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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ルッケル騒動
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第92話

「ジークさん、重くないですか?」


「……かなり重い」


薬草集めを終えて、ルッケルに戻ろうとするが、イノシシは重くジークの足取りは進まない。


「どうするかな? 置いて行くには勿体ないし、だけど、いつまでも血の臭いを引きずって歩いていたら、獣をルックルに近づける事にもなるしな……」


「どうかしましたか?」


ジークはルッケルの安全の事も考え、ため息を吐いた後にノエルへと視線を向けた。


「いや、何でもない。ノエルには俺がイノシシを持っている分、薬草を担いで貰ってるし……失敗したよな。カバンを持ってきてたら、詰め込めたのに」


「テントとか入ってるカバンはジルさんの宿に置いてきてしまいましたもんね」


「こんな事になるなんて思ってもみなかったからな。考えなしで動いてたら、フィーナと変わらないじゃないかよ」


ジークは自分の行動とフィーナの行動が重なってしまったような感覚に陥ったようで、酷く落ち込んでいるように見える。


「あ、あの。ジークさん、流石にその言い方はフィーナさんに対して失礼じゃないかな? と思うんですけど」


「失礼じゃないから」


「で、ですけど、フィーナさんを追いかけなければ、わたし達は何もできなかったかも知れないわけですし、事故の対処に直ぐに動けるのはフィーナさんのおかげです」


「……確かにそれに関しては一理あるか」


フィーナをフォローしようとするノエル。そんな彼女の言葉を聞いたジークは忌々しそうに舌打ちをする。


「ど、どうして、そんな反応なんですか!?」


「いや、冗談だから、まぁ、今回の件に関してはフィーナもたまに役に立つと言う事にしておこう」


ジークは冗談だと笑うとフィーナへの評価を少しだけ上げたようであるが、彼女へのジークの評価は最低ランクのため、あまり変わっている様子はない。


「どうして、素直に誉めてあげないんですか?」


「誉める要素が見つからないから、だいたい、人が作ったものの使い方も理解しないくせに盗んでいく神経が信じられない」


ノエルはジークは素直ではないと苦笑いを浮かべるが、ジークにとっては長い間、フィーナに巻き込まれているための実体験での評価でしかない。


「で、ですけど、どうして、フィーナさんがそんな行動に出ているとかは気にしないんですか?」


「しないな。あいつは俺の稼ぎを食いつぶす害虫でしかない」


「……ジークさんって、鈍いんでしょうか?」


ノエルはジークの反応から、彼が鈍いのではないかと思ったようで小さな声でつぶやく。


「ノエル、何か言ったか?」


「い、いえ、何でもありません。そ、それより、あのアーカスさんが作ったカバンって凄いですよね。あんなに小さいのにテントとか寝袋とかたくさんの物が入るんですから」


ノエルは慌てて誤魔化そうとジークが宿に置いてきたカバンの話をする。


「あぁ。なんか、色々な小型の魔導機器を積んであるみたいで、物の重さを軽くする魔法とか、持つ人間の腕力を永続的にあげる魔法とか……どうして、気がつかないんだ?」


「どうかしましたか?」


ジークは話の途中で何かに気が付いたようで自分の間抜けさに大きく肩を落とした。


「ノエルは補助魔法を使えるんだよな?」


「はい。攻撃魔法が使えない代わりに少し自信があります。それで、それがどうかしたんですか?」


ノエルはジークの問いに遠慮がちだがしっかりと答える。


「補助魔法で腕力をあげる魔法ってあるよな?」


「そうですね。ありますね……」


ジークの言葉にノエルも彼が言いたい事が直ぐに理解できたようで2人の間には微妙な空気が広がって行く。


「そ、それじゃあ、行きますね」


「そうだな。お願いするよ」


ノエルは担いでいる薬草を一度、地面に下ろすとこの空気を振り払うように杖を構え、魔法の詠唱を行う。


「お、凄いな。軽くなった。補助魔法って便利だな」


「あ、ありがとうございます」


「礼を言うのはこっちだから、ありがとな。ノエル」


「は、はい」


ノエルの魔法の詠唱が終わると淡い光が2人を包み込んで行き、ジークは身体に感じるイノシシの重さが軽くなってきたように感じる。


「それじゃあ、行くか? 魔法の効果時間ってのもわからないし」


「そうですね……あの、ジークさんって補助魔法あまり使わないんですか?」


2人はルックルに向けて、再び歩き始めるとノエルは補助魔法に驚いていたジークに疑問を感じたようで首を傾げた。


「まぁ、俺もフィーナも魔法を覚えてないからな。アーカスさんからたまに魔導機器を借りるけど、俺の戦い方に腕力ってあまり関係ないからな。それに使うとしたら、素早さをあげるとか、防御に関してだろうし」


「そうですか。確かに魔導銃だと腕力って使わないですよね」


「魔導銃で直接、何かを打ん殴るなら、別だけどな。そんな使い方する人間はいないって、そんな事をして、大切な相棒を壊すわけにもいかないしな」


ジークの戦い方ではあまり補助魔法に頼る事もなかったようであり、苦笑いを浮かべる。


「まぁ、便利なのはわかったし、ノエルに教えて貰うかな? ギドにも才能はあるんじゃないかって言われたし、薬草を集めに行った時に積載量が増えるのは重要だからな」


「わかりました。でも、わたしは厳しいですよ」


「そうか。怒られないようにしないとな」


ジークは先日に遺跡で出会ったゴブリンのギドに言われた事を思い出したようであり、ノエルは彼の言葉に任せて欲しいと胸を張る。ジークはそんな彼女の姿を見て優しげな笑みを浮かべる。


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