第924話
「ほう……あなたがオズフィム家のカルディナ様か」
「……お願いですから、そう言う獲物を狙うような目で人を見ないでください」
「そ、そうです。失礼ですわ」
フィアナの案内でエクシード家の屋敷を訪れたジークとカルディナはヴィータの部屋へ案内される。
ジークはカルディナとヴィータにお互いを紹介するとヴィータはカルディナを舐めまわすように観察しており、カルディナはジーク達から聞いた彼女の印象に恐怖を抱いているようでジークの後ろに隠れてしまう。
その様子にフィアナは小さくため息を吐くとメイドとしてエクシード家に潜り込んでいるため、客人にお茶を運ぶために部屋を出て行った。
「とりあえず、落ち着きましょうか、話しもできないから」
「そうしたいところはやまやまだが、私にとってはカルディナ嬢の筋肉や肌の張りの方に興味がある」
「……相手を怖がらせると話にもならないでしょう」
フィアナが部屋から出て行った事にジークは逃げられたと思ったようでため息を交じりで話を始めようとする。
しかし、ヴィータにとってはジークとカルディナの頼み事よりはカルディナの身体に興味があるようで目をらんらんと輝かせながらカルディナとの距離を縮めようとゆっくりと立ち上がった。
彼女の様子にカルディナは完全に怯えてしまったのかジークの背中で震えており、眉間に深いしわを寄せる。
「ジークくん、君はなんと言うか、役得と言う位置にいるな。ノエルと言い、カルディナ嬢と言い」
「……意味がわかりませんけど、それより、本当に本題に入っても良いですか? あんまり、ワームに長居したくないんで」
「ふむ。確かにワームでジーク=エルアくんがいるのは問題か?」
可愛い女の子が背後で震えているジークが羨ましいのか、ヴィータは舌打ちをするが言われているジークには意味がわからずに大きく肩を落とす。
このまま、ヴィータの話を聞いていては何も話が進まないため、ジークは強制的に話を始めようとするとヴィータはカルディナの身体に触らせて貰えない事への当てつけなのかジークの家名を『エルア』と言う。
その言葉にジークは少しだけムッとするものの、ここで自分が熱くなっては話を進める事はできないと思ったようで深呼吸をして表情を引き締めた。
「ふむ。反応してくれないとそれはそれでつまらないな」
「別に父親がレギアス様の弟だったって言うのは事実ですしね。腹を立てていても仕方ありませんから」
「仕方ない。ジークくんがギムレット老の手に堕ちるのもエクシード家としてあまり良くないから話を聞こうじゃないか」
ヴィータはつまらないと言いたいのか小さくため息を吐くとジークは頭をかく。
ジークをからかっていても仕方ない事はヴィータにもわかっているようでため息を吐くとジークに話すように言う。
許可が出た事にジークは胸をなで下ろすと背中に隠れているカルディナを引っ張り出して話すようにと肩を叩いた。
カルディナは恐怖を振り払うように1つ深呼吸をするとゆっくりとアンリの治療に協力して欲しいと話し始める。
「……アンリ=グランハイム様の治療? ずいぶんと大物の名前が出てきた物だね」
「普通に驚くだろうな」
「そうですね。ジーク、私は病状については詳しく語れませんから、説明をお願いいたします」
ヴィータは症状を聞く前にアンリの名前に驚きの声を上げている。
その様子にジークは苦笑いを浮かべているとカルディナはジークにここから先はジークの仕事だと言う。
「俺か?」
「……私がわかると思っているのですか? だいたい、診察をしたのかあなたとミレット様でしょう」
「そうかも知れないけど、まあ、俺から説明するよ……ヴィータさん、待て」
指名されたジークは首を捻るとカルディナは呆れたと言いたいのか大きく肩を落とす。
彼女の様子にジークは苦笑いを浮かべるとヴィータに許可を貰おうとするが彼女は我慢の限界が近いようで荒い息を上げてカルディナを見ている。
それに気が付いたジークはカルディナを後ろに下げてヴィータに落ち着くように言う。
「……すまない。流石にアンリ様に手を出しては自分の身が危険になる可能性もあるのでな」
「近場で手を打とうとしたにしても相手が悪いぞ。おっさんは面倒だ」
「……ふむ。ラース=オズフィム殿か? 確かにあれは怒らせると暑苦しそうだ。ジークくん、始めてくれないか」
ジークに制止され、ヴィータは我に返ったようで深呼吸をする。
暴走していても主家に手を出す事ははばかれていたようであり、ジークはその姿に小さくため息を吐くとカルディナを襲った時に考えられる面倒事を挙げる。
ヴィータの耳にもラースのバカ親っぷりは届いているようで眉間に深いしわを寄せるとジークに続きを話すように促す。
「俺とミレットさんの診断では必要なのは体力の底上げって感じです。たぶん、病気が治ってもすぐに新しい病気にかかっているようで、それを繰り返しているように見えました」
「ふむ。なるほどな……それなら私の治療はそれなりに有効的ではあるな」
「待ってください……アンリ様の体調不良はそんな物なんですか? それなら、どうしてどの医師も治す事ができなかったのですか?」
ジークは簡潔にアンリの症状を話すとヴィータは表情を引き締め考え始めるのだが、カルディナはここで始めてアンリの病状を聞いたためか眉間に深いしわを寄せる。
「病気の治療はしているが、それ以外の事はしていないと言う事だろう。王家のお抱えの医師となれば治療するだけで相当な謝礼金が出るだろう。それを繰り返して富を得ていたわけだな」
「何ですか。それは」
「落ち着けよ。医師によって治療法は様々だしな。患者本人の体力を上げて病気にかからないようにするって言う考え方を持っていないって可能性もあるからな」
ヴィータはカルディナの疑問に簡単に答えると彼女は王家のお抱えの医師達がアンリの事を何も考えていない事に腹を立てているのかテーブルを叩く。
治療法は医師によると言ってジークは彼女をなだめようとするがカルディナの怒りは治まらないようでジークの胸ぐらをつかむが何かあったのかすぐに手を放し、距離を取る。