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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第918話

「エクシード家のヴィータ嬢か……いろいろと面白い治療法もあるんだね」


「そうだな」


「女性みたいだし、ワームの有力者ならアンリの診療もして貰えるかな?」


カルディナの研究室の掃除を行いながら、お互いの情報交換を行う。

ライオはヴィータの話を聞き、彼女にアンリの病状を見て貰えないかと思ったようだが、その言葉でジークとミレットの眉間には深いしわが寄る。


「腕は信用できるけど……止めておいた方が良いと思うぞ」


「……先ほどから気になっていたのですけど、そのヴィータさんには何かあるのですか?」


「えーと、本人は否定していましたけど……女の子が大好きのようですので、アンリ様の身に危険が及ぶかも知れません」


アンリの診察は考え直した方が良いとジークは首を横に振る。

2人の反応に疑問を抱いていたカルディナは眉間にしわを寄せて聞くとミレットは苦笑いを浮かべながらヴィータの性癖を話す。

説明を聞くものの、それほど危険には感じなかったようで首を傾げるライオの肩にジークは手を置き、首を横に振った。


「そんなに危険なのかい?」


「……変な道に進めたいなら止めないけど止めておいた方が良いと思うぞ」


「わかった。止めておくよ……だけど、ワームも大変みたいだね。兄上の様子を見ていると早くシュミットに帰ってきて貰いたいみたいだけど」


ライオはジークの様子に苦笑いを浮かべるとワームの状況に困ったと肩を落とす。

ワームは表立ってはいないが勢力争いは大きくなっているのは容易に想像がつく。

その渦中にあるカルディナは大変だと言いたいようで眉間に深いしわを寄せており、ミレットはその様子に気が付いたのか部屋の中を飛んでいるクーを呼ぶ。


「クー?」


「カルディナ」


「は、はい」


ミレットの前に飛んできたクーは何かあったのかと首を捻る。

クーをミレットは抱き締めるとカルディナを呼び寄せた。

目の前にカルディナが現れた事でクーは嫌そうな表情をするが、ミレットは気にする事無く、彼女の前にクーを差し出す。

カルディナはクーの顔を見て目を輝かせるが、このまま、襲い掛かっては嫌われると思ったようで1度、後ろを向いて深呼吸をする。


「……成長しているな」


「そうだね」


「それより、王都の方は大丈夫なのか? リュミナ様の事とかいろいろと大変なんだろ?」


カルディナが自分を落ち着かせようとしている姿にジークとライオは顔を見合わせて笑う。

それに気が付いたカルディナがジークだけを睨み付けて威嚇するとジークは話をそらそうとライオに王都の状況を聞く。


「そうだね。いろいろと大変だよ。蛇の方はフィリム先生から預かった資料で何とか原因はつかめたけど、ジークがアンリの治療方法を見つけてくれないから、アンリはまだ具合が悪いままだし」


「……その話は一先ず、忘れてくれ」


「冗談だよ。とりあえず、根回しは継続中かな? 義姉上の事やアンリをお抱え医師以外に診察させる事もね。まぁ、兄上が動いているから、私はどこまで進んでいるかわからないけどね。ご希望なら、兄上にジークが王都に来ていると伝えるよ」


ライオも王都の状況を説明しようとするが、久しぶりに会った事もあるのかジークをからかうように笑った。

アンリの治療に何もできていない事もあり、ジークが触れて欲しくないとため息を吐くとライオはジークの反応に満足げに笑みを浮かべると詳しい話が知りたいのならエルトに連絡しようかと言う。


「いや、連絡しなくても良い。会うと面倒な事になりそうだから」


「そうだね。今の兄上は前以上に自由が無くなっているから、連絡でもしたらすぐにここに現れるよ」


「止めてくれ。本当に現れそうだから……」


ジークはライオとエルトがそろうと面倒な事にしかならないと思ったようで首を横に振る。

彼の表情にライオは苦笑いを浮かべるとエルトが多忙だと話し、その分、休養になるものには飢えていると言う。

その言葉にジークは大きく肩を落とすが何かイヤな予感がしているのか、眉間には深いしわは寄って行く。


「ジーク、どうかしたんですか?」


「いや、さっきから、面倒事に巻き込まれるようなイヤな予感がしているんだよな」


「それはきっと、これの事でしょうね。エルト様もジーク達が魔術学園に来たら連絡するようにと指示を出していたようです」


クーを抱きかかえてご満悦なカルディナはジークの様子に首を捻った。

ジークは眉間にしわを寄せたまま、おかしな危険感知能力を発揮しているとミレットが入口の方からエルトを連れてくる。

エルトは笑顔でジークに手を振るが、ジークはイヤな予感が当たってしまった事に大きく肩を落とす。


「久しぶりなのにその反応は酷いよ」


「そう思うなら、おかしな話を持ってくるなよ」


「おかしな話より、シュミットに伝えて貰いたい話があってね。フィリム教授にも頼んだんだけど、そんな物には興味がないって断られちゃってさ。伝令より、ジーク達の方が速いだろ」


エルトはジークの反応にわざとらしく肩を落とすと原因はいつもエルトだと言う。

その様子にエルトは苦笑いを浮かべるが、すぐに表情を引き締めるとシュミットに伝令があると話す。

彼の様子から話の内容が面倒事だと言う事は直ぐにわかるが、ジーク達にも深くかかわっている事は理解できたようで表情を引き締める。


「面倒事か?」


「残念ながら面倒事だね。それもかなりの面倒事だよ。頭が痛くなるくらいにね」


「長くなりそうですね。紅茶でも淹れてきましょうか?」


ジークの表情の変化にエルトはわかってくれたと思ったようで小さく肩を落とす。

ミレットは真面目な話になるため、掃除などしていられないと思ったようであり、紅茶を淹れて来ようかと言うがカルディナが長い時間、空けていたため、この研究室には紅茶の葉は無いと首を横に振る。


「それなら、ミレット、これ」


「……兄上、なんで、紅茶を持ってきているんですか?」


「長話になると思ったからね」


残念だと肩を落とすミレットにエルトは懐から買ってきたばかりの紅茶の葉を渡す。

ライオは準備の良い、エルトの様子に大きく肩を落とすがエルトはくすりと笑う。


「それでは私は紅茶を淹れてきますね」


「お願いします。カルディナ様、悪いな。掃除はまた後で手伝うから許してくれ」


「状況くらい理解できますわ。その代り、その時はクーちゃんも同伴ですよ」


ミレットは紅茶を受け取ると研究室に付けられたキッチンに向かって行く。

ジークは掃除が中途半端になってしまったため、カルディナに謝る。

彼女も状況は理解できているため、仕方ないと頷くものの、今度もクーを連れてくる事を交換条件として提示し、ジークは苦笑いを浮かべながら頷いた。


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