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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第949話

「……あれ、大丈夫なのか?」


「どうでしょうね」


研究者を外に連れ出したジークとカインはバカ騒ぎに巻き込まれたくないため、すぐに屋敷に戻った。

飲み会は人が増えているようで日が沈んでいるにも関わらず、外からは騒ぎ声が聞こえている。

ジークはフォルムに来てから、何度目かのこの騒ぎに眉間にしわを寄せ、ノエルは苦笑いを浮かべた。


「とりあえずはある程度、時間が過ぎたらいつも通り、迎えが来るんじゃないかな?」


「そして、その時に騒いでいた人達は奥さんからしばらく禁酒が言い渡されるんだろ。こりないよな」


「仕方ないよ。フォルムは元々、娯楽が多い場所じゃないからね。バカ騒ぎできるような事があれば騒がないと」


カインはソファーに身体を預けながらそのうち騒ぎも鎮静されると言う。

ジークはその時の情景が目に浮かぶようで苦笑いを浮かべるとカインはカインなりにフォルムの領民達の事を考えているようである。


「バカ騒ぎをすれば研究者と領民達の距離も近づくかもしれないしね」


「……近づけば良いですけどね。それが更なる軋轢を生んだらどうするんですか?」


「その時はその時だよ。それにフォルムに来ている研究者達は元々、師匠が選んだ人達なんだ……」


フィーナはどうでも良いのか投げやり気味に言うのだけれど、セスは何度も見ているバカ騒ぎに研究者達が付いて行けるのかが心配のようである。

カインは心配ないと言いかけるが何か思うところがあったようで眉間に深いしわを寄せてしまう。


「……何かあるのかよ?」


「いや、師匠の研究に関わっている人達ってお酒が強い人が混じっていたりするんだけど、おかしな事にならなければ良いなと思ってさ」


「そう言われると不安になりますね」


カインの様子にジークは眉間にしわを寄せるとカインは困ったように笑う。

その言葉にミレットは苦笑いを浮かべながら、運んできた紅茶を並べる。


「ですけど、あの騒ぎが起きる度に一体感が生まれているのは確かですからね」


「確かに流れて来た冒険者達と怒られて禁酒を食らっている人達は仲良くなっているな」


「後はお酒を飲めない方達も仲良くはなっていますよ。ただ、二極化しているためかいつか争いが起きないか心配になります」


飲み会を行う事で結ばれている交友関係は確かにあるように見えるのだけど飲み会により、要らない衝突が起きそうである。

それをまとめるのはカインの仕事だと言いたいのか、ジークは彼の肩を叩くがお酒の飲めないカインはどうして良いのかわからないのか苦笑いを浮かべる事しかできない。


「とりあえずは師匠もアーカスさんもいるし、2人に任せるよ」


「それなら、お前はこっちの問題だな」


「こっち?」


カインは年長者達に任せると言うのだけど、この場にいるジーク達はどうしても2人を信用しきれないようで微妙な空気が広がって行く。

その空気を振り払うようにジークは話を変えようとカインに声をかけるがカインはとぼけているのか首を傾げている。


「……ヴァリウスの事だよ。お前が受け持つって言っていただろ。俺はアーカスさんとフィリム先生の方を片付けたんだから、どうにかしろよ」


「どうにかね。俺にできる事は王都の街路樹と一緒に埋めるくらいしかできないと思うんだけど」


「埋めるな」


彼がとぼけていると思ったジークは大きく肩を落とすがカインは真顔でヴァリウスを埋めてしまえと言う。

その言葉にジークは眉間に深いしわを寄せるのだけどカインは本気のようであり、セスは首を横に振っている。


「……お前を信じた俺がバカだったよ。とりあえず、どうするかな? カルディナ様と王都に行くのは決定事項だとしてもおかしな騒ぎには巻き込まれたくないぞ」


「それに関して言えば、大丈夫だよ、ジークは絶対におかしな事に巻き込まれるから」


「そうですね。それに関して言えば何が起きるかはわかりませんけど確信がありますね」


ジークはヴァリウスと顔を会わせる事が憂鬱なのか大きく肩を落とす。

しかし、カインは楽しそうに笑っており、ミレットもアンリのところに顔を出す時は同行するつもりのようで小さくため息を吐く。


「……そう言う確信はしないでください」


「でも、ジークだって、イヤな予感がしているんでしょ。覚悟決めたら」


「そうかも知れないけど、ティミル様やライオ王子の反応を見ている限りだとかなり面倒そうなんだよ。だいたい、フィーナ、お前だってアンリ王女に会うんだから、少しは考えろよ」


認めたくないジークは眉間にしわを寄せるのだけどフィーナは紅茶と一緒に運ばれて来たお茶菓子を手に取るとクーの鼻先に運び、クーは嬉しそうにお茶菓子を頬張る。

ジークはヴァリウスの事を考えているのかフィーナにも考えるように言う。


「イヤよ。考えるのは私の仕事じゃないわ」


「……それ、バカだって言っているような物だぞ」


「そうですね。でも、ジーク、フィーナに助けを求めてもダメですよ。フィーナにはアンリ様に会う前に覚えなければいけない事がたくさんあるんですから」


フィーナは興味が無いようでお茶菓子を頬張っているクーの鼻先を指で撫でながら言うのだが、彼女の言葉は考える事の放棄であり、ジークはため息を吐く。

ミレットはジークの言葉に頷くが彼女はまだフィーナをアンリに会わせるわけにはいかないと思っており、笑顔を見せるとフィーナは彼女の笑顔に顔を引きつらせる。


「ジーク、私がそのヴァリウスって言うヤツをどうにかするから、ミレットさんをどうにかして」


「……どうにかするって、どうするんだよ?」


「決まっているでしょ。相手は魔術師、魔法を使う前に拳で沈めるわ」


フィーナは手のひらを返すようにジークに助けを求めるのだけれどジークは良い考えが思い浮かぶとは思えなかったようであり、どうするつもりかと聞く。

フィーナが考えているのは策もない物理攻撃であり、ジークの眉間には深いしわが寄ってしまう。


「何よ?」


「いや、お前とカイン、本当に兄妹だってわかる発言だよな」


「本当ですね」


ジークとセスはクローク兄妹の思考が時々、かなり近い事に大きく肩を落とした時、ミレットがフィーナの肩を笑顔でつかみ。

フィーナは顔を引きつらせるがミレットは気にする事はなく、彼女を引きずって居間を出て行ってしまう。


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