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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
925/953

第925話

「どうかしたか?」


「……なんでもありませんわ。それでヴィータさん、ご協力願えますか?」


「ふむ」


カルディナの態度にジークは首を傾げると彼女は慌てたように首を横に振った後、姿勢を正すとヴィータに頭を下げた。

ヴィータはすぐに返事ができないようで考え込んでしまい、返事が来ない事にカルディナは不安そうな表情をする。


「ダメですか?」


「ダメではない。と言うか、エルト王子、ライオ王子からの指名なら協力しなければいけないだろう。それにアンリ王女の若々しい身体を揉みしだく事ができるなどご褒美でしかない!!」


「どうしましょう。もの凄く不安になってきましたわ……本当にこの人の力が必要なのですか?」


ヴィータから協力できないと言われると思ったのかカルディナだが、ヴィータはアンリの身体を弄り回して良いと聞き、口元からよだれを溢れ流し始めた。

その様子にカルディナは眉間に深いしわを寄せるが彼女に協力を仰がなければいけないのかとジークの腕を引いて聞く。


「正直、不安だけど俺やミレットさんはヴィータさんほど詳しくないからな」


「そうですか……どうやって、アンリ様を守れば良いんでしょうか?」


「それは追々考えたら良いさ。代わりにフィアナやリアーナさんに協力して貰ったりして」


ヴィータの治療法をジークはまだすべて覚えきっていないため、首を横に振る。

カルディナはアンリの事が心配のようで頭を悩ませ始め、ジークはその姿に苦笑いを浮かべた。


「……ジークさん、おかしな事を言わないでくれませんか?」


「何の事だ?」


「私はイヤですよ。それにアンリ王女の治療なら、私が揉まれる必要はないじゃないですか。ヴィータ様も正気に戻ってください」


その時、ジークの話が聞こえていたのかお茶菓子を運んできたフィアナが彼を睨みつける。

彼女の視線にジークはとぼけるように笑うとフィアナは頬を膨らませながら人数分の紅茶を並べて行く。

紅茶を並び終えたフィアナは1つ咳をするとヴィータの背後に回り、杖で彼女の頭を軽く叩いた。

その杖は魔導機器なのか光を発するとよだれを垂れ流していたヴィータの表情は一瞬で引き締まってしまう。


「……フィアナ、その杖は魔導機器か?」


「はい。ソーマさんが以前、遺跡探索で手に入れた物だと言っていました。叩かれた者の精神を安定させる効果があるそうです。先日、エクシード家のメイドになるのにいろいろと相談をしに行った時に頂きました」


「それはヴィータさんを相手にするには欠かせないな。と言うか、誰が何の目的でこんな魔導機器を作ったんだよ?」


ヴィータの表情の変化にジークは何が起きたかわからないようで眉間に深いしわを寄せる。

フィアナはこの魔導機器に助けられていると言いたいのか満面の笑みで答えるがジークは製作者の意図がわからないようで大きく肩を落とす。


「……いつの時代にもおかしな暴走をする人がいるんでしょう?」


「そうだな」


「クー」


カルディナは呆れたのか大きく肩を落とすが、彼女も暴走にかけてはヴィータの事を言えず、ジークとクーは彼女を見て苦笑いを浮かべた。

自分がバカにされている事を察したのかカルディナはジークへと鋭い視線を向けるとジークは何もなかったと言いたいのか何事もなかったかのようにしている。


「しかし……問題がいくつかある」


「問題ですか?」


「ふむ。カルディナ嬢は噂通り、頭に血が上りやすいようだ。その年で国を支えて行くと言われてはいるがまだ経験は浅いようだ」


その時、ヴィータは何かを考えていたようでゆっくりと口を開いた。

問題と聞き、カルディナは首を傾げるがヴィータは今の彼女にはまだ経験が不足していると言う。

その言葉にカルディナはムッとするものの、ヴィータの機嫌を損なってはいけないと何とか平静を務めている。


「フィアナがいるから、ヴィータさんが王都に行く事はできるだろうけど、実際問題、ヴィータさんが王城に入ってもアンリ王女を診察させて貰えるかはわからないからな」


「その通りよ。アンリ王女の診察となれば当然、お抱え医師からは睨まれるし、面倒事に巻き込まれる事はわかっているわね。ミレット嬢の事だ。食事やその他の事についてはすでに手を打っているだろうが、我々がやろうとしている事は突然にアンリ王女の体調が良くなるわけではない。ゆっくりと時間をかけて体力をつけさせないといけないのだ。成果が出なければ難癖を付けて処罰される可能性も高い」


「……そうですね。ミレットさんはあはは、うふふと笑いながら、エルト王子やライオ王子を手玉に取っている気がしますね」


ヴィータが考えている事はジークも考えていたようで困ったと言いたげに頭をかく。

現状、アンリを診察する医師達の場所にヴィータが入り込む余地などないように見え、彼女は難しいと大きなため息を吐くがジークやミレットが考えているアンリの治療法は正確に理解しているようである。

ジークは王城に残ったミレットが根回ししてくれている事を願っているようだが、いつも自分が振り回されている2人をミレットならば振り回せる気がしたようで眉間には深いしわが浮かび上がって行く。


「あの、アンリ王女の治療に関してはそれなりに理解できましたけど、ヴィータ様がワームを抜けても良いんですか? 実際、今日の訪問ってシュミット様やカインさん達も知らないんですよね?」


「それもありますね。エクシード家を完全にこちら側に組み込めれば良いのですけど」


「確かに……静かに」


問題はそれだけではないのではとフィアナは首を傾げるとエクシード家は現在、シュミット側とギムレット側で日和見を行っている事が問題だとカルディナが手を上げる。

ジークはどうして良いのかわからずに首を傾げていると何かに気が付いたようで声を潜めるように言うとドアに向かって歩き出す。


「……来たか。ジークくん、こっちに戻ってきた方が良い。カルディナ嬢、転移魔法の準備をしてくれないか?」


「転移魔法の準備? どこに行きますか?」


「とりあえずは交渉次第だが私もシュミット様に正式に面会してみたいな。ただのヴィータとしてだがな」


ヴィータは彼が感じ取った物を予想していたようで指示を出し始める。

カルディナは意味がわからずに首を傾げるとジークは彼女の指示に従い、ドアから離れて冷気の魔導銃へと手を伸ばす。


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