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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
946/953

第946話

「……あれ、なんだと思う?」


「私に聞かないでよ」


「な、何なんでしょうね」


カインと厄介事の交換をした次の日、ジークはノエルとフィーナとともにアーカスの元を訪れる。

アーカスはすでにフィリムとともに何かおかしな道具の前で話し合いをしており、それを見たジークの眉間には深いしわが寄った。

聞かれてもノエルもフィーナも2人が何をしているかわからないようであり、フィーナはジークに聞きに行けと言いたいのか、彼の足を軽く蹴る。


「……俺かよ」


「元々、ジークがあのクズと約束したんでしょ。ほら、さっさと行ってきなさいよ」


「そうだけど……あそこに行くのはなんかイヤだな。面倒事に巻き込まれる気しかしない」


フィーナは自分とノエルは付き添いだと言い、ジークが行くのは当然だと言う。

それはジークも理解しているようであり、ため息を吐くとアーカスとフィリムへと視線を向ける。

その様子からジークは何かイヤな予感がしているのがわかり、ノエルとフィーナはなるべく関わり合いたくないようで彼の背中を押す。


「……わかったよ。行くから、背中を押すな」


「……良いところに来たな。小娘」


「フィーナ、ご指名だぞ。どうやら、アーカスさんはお前に用があるらしい」


ジークがため息を吐いた時、アーカスがジーク達に気が付いた。

アーカスはフィーナを見つけるなり、小さく口元を緩ませる。

ジークは自分ではなく、アーカスがフィーナに興味を抱いた事にほっと胸をなで下ろすがフィーナは顔を引きつらせると後ろを向いて逃げ出そうとするがすでに遅い。

アーカスは魔導士とは思えないような動きで彼女の背後まで移動すると彼女の肩をつかむ。


「わ、私、仕事があるから、森の探索もそろそろ終わらせないといけないでしょ」


「嘘を言うな。森になど行く気は無いだろう。何、簡単な仕事だ。これを運んでくれるだけで良い」


「……あの、アーカスさん、フィリム先生、これって何ですか? 魔導機器みたいですけど」


フィーナは手を振り払おうとするが、幼い頃から彼女を見ているアーカスである。

彼女の嘘などすぐに見抜き、フィーナは観念したのか大きく肩を落とす。

その様子にジークはどうせ逃げられないならと観念したようでため息を吐いた後、この場に置かれている怪しい物に付いて聞く。


「……見た事はないか? お前達は何度も王都に行っているんだろう」


「王都? ノエル、見た事あるか?」


「えーと、これって魔法で灯りを付ける物じゃないですか? 王都の道に有ったと思います」


フィリムは小さくため息を吐くとよく見てみるように言う。

フィーナはアーカスに捕まっているためか、ジークとノエルは道に置いている物を覗き込む。

ジークは全然、記憶にないようで首を捻るとノエルは王都の街中を照らしていた魔導機器に似ていると思いだした。

フィリムは小さく頷くが、ジークとノエルはなぜ、フォルムにこんな物があるのかわからないため、首を捻るがアーカスはフィーナに魔導機器を運ぶように指示を出し始める。


「……なんで、私がこんな事」


「これ、どうしたんですか? と言うか、何に使うんですか?」


ジークとフィーナは魔導機器の部品を荷車の上に載せると前を歩くアーカスとフィリムの後を追いかける。

フィーナはすでに文句を口から垂れ流しており、ノエルは困ったように笑う。

ジークは話を聞かずに振り回されるのも釈然としないようで前を歩く2人に聞く。


「何に使う? お前達はこれがどのように使われていたか見てきたんだろう」


「見てきたけど、まさか、フォルムに設置するんですか?」


「そうだ。研究している者達は夜間でも出歩く者も多いからな、何かあって、研究に支障が出るのは困る」


その質問にアーカスは呆れたようにため息を吐くとジークは使われ方を知っているとは言え、王都にしか取り付けられていない物を国境付近のフォルムに必要かと疑問を持っているようである。

アーカスは研究のために必要な物だと言い切るが、ジークはそこまで必要かわからないようで首を傾げたまま、荷車を押す。


「でも、これって、王都にしかないような高価な物ですよね? こんなに持ってきても良いんですか? 代金をカインさんに請求したら、セスさんが倒れてしまいます」


「……そうよね。間違いなく、セスさんがぶっ倒れるわ」


「そうだよな」


2人が魔導機器をフォルムに設置しようと考えている事は理解した物の、高価な物であり、ただと言うわけにはいかない。

フォルムもカインやセスが何とかやりくりしているだけで財政は困窮しており、これだけの魔導機器の費用を出せる余裕はなさそうである。

そのため、ノエルは心配そうにつぶやくとジークとフィーナの頭にはこの魔導機器を準備するだけにかかった費用の請求額を見た時のセスの顔が目に浮かんだようで眉間に深いしわを寄せた。


「安心しろ。これは古い魔導回路を使っている物だ」


「古い魔導回路?」


「簡単に言えば、一昔の技術で作られた物だ。これを作ってから、かなりの時間が経つからな。他の者達が新たな研究を重ねて今、王都にある物はもっと良くなっているだろう。その古くなった物をフィリムに回収させて修理をしていたんだ」


アーカスはフォルムの財政を圧迫させるつもりはないと答える。

ジークは古いと聞いて、荷車の上の魔導機器を覗き込むが古いと言われてもどこが古いのかわかってはいないのだがアーカスは気にする事はない。


「……要は廃品利用でしょ。大丈夫なの? いきなり、爆発とかはイヤよ」


「安心しろ。残念ながら、そんな回路も魔導式も組み込まれてはいない」


「……どうしても信用できないのよね。なんでかな?」


フィーナは心配そうに荷車の魔導機器を覗き込むとフィリムは何も心配ないと答える。

しかし、彼の言葉を簡単に信用する事はフィーナにはできず、眉間に深いしわを寄せながら首を傾げた。

ジークとノエルも同等の事を考えているようで眉間にしわを寄せているのだが、アーカスとフィリムが気にする事はない。


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