第885話
「……どう言う事だ?」
「言いたい事はわかります」
「何よ?」
ジークが薬品棚の整理を終えた頃、ノエルとフィーナが料理を運んでくる。
フィーナが料理を作ったと言う事で恐る恐る料理を口に運ぶと料理の味は悪くない物であり、リックの眉間には深いしわが寄った。
その様子にジークは最初にフィーナがミレットに教わって料理を作った時の事を思いだしたようで苦笑いを浮かべるが、フィーナは不満そうに口を尖らせている。
「フィーナさんの料理が美味しいって事ですよ」
「そう言う事にしておけ」
「……なんか納得が行かないわ」
ノエルはフィーナをなだめるように言うとジークは苦笑いを浮かべたまま言う。
フィーナは納得が行かないようであるが、ここで暴れても仕方ないため、眉間にしわを寄せた。
「それで、お前達が俺のところに来るなんて、何かあったのか? 最近はカインの相手が忙しいと聞いていたんだが……あいつがまた何かをしでかしたのか?」
「またと言うのは不適切な言葉ですね。常に何かやらかしていますから」
「あの、ジークさん、リックさん、その言い方はどうかと思うんですけど」
リックは用意された料理を頬張りながら、ジーク達が訪れた理由を聞くがすぐにカインが何かまた企んでいると思ったようで大きく肩を落とす。
ジークはカインがろくでもない事を企んでいるのはいつもだと言うとフィーナは大きく頷き、ノエルは困ったように笑う。
「そうだな。とりあえず、お願いがあってきたんですけど、もちろん、聞いて貰えますよね?」
「……できる事とできない事があるからな」
「わかっていますよ」
ノエルに言われてジークは1つ咳をすると本題に移ろうとするが、リックには拒否権などないと言いたいのか口元を緩ませながら、片付けられた診察室を指差す。
リックは断る気はないようだが、内容を聞かなければ何とも言えないと考えており、眉間に深いしわを寄せるとジークは頷くがリックは無理難題の可能性が拭えないようで眉間のしわは深いままである。
「なんか、疑っていますよね?」
「……前にラング様の前まで引っ張り出されたからな」
「そんな事もありましたね」
疑われている事に納得が行かないと言いたいのか、ジークは小さく肩を落とすとリックはジーク達に王都まで連れて行かれて王弟であるラングに謁見した時の事を言う。
ジークはすっかり忘れていたようで頭をかくとリックは大きく肩を落とした。
「だ、大丈夫です。今回は王都には行きませんから」
「……それもなんか違う気がするわね」
「そ、そうですか?」
ノエルはリックを安心させようと目的は王都ではないと主張するが彼女の発言は少しずれているようにも思え、フィーナは小さく肩を落とす。
彼女に言われてノエルはしゅんと肩を落としてしまい、ジークは困ったように頭をかくとリックへと視線を戻した。
「リックさんってワームで医師になる勉強をしたんですよね?」
「ああ、それがどうかしたか?」
「それなら、ワームに知り合いも居ますよね?」
ジークはリックがワームにいた事を確認するとリックは質問の意味がわからずに首を捻りながらも頷く。
リックの交友関係が今も続いていなければ頼み事もできないため、確認するのだがリックが患者以外と話している姿をあまり見ないジークはどこか及び腰である。
「ワームで新たに発見された治療法方法や薬の事を教えて貰うのに連絡を取るから、それは居るが……お前達にだって知り合いがいるだろう。それも強力な知り合いがラース様を頼れば良いだろう」
「今回は頼るわけにはいかないんですよ。いろいろと面倒な事になっていて、接触するのが大変なんですよ」
「そうか。そいつらを紹介すれば良いのか?」
リックは意味がわからないがワームにも懇意にしている友人がいる事を答えてくれるのだが、彼はジークとレギアスの関係は知らないが彼がルッケルとワームの連絡係をしていた事を知っているため、ラースに頼んではどうかと言う。
ジークは自分とレギアスの関係をあまり広げるわけにはいかないと考えているようで頭をかくとリックは状況を察してくれたようで知り合いの名前と住所をかいてジークに渡す。
「ヴィータ=エクシード? 紹介して欲しいんじゃ無くて、リックさんの伝手を使ってこの辺の種や苗を集めて欲しいんですよ」
「種や苗を? ワームなら集まると思うが質の良い物が欲しいのなら、お前が見に行けば良いだろう……それもできないのか?」
「そういう事です」
ジークはリックの知り合いの名前を読み上げるが、その人に会いたいわけではないため、懐をあさって持ってきたメモ紙を取り出した。
リックはメモ紙へと視線を移すが、種や苗の選別はジークの得意分野でもあるため、首を捻るも今までの会話でジーク達がワームに足を運ぶわけにはいけないと察してくれたようで眉間にしわを寄せる。
ジークはリックが状況を察してくれた事に頷くとリックは彼らが何に巻き込まれているかわからないため、困ったように頭をかく。
「……わかった。とりあえず、頼んでは見るがお前が選別しないんだから、一級品でなくても文句は言うなよ」
「わかっていますよ。それでもリックさんが信頼している人なら品質が悪い物は選ばないでしょう」
「そうだと良いけどな……変わり者だからな」
リックはジークが選別した方が良いと考えているようであり、文句を言わないようにと釘を刺す。
ジークはリックが信頼している人間ならば問題ないと考えているようでメモをリックに戻した。
戻されたメモを受け取ったリックは大きく肩を落とす。
「……なんで、変わり者を紹介するのよ?」
「仕方ないだろう……なぜか、優秀な人間には変わり者が多いんだ」
「どうしてだろうな。その言葉には不思議と頷ける」
変わり者と聞いたフィーナは眉間にしわを寄せるがリックは遠い目をして言う。
彼の言葉にジークは周囲に居る人間達の事を思いだしたようで眉間にしわを寄せるとノエルは苦笑いを浮かべた。
「とりあえず、お前達が行けないのなら、街道を使って手紙を届けて貰うしかないからしばらくは時間がかかるぞ」
「わかっています。それじゃあ、アノスを迎えに行くか?」
「そうね。一応、日持ちする物も作ったから、ご飯はちゃんと食べてよね」
リックは時間がかかると念を押すとジークもわかっているようで苦笑いを浮かるとリックに頭を下げた後、ノエルとフィーナにアノスを迎えに行こうと声をかける。
フィーナは立ち上がるとリックの食生活を変えろと言いたいのか、リックを見てため息を吐いた。
彼女にまで言われるとはリックも思っていなかったようで眉間にしわを寄せながらも頷き、ジークとフィーナは診療所を出て行こうとするがノエルが立ち上がっていない事に気づく。
「ノエル、行くぞ」
「待ってください。わたしには確かめないといけない事があるんです。リックさん、ヴィータさんって女性ですか?」
「……ノエル、行くわよ」
ヴィータと言う人物が気になったようでノエルはリックとの関係を聞こうとするがジークとフィーナは彼女の両隣に移動すると彼女をつかみ、診療所から出て行く。
ノエルは2人に待って欲しいと声を上げるが、ジークとフィーナは止まる事はなく、3人の後姿をリックは苦笑いを浮かべて見送った。