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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
931/953

第931話

「……」


「……」


「く、空気が重いですね」


フィーナとアノスは変わらずに睨み合いを続けているのだがシュミットは口ではシーマを処罰する気は無いと言った物の、それでも2人の間には妙な緊張感が漂っている。

その様子にミレットは苦笑いを浮かべると合流したシーマとフォトンの分の紅茶をテーブルに置く。


「あの、カイン様とセスさんがいないのですし、私達は他に行きませんか?」


「……ジークとカルディナが2人を呼びに行っている。すれ違いになるよりは待っていた方が良いだろう」


「そ、そうですか」


フォトンは重い空気に耐え切れなくなったようで立ち上がり、シーマに屋敷を後にしようと提案する。

彼女は頷こうとするが、シュミットは逃げる事は許さないと言いたいのか目で2人を威圧し、フォトンは逃げられないと思ったようでソファーに座り直す。


「あの、シュミット様、とりあえず、少し落ち着きませんか? このまま、2カ所でピリピリしているのは胃に負担がかかりますから」


「お、お願いします」


「私は落ち着いているが……」


ミレットはどうして良いのかわからずにオロオロしているノエルへと視線を向けた後、シュミットに落ち着くように言う。

その言葉にノエルは続くように頭を下げるが自分は特におかしな事をしているつもりはないと言い切るシュミットはとシーマへと視線を向けた。


「……ルッケルでの件は申し訳ない事をしました」


「ああ……」


「……ダメですね。この空気が変わる気がしません。ジーク、早く、カインとセスが来てくれればいいんですけど」


シーマはシュミットが謝罪を求めている事がわかったようで一先ず、謝罪の言葉を並べてみるが彼は頷くだけであり、一向に空気が変わる事は無い。

その様子にミレットはため息を吐くとカインとセスを呼びに行ったジークとカルディナの帰還を心から願うようにつぶやいた。

しかし、そう上手く彼らが戻ってくる事はなく、ノエルとミレットは困ったと言いたいのか、顔を見合わせて笑う。


「ノエル、とりあえず、フィーナとアノスの方をどうにかしませんか? あっちの方がどうにか出来そうな気がします」


「そ、そうですね。フィーナさん、あの、ケンカは止めませんか?」


「ノエル、何を言っているの? ケンカをしているなんて言われたら、私がこいつを意識しているみたいじゃない。はっきり言って、こんなよわっちいの眼中にもないわ」


方向転換をしようとノエルはフィーナへと声をかけるが彼女はノエルやミレットを見る事無く、アノスと睨み合いを続けている。

好転の見えないこの状況に2人はどうして良いのかわからずにため息を吐いた。


「……アノス、バカな事をしているな。フィーナ、お前もだ」


「……バカな事をしているわけではありません」


「こっちのセリフよ。ちょっと、ノエル!? どこに行くのよ!?」


フィーナとアノスの姿はシュミットにもいい加減、目障りに映ったようで彼は2人に離れるように言う。

主君に言われてはアノスが指示を聞かないわけにも行かず、自分には非はない事を強調するがフィーナは不機嫌そうな表情をしているとノエルはフィーナの背中を押してキッチンへと強制退場させる。


「……逃げられた感がしますね」


「そうですね。あの、シュミット様」


「何度も言わせるな。私はあの時の事を責める気などは無い。あれは私が未熟だったせいだ。今はあの時のようにはならない」


ミレットの目にはノエルが逃げたように見えたようで小さく肩を落とす。

フォトンはシーマに何かがあっては困るためか、シュミットに頭を下げて許しを請おうとするがシュミットは自分の未熟さを恥じてはいるもののシーマに何かするつもりなどないと強く言う。


「……試して見ますか?」


「シーマ様、シュミット様が許してくれているのですから、挑発をしないでください」


「冗談です。それでワームの領主になったシュミット様はこのような場所で何をしているのですか?」


しかし、シーマは彼の言葉を挑発と捉えたのか、ラミア族の能力の1つである魔眼に怪しい光を灯らせる。

その様子にフォトンは大きく肩を落とすとシーマはその気はないと口元を緩ませた後、シュミットがワームを訪れた理由を聞く。


「……カインとセスがいない状況で話す事でもないのだがな。ラミア族のシーマがいるのなら、利用する事ができるか?」


「悪巧みをしているところ、悪いですが私は魔眼を人族のために使うつもりはありません。今だって、人族に協力するつもりなどないのですから」


「その割にはずいぶんと真面目に働いているようだな」


シュミットはラミア族の血を引いている彼女がしっかりとフォルムの統治を手伝っている事に利用価値があると考えたようだが、シーマは魔族側であり、シュミットの言う事など聞く気は無いと言う。

その言葉にシュミットは小さく笑うとバカにされたと思ったのか、シーマは不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。


「シーマさん、シュミット様はあなたの働きを誉めているのであって、バカにしているわけじゃないですよ。とりあえず、お茶でも飲んで落ち着いてください」


「……わかっています」


「あまり、不機嫌そうにしていると皆さんの紅茶にジークの栄養剤を混ぜますよ」


険悪な空気は収まる事は無く、ミレットはシーマにお茶を勧める。

彼女も自分が冷静になっていない事は理解できているようで紅茶を口に運ぶが、紅茶を飲んでも気持ちは収まらないようでその空気はピリピリとしている。

それはシュミットやアノスも同様であり、ミレットは大きく肩を落とすと力づくの解決策を提示しようとジークが作っている栄養剤をテーブルの上に置く。

その瞬間に3人の顔は一気に引きつり、おかしな事をしないようにと紅茶へと手を伸ばす。


「……最初からこうすれば良かったですね」


「そ、そうかも知れませんが、あまり、毒扱いするとジークに悪いんじゃないですか?」


「本人も最近はこういう使い方をしているし、問題ありません。それより、フォトンさんも念のためにジークから何本か貰って置いてはどうですか?」


栄養剤に怯えて黙った3人の姿にミレットは疲れたように笑う。

その様子にフォトンは小さく肩を落とすがミレットは良い方法が見つかったと思ったようでフォトンにも薦める。

フォトンは苦笑いを浮かべてはいるが飲まされる可能性の高い3人の顔はどんどんと血の気が引いて行く。


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