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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
908/953

第908話

「……ヒマね」


「そう言わないでください」


「失礼します……どうかしましたか?」


ジークとシーマが資料作成に移りしばらくするとやる事が無くなったフィーナは不満そうに言う。

余計な事を言うとカインが使い魔で現れる可能性が高いため、レインは苦笑いを浮かべた。

その時、ドアを叩く音が書斎に響いてフィーナとレインは身構えると紅茶とお茶菓子を運んできたフォトンが中に入ってくる。

フォトンは2人の様子に首を傾げると、フィーナとレインは彼の後ろからカインの使い魔が入っていないかを確認するように覗き込んだ。


「……居ないわね」


「居ないですね」


「何があったんですか?」


フィーナとレインは顔を見合わせて頷くとなんとなく意味を理解したようでフォトンは苦笑いを浮かべる。


「シーマ様、ジークさん、休憩にしませんか?」


「そうですね……フォトンさん、あの2人は何をしているんですか?」


「たぶん、カイン様の使い魔を警戒しているんじゃないでしょうか?」


警戒を緩めない2人を余所にフォトンはジークとシーマに声をかけて、紅茶を並べた。

ジークは頷くとフィーナとレインの姿が目に映り、首を傾げるとフォトンは自分の考えを話す。

彼の言葉にジークとシーマは納得ができたようで小さく肩を落とした。


「フォトンさんはカインが何をしているか見てきたんですか?」


「はい。カイン様はアーカスさんや土地の研究をしてくれている方達に話を聞いています」


「……それなら、少しは安全ね。フォトンさん、私にも紅茶、ちょうだい」


フォトンがカインの後を追いかけて行った事もあり、カインの同行を知っているのかと聞く。

カインはこの屋敷で研究を行っている人間に話しを聞きに来たようでフィーナは安心したのかソファーに腰を下ろしてフォトンに紅茶をねだる。

フォトンは小さく頷くとフィーナとレインの分の紅茶も用意し始め、レインもソファーに腰を下ろす。


「……油断して良いのか?」


「どういう事?」


「あいつなら、どこからともなく現れるぞ。むしろ、すでに書斎に入り込んでいる可能性の方が高い」


お茶菓子を頬張っているフィーナの姿にジークは頭をかく。

意味がわからずに首を傾げるフィーナにジークはカインの使い魔はどこかに隠れているのではないかと言う。

その言葉にフィーナはもう1度、周囲を見回すが特におかしな様子も見つからず、ジークを睨み付ける。


「おかしな事を言わないでよね」


「いや、あいつの場合、使い魔を使った魔法も日々、変化させているから、転移魔法と使い魔を併用させて何もないところに使い魔を飛ばしてきそうだ」


「良く分かっているね」


フィーナの目ではカインの使い魔は見つけられず、頬を膨らませてジークに文句を言うジークはカインなら何かしてもおかしくないとため息を吐く。

その瞬間を狙ったようにフィーナの頭の上に光の玉が浮かび上がり、弾けると同時にカインの使い魔が現れる。

カインの声が響いた事にフィーナの顔は引きつり、カインの使い魔のくちばしは彼女の額に突き刺さった。


「……どうやって現れるんですか?」


「魔法って言うのは日々、進化しているんだよ。過去の記録から学び、それを進化させて未来につなげるのが俺達、現代を生きる人間の仕事だよ」


身もだえ、床をのたうち回るフィーナとその姿を見下ろしているカインの様子にシーマはため息を吐く。

カインの使い魔は開いているソファーの上に降りたつと使い魔は光を上げ、光が消えた先にはカインの本体が座っている。


「……お前、もうなんでもありだな」


「何を言っているんだい? これはジークも見た事あるじゃないか。ありがとう。フォトン」


「そうだとしてもな……フィーナ、止めておけ」


現れたカインの姿にジークはため息を吐くが、フォトンはカインの前に紅茶を置き、彼は礼を言う。

ジークは納得が行かないと言いたいのか頭をかくと怒りの形相をしたフィーナが立ち上がり、カインの後ろに立つ。

返り討ちに遭う姿しか目に浮かばなかったジークは彼女を止めるが、フィーナはカインの後頭部に向かって拳を振り下ろそうとする。

カインは後ろを振り返る事無く、裏拳を放った。

その攻撃は彼女の鼻に直撃し、彼女の顔を鮮血で染めるが、フィーナはその程度の攻撃で怯む気はないようで拳を振り下ろす。

しかし、彼女の手にはカインの後頭部を打ち抜いた感触など残らず、ソファーにはカインの使い魔の小鳥が乗っている。


「……お前、本当に何がしたいんだ?」


「それより、ジーク、フィーナを止めなくて良いの?」


「俺の頭に乗るな……フィーナ、落ち着け。俺は関係ないだろ」


ジークは大きく肩を落とすとカインの使い魔は彼の頭の上に乗った。

フィーナの目は血走っており、ジークの頭の上のカインの使い魔を見ている。

その目にはジークの事など映っていないようでジーク事、カインの使い魔を攻撃しようとしているようにも見え、ジークは落ち着くように声をかけた。


「……ジーク、動かないでね。すぐに済むから」


「待て。落ち着け」


「お前達は何をやっている? ふむ。特に問題はないな。影響を受けて威力が無くなっている可能性も考えられたが」


フィーナは目を血走らせたまま、ジークとの距離を縮めて行く。

このままでは自分も攻撃対象にされてしまうため、ジークは顔を引きつらせる。

すでにジークの言葉を聞く気のないフィーナはジークに向かって拳を振り下ろそうとした時、アーカスがドアを開け、冷気の魔導銃でフィーナを撃ち抜いた。

冷気の魔導銃で撃ち抜かれたフィーナの身体は凍り付き、アーカスは魔導銃の性能を確認するように言う。


「助かった」


「お前達は何をしているんだ? ジーク、受け取れ」


「俺に聞かないでくれ。カインが来なければおかしな事になっていないんだ」


ジークは胸をなで下ろすとアーカスは魔導銃をジークに向かって投げて渡す。

受け取ったジークは魔導銃に何かされていると思ったようで魔導銃を眺めながら、頭の上のカインに文句を言う。


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