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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第947話

「と言うか、完全に見世物だな」


「そうですね」


「見ているなら、手伝ってくれれば良いのに」


アーカスとフィリムの指示でフォルムの道に魔導機器を立てて行く。

領民達は何をやっているか警戒しているのか、一定の距離を開けてこちらを見ており、ジークは大きく肩を落とす。

ノエルは苦笑いを浮かべているがフィーナは魔導機器もそれなりに大きいため、疲れたと言いたいのか口を尖らせている。


「……あなた達は何をしているんですか?」


「良いところに」


「……私は他にやる事がありますので」


文句を言いながらもフィーナが作業を続けている様子にジークとノエルは顔を見合わせて笑った時、ジーク達を見つけたシーマとフォトンが声をかけてくる。

フィーナは人手が増えたと思ったようで笑顔でシーマの肩をつかんだ。

彼女の行動にシーマは余計な事をしたと察し、顔を引きつらせるが腕力ではシーマがフィーナにかなうわけがない。


「ジーク、ノエルさん、あれは何なんですか?」


「夜に灯りを点ける魔導機器。俺達は王都で見た事があるんだけど、これがある道は明るくて歩きやすいぞ」


「そうなんですか。便利な物があるんですね」


シーマがフィーナに捕まった様子にフォトンは苦笑いを浮かべながら何をしているか聞く。

フォトンはカイン達や研究者達の行動に理解を示してくれている事もあるため、ジークは簡単に説明をする。

その説明にフォトンは感心したのか魔導機器の部品を覗き込むとその1つを手に取った。


「……でも、こんな物を設置して良いんですか? 正直、お金がないですよね」


「それに関して言えば、心配はないらしいけど、フォルムは本当にお金ないんだな」


「私達はカイン様からお給金をいただいていますが、リュミナ様の後を追って多くの人達が流れてきていますから、いろいろと不足しています」


見た事もない魔導機器のため、フォトンは費用が掛かると眉間にしわを寄せる。

今回の魔導機器はアーカスとフィリム持ちのため、ジークは心配がないと言うとフォトンは胸をなで下ろす。

しかし、ジークにとってはあまり良い情報ではなく、このままではフォルムの財政が立ちいかなくなるのではないかと眉間に深いしわを寄せた。

情報はあまり入ってきていないようだがザガードの状況はあまり良くないようでザガードから流れてくる人々は増加している。

カインやセスは仕事や住居を割り当て、保護はしている物の彼らが生活を安定させるにはまだ時間が足りず、わずかしかないフォルムの財政をさらに圧迫しているようである。


「……カインさんっておかしな事をすると処罰されたはずですよね?」


「フォルムの統治を失敗すれば、ルッケルでエルト王子やライオ王子が襲われた事件の責任を取らされたはずだな」


「そうなんですか? その時はここには誰が来るんですか?」


フォルムの統治は難しく、カインを失脚させるために画策した者達がいる。

そんななか、カインが下手な手段を取るとその者達が画策した通り、カインが失脚させられる。

フォルムは魔族との混血が多く住んでいるため、それに理解があるカインが領主でいる事はフォルムに元々住んでいる者達は望ましい事である。

フォトンはカインがフォルムからいなくなってしまった時の事を考えてしまったようで眉間に深いしわを寄せた。


「……今、そんな事を気にする必要はないだろう。だいたい、あの性悪が簡単に失脚させられると思うか?」


「思わないな」


「そうですね。カインさんですからね」


ジークとフォトンの話が聞こえていたのか、アーカスは呆れたように言う。

彼の言葉にジークとノエルは顔を見合わせて苦笑いを浮かべ、フォトンは反応に困っているのか眉間にしわを寄せている。


「しかし、私も何度かフォルムを訪れているが、ずいぶんと人が増えてきた者だ。このまま人が増えると処理しきれなくなるぞ」


「ザガードってそんなに状況が悪いのか? フィリム先生、王都にはそう言う話は入ってこないのか?」


「入ってきているかも知れないが、研究者の私のところにそんな情報は入ってこない」


フォルムの規模から見ても、収容しきれない移民が流れてきている事はフィリムも気になっているようである。

増えている人々はザガードから流れてきているためか、ジークは王都で活動しているフィリムなら何か知っているのではないかと聞く。

しかし、彼は魔術学園の教授でしかなく、彼の耳にそのような情報が入ってくる事はない。


「そうか……」


「小僧、ない頭を使っても何も考え付かないんだ。手を動かせ」


「……確かにそうかも知れないけど、俺だって何かしたいんだよ。無理やり、引っ張られてきたけど、今のフォルムは嫌いじゃないし」


ジークは情報が何もないためか、どうして良いのかわからないようで頭をかく。

そんな彼に向かい、アーカスは魔導機器設置を手伝うように言う。

ジークはフォルムの人達のためにも何かしたいと言うとノエルも続くように大きく頷いた。


「それなら、早く手を動かせ。これもフォルムのためだ。人が増えるとおかしな事を考える輩も増える」


「それがどうして、この魔導機器を設置する事につながるんだよ?」


「明るいと人の目を気にして、犯罪を抑止する力が働く。王都でもこれが設置されてからは夜中の犯罪は減った」


フィリムはため息を吐きながら、手を動かせと言うがジークは意味がわからないようで大きく肩を落とす。

アーカスは魔導機器を王都に設置した時の事を話すとジークとノエルは良く分かっていないようだが感心したように頷く。


「わかったなら、手を動かせ」


「わかりましたよ。フォトンさん、できれば手伝ってくれるとありがたいんですけど、男で足りてないし」


「わかりました。お手伝いします」


アーカスは2人に手を動かせと言い、ジークは頷いた後、フォトンにも助けを求めた。

フォトンは大きく頷くとシーマにここに残ると言おうとするが、シーマはフィーナの力づくの説得ですでに手伝う事を了承しているようで疲れたような顔をしている。


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