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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第937話

「ふむ。信頼がされていないようだな」


「書状の宛先がエルト様宛てですから、カルディナもヴィータさんに渡すわけにはいかないでしょう」


「あれでも、将来有望な文官様らしいからな」


書状がミレットに手渡された事にヴィータは小さく肩を落とす。

彼女はカルディナから信頼を得ていないのではと考えたようだが、ミレットはそんな事はないと首を横に振る。

ジークはシュミット達がカルディナに期待している事や彼女自身の努力は認めているようで苦笑いを浮かべた。


「そういう事にしておこう。しかし……」


「何ですか?」


「……才と見るべきか、他の者の努力が足りないと見るべきか」


ヴィータは2人の様子を見て小さく頷いた後、何か不満があるのか小さくため息を吐く。

その様子にジークは少しバカにされたような気がしたようで眉間にしわを寄せるがヴィータは気にする事無く言葉を続ける。

彼女の言葉の意味がわからないのかジークはミレットへと視線を向け、彼女は特に心配する内容ではないと言いたいようで小さく微笑んだ。


「たぶん、アンリ様の体調を見ていた医師達の事を嘆いているのですよ」


「そうなのか? なんか、さっき、悪意があるように先生って呼ばれたけどな」


「……悪意と受け取られるのは心外だ。私は事実を言っているだけだぞ」


ミレットはヴィータがジークを褒めたのだと説明するが、ジークはからかわれているとしか思っていないようで眉間に深いしわを寄せる。

カルディナだけではなく、ジークも信じてくれていないと言いたいのかヴィータは大きく肩を落とした。


「いや。ヴィータさんの言葉はいまいち、信じにくい。それにまだまだ覚える事が多すぎて冗談にしか思えない。何1つ、勝っている部分もないんだからな」


「私やリック、ジークくんが指示を仰いでいるテッド先生も君よりも多くの時間を費やしているのだ。元々の知識があったとしても簡単に抜かれるわけにはいかないさ」


「そうですね。従姉あねとしてもまだまだ従弟おとうとには負けるわけにはいきません」


ジークは目の前のいる2人に医師として未熟だと自覚しているため、誉められる事をからかわられていると捉えているようである。

疑り深い彼の様子にミレットとヴィータはまだまだ負けるわけにはいかないと笑う。


「悪い。遅くなった……どうして、ジークは納得がいかなさそうな顔をしているんだい?」


「……いや、本当に納得ができない事が多いんだ」


「そうかい? それでミレット、シュミットからの書状があると聞いたんだが」


その時、勢いよくドアが開き、エルトが部屋の中に入ってくる。

彼はジークの表情を見て、首を傾げるとジークはため息しか出ないようで大きく肩を落とす。

その様子にエルトは苦笑いを浮かべるが、ジークの心境よりもシュミットからの書状の内容の方が気になるため、ミレットへと手を伸ばした。

ミレットは1度、頭を下げた後、カルディナから預かった書状をエルトに手渡すと彼はすぐに書状へと視線を移す。


「……ヴィータ、頼みたい事があるんだけど」


「父上の説得と言ったところでしょうか?」


「……わかっているなら、さっきのやり取りって何だったんだ。」


書状を読み終えたエルトは表情を引き締めるとヴィータの名前を呼ぶ。

彼女はすでに書状の内容を予想していたようで表情を引き締めるが、ジークは彼女がカインやシュミットが考えていた事を良い当てた事に眉間にしわを寄せる。


「他にないからね。説得はさせていただきますけど、私の説得に頷くとは思いませんけど、後、権力に弱いため、もちろん、エルト様にも力は貸していただきますよ」


「もちろんだ。後は」


「手伝う。手伝う。正直、今まで知らなかったけど、身内が迷惑かけているわけだからな」


ヴィータは父親がどのように動くかは想像ができないと言いながらも、父親の弱点などはしっかりと理解しているようで大きく頷いた。

エルトは頷くとジークへと視線を向ける。

その視線にジークは断る気などないと言い、エルトは満足そうに笑う。


「ただ、具体的に何をすれば良いかはそっちで考えてくれ」


「……かっこが付かないね」


「仕方ないだろ。そう言うのは頭がまわらないんだから、それを考えるのは別の人間の仕事だ」


彼の笑顔にジークは気恥ずかしくなったのか視線をそらして頭をかく。

エルトはそれがジークの照れ隠しだとは気付いているようで小さくため息を吐いた。

ジークはあまり追及して欲しくないためか、難しい事は他人に任せると言う。


「それに関して言えば、私も同感なんだけど」


「……エルト様、それはどうかと思いますけど」


「いや、私もカインやセスに比べるとそう言うのは苦手だし」


エルトもジークと同様に難しい事はカインやシュミットに任せると決めており、ジークに同意するように頷いた。

その様子にミレットは小さく肩を落とすがエルトは気にする様子もなく、楽しそうに笑っている。


「それでシュミット様は何をするつもりなんだ?」


「とりあえずは、いくつかあるけど、まずはヴィータにエクシード家の当主に書状を書いて貰う」


「それはわかっていますが……引き込むには条件が見えないと何とも」


ジークはカインとシュミットが企んでいる具体的にわからないため、書状の内容を聞く。

エルトは書状に視線を戻して説明をしようとするが、ヴィータは何か父親を動かすのに充分な条件は無いかと聞き返す。


「条件か……」


「カインとシュミット様は何か書いていないんですか?」


「そうだね。その辺は何も書いてないね」


エルトは眉間にしわを寄せて考え込み始める。

その様子にミレットは書状に何か書いていないかと聞く。

書状には何も書かれていないようでエルトは首を横に振った。


「……何も考え付かなかったのか?」


「そうではないと思うけど……何となく、やるべき事はわかっているんだけど、流石に大変なんだよ。それでもやらないといけないけど」


ジークは眉間にしわを寄せるがエルトは2人が何を考えているかはわかっているようで苦笑いを浮かべる。


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