど、能力的には魔法剣士とかに近いからね」


「早朝に半強制で手合せをさせられるんだけど、俺、フィーナ、レインの3人の相手を同時にしているぞ」


ライオはカインとヴァリウスを比べてはいけないと言いたいようで眉間にしわを寄せた。

エルトは苦笑いを浮かべながら、カインの能力的には純粋な魔術師とは言い難いと苦笑いを浮かべる。

ジークは未だにカインには敵わないと大きく肩を落とし、エルトとライオは力なく笑った。


「それもきれいにジーク達を吹っ飛ばしてますよね。朝からいつも大変ですね」


「……そうですね」


「まあ、目標があるって事でそこは良いとして、問題はヴァリウスだね。カルディナ本人も嫌がっているわけだし」


ミレットは今朝のジーク達の姿を思いだしたようでくすくすと笑う。

ジークは少しだけ自尊心に傷がついたようで眉間にしわを寄せ、エルトは問題に対処しないといけないと考えたようで大きく肩を落とした。


「嫌がっているのか?」


「……ジーク」


「いや、よく考えたら、カルディナ様の視界にすら入っていなかったから?」


ジークはカルディナがヴァリウスに嫌悪感を抱いているか疑問に思ったようで首を捻る。

彼の言葉にミレットは呆れたと言いたいのか大きく肩を落とすが、先日、オズフィム家を訪れた時はカルディナが不在であり、今日も彼女の目にはヴァリウスはまったく映っていなかった。

言ってしまえば眼中になかったかのようにジークには見えたわけである。


「そうだとしても聞いて良い言葉と悪い言葉があってですね」


「そうなんですか?」


「……ジークはノエルが嫁に来てくれて本当に良かったね。まあ、ノエルが来なければフィーナがあの場所の居座っていただけかな?」


ミレットは眉間にしわを寄せながらもう少し考えるように言うが、ジークはまったくわかっていないようである。

その様子にエルトは苦笑いを浮かべるのだけど、ライオは何か考える事があるのか眉間にしわを寄せている。


「とりあえず、圧力くらいはかけておこうか? 私もあまりマグナ家に権力が集まるのは遠慮したいし、だいたい、今の当主は正式な当主ってわけじゃないし」


「……そうなのか?」


「マグナ家は才ある者を求めていたからね。魔術の名家を語っていたから、エルフとも婚姻を結んでいる時もあるんだけど正式な後継者はハーフエルフだったはず、本人はマグナ家を捨てると言ったんだけど、長寿エルフの血を引くハーフエルフだからね。今の当主やヴァリウスはそれまでの仮当主なんだけど本人達はマグナ家のすべてを自分達の物にしたいみたいだからね」


エルトは1カ所に権力を集める事を良しとしていないため、カルディナをマグナ家に嫁がせたくはないと笑う。

彼の言葉の中にマグナ家の当主が不在と聞いたジークは首を捻るのだが、エルトはあまり詳しくないようでライオへと視線を向けた。

ライオは小さく頷くとマグナ家の正式な当主がハーフエルフである事を告げる。


「正式な当主になるためにマグナ家の中と外に発言権を持つ身内を用意したいって事でしょうか?」


「そういう事だね。ただ、他の者達も当主の名前は欲しいわけだから、彼らを認めない。そして、自分達がとって変わるためにいろいろとね」


「めんどくさそうだな」


ミレットは状況がつかめてきたようで小さく頷くとライオは身内の足の引っ張り合いだとため息を吐いた。

ジークは理解できないようで頭をかくが、現在、エルア家の身内同士の足の引っ張り合いの中にいる彼の言葉とは思えない。

その言葉にエルト達の視線はジークに向けられた後に大きなため息が漏れる。


「……あなただって、現在、エルア家の足の引っ張り合いの中にいる当事者でしょう。自覚くらい持ちなさい」


「そんな事を言われてもな。この間、知ったわけだし、権力に興味もないし」


「それはわかっているよ。まあ、マグナ家の正式な当主は家を継ぐのを辞退したつもり何だろうけど、権力が欲しい者はまだ正式な当主であって貰った方が良いんだよ」


居心地が悪かったようでジークがバツの悪そうな表情をするとカルディナは大きく肩を落とす。

ジークは更なる攻撃が来た事にどうして良いのかわからずに眉間にしわを寄せて首を傾げる。

エルトはジークの様子にため息を吐くのだが、マグナ家の中にもいろいろな思惑があると言い、ジークは考えるのが面倒になったのか小さく頷いた。


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