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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第899話

「……お前達は一足飛びで私の苦労をすべて無駄にするな」


「そんなつもりはないんですけどね。こっちも今回は偶然ですし」


「責めているつもりはない。こちらも行き詰っていたから、ありがたい」


ヴィータと交渉を終えたカインは1人で報告のためにワームにあるシュミットの屋敷を訪れる。

シュミットは報告を受けると彼もエクシード家を味方に引き込むために動いていたようであり、大きく肩を落とす。

カインは若干、責められている気もしたようで苦笑いを浮かべるとシュミットは素直に頭を下げた。


「しかし……ヴィータ=エクシードか? お前達の周りにはおかしな人間が集まるな」


「それは言いがかりです。だいたい、ヴィータさんは俺の想像を遥かに超えていました」


「カイン、お前がそこまで言うのだから、濃いんだろうな」


カインの説明の中にはしっかりとヴィータの変態性も込められており、シュミットは眉間にしわを寄せるが変態は彼女だけだとカインはきっぱりと言い切る。

シュミットはカインの様子からこれから関わらなければいけないであろうヴィータの姿を思い浮かべると心配事が増えたと言いたいのか胃の辺りをさすった。


「ノエルが完全に怯えていますからね。もし、ヴィータさんがシュミット様に面会を求めた場合は優秀な女性達は隠した方が良いかもしれません」


「しかし、隠すとなると機嫌が悪くなりそうだな」


「それはあり得ますね」


カインはジークから胃薬を預かっていたようでシュミットの前に薬を置くとシュミットは栄養剤ではない事を確認してから飲み干す。

胃薬を飲んで少しだけ、精神的に落ち着いたようでヴィータとの面会の事を考えて眉間にしわを寄せる。

カインは苦笑いを浮かべながら頷くとシュミットは問題が多いと言いたいのか乱暴に頭をかいた。


「それで、その噂の本人はどうしたんだ? お前の事だ。連れてくると思ったんだが……」


「ヴィータ様はルッケルに送り届けましたよ。一応、エクシード家の当主にも旧友に会いに行くと言ってきたと言っていましたので」


「旧友か。リック=ラインハルトだったか。アズ=ティアナの従兄で本来、ルッケルの領主になるはずだった男か……やはり、変わり者が多いな」


カインが1人で屋敷に訪れた事に違和感を覚えたようでシュミットはヴィータがいない理由を聞く。

その疑問にカインはヴィータをルッケルに送ってきたと答えるとシュミットはリックの事も調べているようで変わり者が多いとため息を吐いた。


「いや、そうでもないですって」


「確かに医師になって人々を治療するのは素晴らしい事かも知れないが領主であればこそ、助けられる命もあるだろう」


「後は適性の問題ですね。能力を冷静に分析させて貰うと領主としての適性はアズさんの方が高いですね。リックさんに問いただした事は有りませんが彼の事ですから考えた末での答えでしょう」


シュミットは領主の方がいろいろとやれる事があると考えているようでリックの考えはわからないと言う。

カインはリックが自分の適性を見越して医師になったのではないかと答えるとシュミットはカインの考えにそう言う事もあるのかと思ったようで小さく頷いた。


「とりあえずはヴィータ=エクシードがワームに戻ってから、どうなるかだな」


「ヴィータさんが現当主を説得できるかはわかりませんからね。それまでの連絡係を誰かに頼みたいんですけど適任者はいませんか?」


「それを私に聞くか? お前なら心当たりがあるんじゃないのか?」


エクシード家を味方に引き込むにしてもヴィータがワームに戻ってきてからが本番であり、シュミットは小さくため息を吐いた。

ヴィータがどのようにしてエクシード家の当主を説得するかは想像できず、カインはその間にシュミットとヴィータの連絡係を用意しないといけないと考えているようで首を捻る。

カインが首を捻っている姿は趣味とにはわざとらしく見えているようで眉間にしわを寄せたシュミットは考えている人選を話すように言う。


「残念ながら、ワームにはそこまで知り合いがいないんですよ。シュミット様は冒険者達の利便性も知っていますからね。適切な人選をしてくれると思ったんですけどね」


「確かに冒険者達は雇ってはいるが、協力して貰っているのはお前達も良く知っている者達だぞ。ソーマやセレーネ、後はフィアナ達にも仕事は頼んでいるが」


「フィアナ達は能力的に難しいですね。名前だけ聞いているとレーネさんが適任でしょうけど、ソーマは剣士だから連絡係は向かないし」


カインはワームに知人が少ないため、シュミットの方が詳しいのではないかと聞き返す。

シュミットは首を捻りながら懇意にしている冒険者の名前を挙げて行くがカインも良く知っている名前であり、カインは苦笑いを浮かべる。

フィアナ達は駆け出しの冒険者であり、エクシード家の当主やギムレットの目を惑わせるほどの能力もなくカインは困ったように頭をかくとセレーネくらいしか適任者がいないと言う。


「確かにその通りなんだが、難しいな。レーネにはギムレットの監視を頼んでいる」


「ですよね」


「ふむ……カイン、フィアナを使うと言うのはやはり危険か?」


しかし、セレーネには重要な仕事を任せており、そこから彼女を外す事はできない。

カインはそれを理解しているため、他の冒険者に心当たりはないかと聞いていたようで困ったと言いたげに肩を落とす。

適任者がいない事で手詰まり感が漂っているのだが、シュミットはフィアナに任せる事はできないかとつぶやく。


「才能はあると思いますが現状では危険だと思います」


「いや、ヴィータの変態性を考えれば新しい使用人を引き入れてもおかしくないだろう。フィアナなら適任じゃないか? 転移魔法もあるから、私のところに報告に来なくてもフォルムでも話し合いもできる」


「それは確かにそうかも知れないですけど……フィアナ、泣きませんかね?」


「……今回は我慢して貰おう」


カインは彼女の才能は認めているのだが、現状では任せるのは難しいと首を横に振る。

シュミットはヴィータの側に入り込んで貰うからこその人選であると言うとカインは一理あると思いながらも彼女の身が心配のようで眉間にしわを寄せた。

彼の疑問にシュミットも同じ事を思っているようだが、今は協力して貰わなければいけない状況のため、仕方ないとため息を吐く。


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