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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第93話

「ただいま。戻りました」


「……ジーク、お前は何をしに行ったんだ?」


「いや、こっちにもいろいろとありまして」


ジークとノエルが簡易診療場になっている場所に戻るとリックはジークの担いでいるイノシシを見て眉間にしわを寄せた。


「とりあえず、手伝ってくれてる人にこれを預けて料理でもしてください。リックさん達だって食わないと体力が持たないだろうし、毒の処置は長期戦になるだろうから」


「まぁ、その件に関しては同意だけどな」


「それで、結局、被害はどれくらい出てるんですか? それによって、こっちも一気に量を作るか時間差で完成させていくか、作り方を決めて行くんで」


ジークはイノシシを下ろしながら、自分達がいない間に患者数など詳しい話は聞けるかと尋ねる。


「その件に関しては私が話をしましょう」


「領主様? お疲れ様です」


その時、タイミング良くアズが現れ、ノエルは慌てて頭を下げた。


「ノエルにジーク、2人の方こそ、お疲れさまです」


「それで、状況を聞かせてくれますか? あまり、遊んでいるヒマもないんでしょうし」


「そうですね」


アズはノエルの様子に柔らかな笑みを浮かべる。ジークは情報整理を素早く済ませたいようであり、アズはジークの態度に気分を害する事なく頷いた。


「……状況は良くないわけですね」


「はい。現状で言えば、避難以外の対策はありません。この場所も時期に後退しないといけないでしょう」


アズの説明では、鉱山内部からの作業員の撤退は済ませ、入口周辺を立入禁止区域として隔離したのだが、毒ガスは止まる事なく溢れ出しており、避難以外に対策はできないようである。


「あ、あの。ジークさんから、以前にも毒ガスが出たって話を聞いたんですけど、その時はどうやって、対処したんですか? 毒ガスの噴出口を閉じたんではないんですか?」


「……その時の領主が噴出口を崩して塞いだ。そこは避けて切削していたわけだが、結局は毒ガスを他の場所に溜めていただけだからな。根本をどうにかしないといけないだろうしな」


リックは応急処置的なものではどうにもならないと思っており、乱暴に頭をかく。


「まぁ、空気と混じって致死濃度より下げて、そこより遠くに退却するしかないだろうな。毒ガスがある程度溜まっていたものなら、少しずつ、噴出量も少なくなるだろうし、そうすればある程度の準備をして行けば奥に入れるしな」


「でも、ジークさん、それって時間がかかるんですよね?」


「……そうですね。溜まっている量次第ですけど、単純に今の状況では鉱山の中を探索するわけにはいきません」


ジークは自分にできる事はないと判断すると無難な策を選び、アズも作業員の命には代えられないため、頷いた。


「とりあえず、ノエル、俺達が今、やるべき事は治療薬の調合。毒ガスだ何だは調査員がきてくれるんだろうし、そこから新たに対策もたってくるだろうし」


「そうですね。以前に比べれば、その辺の調査だって進んでいるんだ。中和する方法も出てくるでしょうし、既に王都に調査依頼は出しましたから、近日中には調査団がきてくれると思いますから、彼らに任せましょう」


アズはすでに調査要請を出しているようで、調査員の到着までは現状維持でしかないと答える。


「調査員?」


「まぁ、簡単に毒ガスの種類とか分析して、対策や毒ガスの中和をしてくれる人達だ」


「えーと、アーカスさんみたいな人達ですか?」


「……そうだな。そんな人もいたな」


ノエルは調査員とアーカスを同列に思ったようであり、彼の名前を出すとジークもアーカスなら毒ガスの成分分析や中和もできると思ったようで眉間にしわを寄せた。


「アーカス?」


「変わり者のハーフエルフ。ハーフエルフなのに魔導機器を専門にしている。ジークの魔導銃の制作者だ」


聞き覚えのない名前に首を傾げるアズ。そんな彼女の様子にリックは簡単にアーカスの説明をする。


「魔導銃ですか? ジークは魔導銃を持っていると言っていましたね。魔導銃は失われた魔導技術の1つですよね。それを作る人がいるんですか?」


「いるんですよ。ただ……なぁ」


「そ、そうですね」


アズはアーカスに興味が湧いたようではあるが、ジークとノエルはアーカスを動かす事がどれだけ労力を使うか理解しているため、眉間にしわを寄せた。


「ジーク、ノエル、その方と面会はできるんでしょうか?」


「いや、できないと思います」


「……ジーク、どうして、即答何だ? 確かに気むずかしい奴だけど、お前が行けば話くらいは聞いてくれるだろ。むしろ、あいつなら、この状況も打破できそうだ」


ジークはアーカスとの面談は無理だと首を横に振り、彼の様子にリックは怪訝そうな表情で聞き返す。


「あー、普段なら、話くらいは聞いてくれると思いますけど、今は日が悪いんですよ。この間、魔導銃の修理を頼みに行った時に、ちょっとしたものを置いてきて、たぶん、今はそれに夢中。リックさんもしてるでしょ。アーカスさんが何かに集中し始めると他人の話は聞かないと言うか、アーカスさんの家まで辿りつけるかが怪しい」


「……まだ、罠があるのか?」


リックもアーカスの家に言った事があるようで、罠の事を思い出して眉間にしわを寄せた。


「むしろ、悪化してます」


「……凄かったです」


2人は先日、アーカスの家に行った時の事を思い出したようであり、顔を引きつらせる。


「時間がないんです。ジーク、その方の元に案内してください」


「いや、俺、調合があるんで、まずは人命優先で行きましょう。それに昨日の今日だし、絶対に対応してくれません。治療薬を作ってからの方が時間の無駄がないです」


「そうだな。ジークが治療薬を作って2日、その後に村への往復をしても調査員がくるより速い。ジーク、調合に移ってくれ」


アズはアーカスの元に案内して欲しいと頭を下げる。しかし、ジークとリックはアーカスの性格を考えた上で作業に優先順位を付ける。


「待ってください。それでも、使者は出すべきだと」


「領主様、たぶん、ジークさん以外はアーカスさんは会ってもくれないです」


アズは納得がいかないようだが、ノエルは首を横に振る。


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