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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第94話

「……あの。ジークさん、本当にアーカスさんのところに使者は出さなくても良いんですか?」


「必要ない。と言うか、言ったら確実に被害者が増える。わざわざ、危ないところに人を送る意味はないよ。ノエルだってわかるだろ」


「そうなんですけど……」


ジークとノエルはアズの屋敷の一室を借り受け、簡易的な調合室にすると治療薬の調合を開始する。しかし、ノエルはアズにはアーカスへの使者は控えた方が良いと言いながらもやはり気になっているようでどこか落ち着きに欠けている。


「あっ!? それなら、他に治療薬を調合できる人にここを任せるって言うのはどうですか? これなら、ジークさんも動けますし」


「無理、まずはルッケルは薬剤師が不足している。俺がしばらくの間、専属契約できてものそこに理由があるんだ。輸入物は高い上に効果が微妙。はっきり、言えば、この近辺で俺以上の薬剤師はいない」


ノエルは良い考えが浮かんだと思ったようだが、ジークは祖母から受け継いだ技術と知識に余程、自信があるのかくすりと笑う。


「そうなんですか? ジークさんって、やっぱり、凄いんですね」


「流石に今のは言い過ぎだけど、輸入物や王都で作った物は材料を栽培しているものが多いんだけど、天然のものより質が良くない。それを使った治療薬じゃ、効果にも影響が出る」


ジークの言葉に目を輝かせるとノエル。そんな彼女の様子にジークは冗談だと言った後、現在、流通している治療薬に不満があるようで乱暴に頭をかいた。


「それなら、どうして、天然物を取ってこないんですか?」


「単純に危険だから、獣や野盗の類、慣れない土地で道に迷うってのだってある。危険な思いをして誰かを助ける治療薬を作るよりは、命をかけずに儲けたいってヤツ」


ノエルが持った当然の疑問にジークは材料集めに動くだけの利点がないため、利益を優先した結果だと答える。


「で、でも、それだと、リックさん達は困るんじゃないですか?」


「困るだろうな。神聖魔法や精霊魔法を使える人間は限られてるし、魔法を使える人間は一発当ててやるとか言って、命を粗末にもするだろ。だから、ただでさえ、少ない魔法の才能がある人間がいなくなってしまえば、大きな街はまだしも田舎の村なんて、ちょっとしたケガでもいつの間にか命を失う事になる事だってある」


ノエルはジークの言葉に彼が危険であっても武器を持ち、薬の材料を集めに行く理由を理解できたようであり、真剣な表情をする。


「あ、あの。ジークさん」


「どうかしたか?」


「今のがジークさんが村に残る理由ですか?」


ノエルはジークが彼の両親から多くの才能を受け継いでいると思っているためか、彼が小さな村にいる理由が村を見捨てられないからかと聞く。


「ノエルまで、フィーナみたいな事を言うのか?」


「で、ですけど、やっぱり、気になります。わたしはジークさんにお世話になって日が浅いですけど、ジークさんは、ジークさんのご両親と同じく勇者と言われるくらいの才能はあると思うんです。あ、ち、違います。ジークさんに勇者になって欲しいわけではなくて」


ジークはノエルの言葉に不機嫌そうに顔をしかめ、ノエルは慌てておかしな意味ではないと言おうとするが、彼女も何を言って良いのかよくわかっていないようで言葉は上手くまとまらない。


「勇者にはなりたくないな。そんな事になったら、顔も知らない誰かのために、人族の敵となる魔族と戦う気なんてないよ。それにそんな風に周囲に騒ぎ立てられるより、自分の手の届く範囲だけでも守れればいいからな」


「わ、わたしもジークさんとは戦いたくないです」


ジークは慌てるノエルの姿にくすりと笑うと、ノエルもジークと戦う事は考えられないようで大きく頷いた。


「まぁ。村に残る理由は、ノエルの言った通りかもな。俺にとってはあの村の人達が家族みたいなものだから、ウチのろくでなしが居なくてもここまで育ってこれたのはあの人達のおかげだから、ばあちゃんが薬草集めに行ってる時は世話をして貰ったりしてさ。小さな村だし、若い人達は村を出て行くから、年寄りばっかりだろ。ガキの頃に世話になっている分、ほっとけないしな」


「ジークさんらしいです」


ジークはノエルの言葉は間違っていないと答えると、ノエルは村で見ていた彼の様子から悪態を吐いていても彼がいかに村の人達を大切にしているのか理解できているようで笑顔を見せる。


「そうか?」


「はい。優しくて暖かくて」


「いや、何か、変に誉められてもさ」


ジークはノエルの言葉に気恥ずかしくなったようで首を指でかきながら、彼女から視線を逸らすと調合の続きを行おうと手を動かす。


「照れてるんですか?」


「ノエル、作業に移ろう。治療薬は毒ガスに対してだけじゃないわけだしさ。冒険者の人達もわずかだけど協力してくれてるわけだし」


ノエルはジークの顔を覗き込む。しかし、ジークは気まずそうな表情のまま、視線を逸らし、調合作業に没頭しようとする。


「ジークさん」


「ノエル、遊んでいるヒマはないって言ってるだろ」


「……そうだな。いちゃついているヒマはないな」


ノエルがジークをからかっているところをリックが見ていたようであり、彼は大きなため息を吐いた。


「リ、リックさん!? どうして、ここに!?」


「ジークの事だ。短時間でも作れる治療薬と並行で治療薬を作っているだろうと思ってな。それを取りにきたんだ」


ノエルはリックの言葉に驚きの声をあげると、リックは治療薬を取りにきたと答える。


「はい。傷薬と栄養剤。ちなみに栄養剤はくそ不味いですけど」


「……知ってる。気付けも入ってるって、よく、お前のばあさんも言ってたからな」


ジークはリックに完成している薬類を出す。その中にはおかしな色をしている液体が1つ、コップに注がれて紛れ込んでおり、リックは心底いやそうな表情をしながらもその液体の入ったコップを手に取ると一気に飲み干した。


「……行ってくる。お前ら、いちゃついている時間はないんだ。真面目に働け」


「は、はい」


リックはその液体の余程の不味さに魂を引っ張られそうになるも、何とか堪え、薬類を持ち、ふらふらと簡易調合室を出て行く。


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