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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第919話

「それでシュミット様に伝えて欲しい事って何だ?」


「もう少し、ゆっくりしないかい? 紅茶もまだだし」


「……時間無いんじゃないのかよ」


研究室に備えてある来客のソファーに腰を掛けたジークはエルトに本題に移るように言う。

エルトは公務から解放された事でゆっくりしたいようで紅茶が来てからだと言い、ソファーでだらけている。

その様子にジークは大きく肩を落とすが彼が大変なのは理解もできており、強く出る事はできない。


「良いじゃないか。私がいくら頑張って説明してもジークだけでは心もとないんだから、カルディナもクーの事で覚えてくれるかわからないからね」


「……悪かったな」


「それなら、私が同伴しようか?」


エルトは伝言をジークに預けるのが不安だとため息を吐くとジークもすべて覚えきれる自信がないようで眉間にしわを寄せる。

2人の様子にライオは好機と思ったのか手を上げるが、流石にライオを王都から出すのは危険だと考えたジークとエルトは首を横に振った。


「……バカな事を言うな」


「ライオも王都から離れて欲しくないんだよね。いろいろと面倒だから」


「そう言うのなら、お2人とも警護も付けずに街を歩き回らないでください」


ジークは眉間にしわを寄せながら、絶対に王都から出さないと言う。

ライオが王都から離れる事には危険が伴ってくるため、エルトはジークに続く。

しかし、警護を付けずに街中を歩き回るエルトにも同様の事が言え、カルディナは大きく肩を落とした。


「それは聞けないね」


「……頼むから聞いてくれ」


「そうですね。エルト様はリュミナ様を守らないといけないんですから、あまり1人で歩き回られては困ります」


エルトはきっぱりと王都を1人で歩くのは聞き入れられないと言い、ジークは大きく肩を落とす。

その時、紅茶を運んできたミレットがジークの意見に同意を示した。

彼女の言葉の中にはエルトの妃になるであろうリュミナの名前があり、彼女の名前にエルトはバツが悪そうに視線をそらす。


「守らなければいけない人がいるのなら、もう少し、相手の事も考えてくださいね」


「気を付けるよ」


「それじゃあ、ミレットさんもきたし、始めるか?」


彼の表情にエルトとリュミナの関係を良好だと感じ取ったミレットはくすくすと笑う。

エルトは口ではミレットに勝てないと考えたようで大きく肩を落とした。

その様子にジークは苦笑いを浮かべると本題に移ろうとエルトを促す。

エルトはリュミナとの事を追及されるよりは本題に移ってしまった方が良いと考えたようで大きく頷くと表情を引き締める。

それと同時に研究室の空気は張りつめて行く。


「以前に王都でアンリの病気が魔族の呪いが原因だと言う噂が流れた事は覚えているかい?」


「ああ……でも、噂だろ?」


「噂なんだけどね。確証も何もないんだけどね」


エルトはゆっくりとした口調で話し始める。

それは以前から王都で広がっていた噂であり、ジークはその噂に何があったのかと聞く。

エルトもただの噂のため、どうしてこうなったかわからないと言いたいのか大きく肩を落とした。


「その噂の話をしたいと言う事は魔族討伐が行われると言う事でしょうか?」


「私はそんな話は聞いていないけど」


「それはライオが王城と魔術学園を行ったり来たりしているだけだからね。噂と言うのは自分で調べ上げる物だよ」


噂からミレットは魔族討伐隊が組まれてしまうと思ったようで難しい表情をする。

ライオはそこまで大きな噂にはなっていないと思っているようで首を捻るとエルトは独自の情報網を築いているようでため息を吐いた。


「……エルト様はもう少し大人しくしていただけませんか?」


「そう言わないでよ。私もいろいろと考えているんだからね」


「待てよ。本当に魔族討伐が起きるって言うのか?」


カルディナはもう少し落ち着いて欲しいとため息を吐く。

エルトはそこまで非難しないでくれと大きく肩を落とすとジークはミレットの言う通り、魔族討伐が起きてしまうのかと聞き返す。


「国では魔族討伐隊を作る気はないよ。現状で言えば、こんな噂では軍は動かせない」


「それなら」


「あくまでも軍は動かせないって事だよ。だけど、人気取りをしたい者達はそうもいかないだろ」


エルトの口からハイム国としては噂で動く事はないと聞かされ、胸をなで下ろすジークだが、話はそう簡単に行かないようでエルトの眉間には深いしわが寄っている。

人気取りと聞いた事やエルトが伝えたい相手がシュミットだと聞いたジーク達はエルトが言っている人間に心当たりがあるようで眉間にしわが寄った。


「……行動を起こそうとしているのはギムレット=エルア。王都の冒険者達から聞いたんだけどね。魔族を討伐するために冒険者を本格的に雇い始めたと責めるべき場所はジーク達の方が詳しいね」


「ああ……だけど、あの場所にいる奴らはそんな事を起こすような奴らじゃない」


「私もそう思うよ。ジーク達が信頼しているんだからね。ただね」


エルトはゆっくりとした口調でジーク達が考えていた名前を挙げる。

それは予想していた通り、ジークの祖父である『ギムレット=エルア』であり、ジークはワームの近くにあるゴブリン族とリザードマン族の集落は攻められる事などしていないと言う。

エルトも同じ考えではあるが、ギムレットの野心に気が付いているため、眉間に深いしわを寄せた。


「シュミット様に伝えてどうにかなるんですか? 言いたくはありませんがギムレット=エルアはシュミット様の話を聞くとは思えませんが」


「……そこが問題なんだよ。シュミットは私の指示で魔族との共存を視野に入れて動いてくれている」


「はい。ワームでは先日の件でゴブリン族とリザードマン族の集落とは不可侵条約を結んだと言う事になっています。目立った争いも起きていませんし、集落に迷い込んだ人族も保護され、宿場町まで送られてきたと言う報告も受けています」


ミレットはシュミットとギムレットの争いは表面化していないものの、素直にギムレットが引くとは思えないと言う。

エルトが心配している所もそこであり、カルディナはシュミットが魔族と結んだ平和的な解決法を話し、比較的、上手く行っている関係を壊す意味がわからないとため息を吐いた。


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