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勇者の息子と魔王の娘?  作者: まあ
ジーク=フィリス
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第891話

「この筋肉にく……何か違う? 病気やけがに起因するものではなさそうだが」


「……肌がつやつやになっています。ちょっとうらやましいです。でも……あれは無理です」


「そうですね……しかし、あれを見てしまっては頼みにくいですね」


ヴィータはシーマの身体を堪能し終わったようでゆっくりと立ち上がった。

ソファーの上ではシーマがぐったりとしているが、その肌は張りがでており、彼女の顔を覗き込んだノエルとセスは興味が引かれたようである。

しかし、もみくちゃにされているシーマの様子に踏ん切りがつかないようで眉間にしわを寄せた。


「……この違和感はなんだ?」


「何かありましたか?」


「筋肉の質が何か違う……ふむ。男女の差があるとしても筋肉の感触はこれだ。あのシーマと言う者の感触はおかしい」


ヴィータは自分の手のひらを眺めながら不思議そうな表情をしており、ジークは何か感じたのか首を捻る。

彼の問いにヴィータは手のひらに伝わった違和感を確認するようにジークの腕をつかむ。

彼女の行動の意味がわからないジークは首を傾げたままだが、ヴィータは彼の腕の筋肉の弾力を確認してつぶやいた。


「それって、種族の違い? ……わかるものなのか?」


「他にも確認してみよう。フィーナ=クローク、腕を貸してくれるか?」


「はいはい。腕だけなら良いわよ」


ヴィータのつぶやきにジークは彼女が違和感を覚えている理由が種族の違いだと察して驚きの声を漏らす。

その言葉はヴィータには聞かれてはいけない物であり、ジークは慌てて口をつぐむがヴィータには彼の声が聞こえていなかったようで彼女は目を輝かせてフィーナへと視線を向けた。

フィーナは1度、彼女の診察を体験している事やジークとのやり取りを見ていたため、右腕を彼女に向かって差し出す。

差し出された右腕をヴィータはつかむと目を閉じて手を動かし、彼女の筋肉の状況を確認する。


「……やはり違う」


「えーと、セスさん、協力して貰って良いですか? ……フォトンさんはノエルと一緒にカインを呼んできてくれ。ばれそうだ」


「わかりました」


ヴィータはジークとフィーナ筋肉の感触を確認すると小さくつぶやいた。

彼女の様子にジークは時間を稼ごうと考えたようで純粋な人族のセスに声をかける。

セスの表情は強張るが、彼女もヴィータの反応からジークと同じ考えに至ったようで観念したのか右腕を差し出した。

セスの協力を得た事でジークはドレイク族のノエルとフォルム出身でラミア族の血が混じっている可能性のあるフォトンを非難させる。

フォトンは状況を理解しきっていないようだが、状況を説明すればカインが理解してくれるとも考えたようで頷くとノエルを連れて部屋を出て行く。


「……ジーク、どう言う事?」


「ヴィータさんにシーマさんが魔族だってばれそう」


「何で?」


セスの腕を揉みながら、ヴィータは難しい表情をしており、フィーナは彼女が悩んでいる理由がわからないようでジークの服を引っ張る。

ジークはヴィータに聞こえないように彼女に耳打ちをするとフィーナはなぜ、魔族とばれそうになったか理解できずに首を捻った。


「……話を聞いていると筋肉の質が違うらしい」


「そんな事がわかるの?」


「……少なくとも俺にはわからない。ジオスやフォルムで患者にも触れてきたつもりなんだけど」


彼女の疑問にジークは答えるが、フィーナは理解ができないためか眉間に深いしわを寄せると自分の二の腕を指で押す。

ジークはヴィータと言う自分とは違う医師の形にたくさん学ぶ事があると思ったようで大きく肩を落とした。


「……ふむ。疲労の色は見えるがジーク=フィリスくんやフィーナ=クロークくんと差異はない。そうなるともう1度、確認する必要性が生じるな」


「もう触らせませんわ」


「疲れは取れなかったんですか? 肌の調子は良さそうですけど」


ヴィータはもう1度、シーマの筋肉を確認しようと思ったようで彼女へと視線を向ける。

シーマは身体を起こすと拒否を示し、ヴィータと距離を取った。

彼女の様子にジークは疲労具合が気になったようで首を傾げるとシーマの眉間には深いしわが寄る。


「身体は楽になった気がします。しかし……これは人を堕落させます」


「気持ち良かったんですね」


「みなさん、カイン様がお待ちです」


彼女の身体からも疲れは抜けて行っているようだがくせになっては困ると考えているようで忌々しそうに言う。

その様子にジークは困ったように頭をかくとフォトンが部屋に戻ってくる。

カインはフォトンからの報告を受けて状況を正確に理解したようでジーク達をカインの書斎に呼ぶ。


「ヴィータさん、カインが呼んでいるので行きましょう。シーマさんも」


「……待て。私にはまだ調べなければいけない物があるのだが」


「それはそれ。ヴィータさんが何に疑問を持っているかはわかりませんけど、その違和感は病気とか治療の必要な物ではなさそうなんですよね? 俺達はヴィータさんの要求に答えた。次は俺達の要求に答えて貰わないとね。その件はカインの話が終わってからです」


ジークはすぐにフォトンの言葉に頷くとシーマとヴィータに声をかける。

ヴィータはシーマの筋肉を触り、疑問を解決しなければいけないと真剣な表情をするが自分でヴィータを説得するより、カインに丸投げした方が早いと考えているジークは彼女の背中を押す。

彼に背を押されてヴィータは納得が行かなさそうな表情をしているが彼の言い分も理解しているようでため息を漏らした。


「……とりあえず、行きましょうか?」


「そうですね。シーマさんもお願いします。カインの事ですから……いろいろと話してしまいそうですから」


「わかりました」


フィーナはカインが何を考えて自分達を呼んだか想像はできないようだがこの場に残っていても仕方ないと思ったようでセスとシーマに声をかけるとジーク達を追いかけて行く。

セスはカインの行動パターンを理解しているのか大きく肩を落とすとシーマは同席した方が良いと言い、彼女はしぶしぶ頷いた。


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